技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年

電気電子部門模範答案
必須科目 T-1(電気応用1) T-1(電気設備)
必須科目 T-2(電気応用2)
選択科目 
電気応用  U-1-1 U_1_3
        U-2-2  U-2-2
        V-1   V-2
電気設備 U-1-1
       U-2-1
       V-1
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電気電子部門 必須科目T-1
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Society5.0では、持続可能な社会を実現するため、エネルギー需給が管理されるIoE (Internet of Energy) 社会の実現に向けて様々な施策が行われている。しかし現在までにIoEを広域的に社会実装するにはいたっていない。本門は、IoE社会に向けた施策を早期に広域的な社会に実装するための電気電子技術について、問うものである。
(1)IoE社会に向けた施策を多様な既存インフラが稼働している状態で広域的に滞りなく、早期に実装するための電気電子技術分野におけるエンジニアリング上の課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)すべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に則して述べよ。
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T-1 答案1/2 (簡易答案形式です)   電気応用 専門事項:電気鉄道
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1.IoE社会の広域的な早期実現に向けた、エンジニアリング上の課題
1)HEMS(家庭用エネルギー管理システム)単体の導入では需要家への利点がない
 消費電力の可視化しか利点がなく、電力が制限される可能性があるため、蓄電池等との連携による電気代節約など、導入の利点があるシステムとして普及させる。
2)汎用性の高い再生可能エネルギーの電力制御装置の開発
 電力制御装置は、発電電圧の安定化など高い性能が求められるほか、機器ごとに設計されるため、汎用性の高い装置の開発による、製造コスト削減に取り組む。
3)配電エリアごとの効率的な需要と供給の制御
 エリア内の需要把握と、太陽光発電や蓄電池の電力供給量の把握と制御するシステムの導入により、需要と供給を調整して、発電ピーク時の出力を有効活用する。
2.最も重要と考える課題とその解決策
 HEMS普及による電力需要と供給の管理によるIoEの広域的な社会実装の実現
1)蓄電池と併用したHEMSシステムによる消費電力が平準化されるシステム
 平日に使用しない電気自動車の蓄電池を、太陽光発電による逆潮流制限時の電力で安価で充電し、平時に使用することで、ピーク時の電力消費量を抑えながら、電気料金の節約と電力需要制限が出来る利点を作り、HEMSの普及を促進する。
2)隣接する需要家間で電力の融通できるHEMSの開発
 太陽光発電を持つ需要家が、逆潮流制限時に無駄になる電力を隣接する需要家に安価で融通できるHEMSの開発により、電気代削減等の利点による普及を促進する。
3.すべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念
1)すべての解決策の実行による波及効果
 各需要家で蓄電が可能となり、災害等による停電時においても、自宅にて電気を消費する最低限の生活が維持できる。
2)すべての解決策の実行による懸念事項
 蓄電池の充放電サイクル増加による蓄電池の劣化促進
4.技術者としての倫理や社会の持続可能性の観点から業務遂行に必要な要件
 リサイクル方法が確立されていない蓄電池を長期間使用するため、充放電による劣化を防ぐ仕様とする。これは技術者倫理綱領の「持続可能性の確保」に相当する。
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電気電子 T-1 答案2/2 電気設備 専門事項:建築電気設備
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1.IoEを早期に広域的な社会へ実装するための課題
1) 電力需給マッチング
安定供給の観点から、電気の需要と供給を同時同量とする電力需給のマッチングが課題である。
需要家側の再エネ発電量増大により、電力系統の送電容量にゆとりがなくなった場合、需要家側で出力制御や節電を行い、電力系統の送電容量にゆとりをもたせ、電力の安定供給に貢献する必要がある。
2)調整力の確保
送電品質の観点から、電力需給の調整力を確保することが課題である。
太陽光発電や風力発電は気象条件による出力変動が大きく、その変動をコントロールすることが困難であるため、電力系統に周波数変動や電圧変動などの影響を与えるおそれがある。さらに、再エネの導入拡大に伴い、従来調整力を担ってきた火力発電の稼働率が低下するため、電力系統の調整力低下が懸念される。このため、蓄電設備の増強や再エネ由来の電力を水素に転換して活用する技術の開発等が必要である。
3)電力取引
電力流通の観点から、電力の発電側と需要側を直接つなぐ電力取引の仕組みづくりが課題である。
電力ネットワーク上の参加者が自由で安全に取引できるブロックチェーン技術を活用したP2P(Peer to Peer)電力取引等の流通システム構築が必要である。
2.最も重要と考える課題と解決策
電力需給のマッチングが最も重要な課題と考える。解決策を以下に示す。
1) 電力需給の可視化
施設内での消費及び発電した電力をデジタルグリッドコントローラにより、スマートタップやスマートメーターの計測値で可視化する。
ユーザーが設定した値と系統側からのデマンドレスポンス要求の双方向データに基づき、施設内の機器に対する給電制御及び発電した電力の自家消費または売電の自動判定を行う。
2) 余剰電力の活用
需要家側で発電した余剰電力を各自の蓄電池に充電し、これらを地域内で束ねてVPPとして運用する。 
地域内に分散している需要家側のエネルギーリソースを一括して管理・制御を行うアグリゲーターにより、需要逼迫時には余剰電力を系統側へ供給する等、電力需給バランスのコントロールを行う。
3) ナノグリッドの構築
施設内に設置する受変電設備と発電及び蓄電装置をネットワークで接続し、不安定な電力を需要家側で安定化するナノグリッドを構築する。
需要の変動は需要家側が主体となってエネルギーマネジメントを行い、施設内の電力需要をナノグリッドでフラット化する。
3.波及効果と懸念事項への対応策
1) 波及効果
電力需給のマッチングを推進することにより、電力系統の需給調整コストを低減する波及効果がある。
電力系統側の電力は、一日の間に大きく変動する電力需要のピークに合わせて設備投資を行っている。 
しかし、電力需給のマッチングを実用化すれば、需要の変動はナノグリッドでフラット化できるため、電力系統側の設備投資を抑えることができる。
2) 専門技術を踏まえた懸念事項への対応策
スマートタップによる電力制御の設定が過剰で使用者のQoL(生活の質)が損なわれてしまう可能性がある。対応策として、需要家が予め電力使用量の限度を設定し、その範囲内で機器への電力供給量を調整するオンデマンド型電力制御システムを構築する。
4.業務遂行において必要な要件
1) 技術者倫理を高めるため、電力需給可視化のデータを高齢者の見守りや空き家の把握等にも有効活用する。これは技術士倫理綱領1「公益性の確保」に相当する。
2) 社会の持続性を高めるため、蓄電池と再エネ発電用PCSを一体化したハイブリット蓄電システムの導入を推進する。これはSDGsの開発目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に相当する。
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電気電子部門 必須科目Iー2
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動作環境の不確かな多種多様のハードやソフトが混在する大規模なインフラシステムがインターネットで相互につながることで,システム全体の機能が低下し,また動作の予測可能性が低下するケースが発生している。しかしながらその中で,災害時及び緊急時においてもシームレスで安心かっ安全なサービスを提供するための事前に予防する仕組み, つまり言い訳の余地がないように対策をはじめから講じておく仕組みを実現する必要に迫られている。 こうした状況を踏まえ,電気電子技術について以下の問いに答えよ。
( 1 )各種システムが相互につながった中で災害時及び緊急時においてもシームレスで安心かつ安全なサービスを提供することはサービス事業者の使命である。この点を踏まえ,エンジニアリング問題としてサービス中断を事前に予防する仕組みに関して,多面的な観点から3つの課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。
( 2 )抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。
( 3 )すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれの対策について, 専門技術を踏まえた考えを示せ。
( 4 )前問( 1 ) ( 3 )の業務遂行において必要な要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
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答案1/1 電気応用 専門事項:モーター制御
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1. サービス中断を事前予防する仕組の課題とその内容
 大規模インフラシステムとして、通信サービスインフラを取り上げ、以下課題を挙げる。
1)通信インフラのネットワーク(NW)信頼性向上:
 一部の通信インフラ設備が被災しても、NW全体に影響が及び得るという問題がある。現行インフラ設備の強靭化の観点から、中継伝送路等のNW機器の信頼性向上、復旧措置の推進準備を事前に図り、災害時にもサービスの中断を回避することが課題である。
2)老朽通信インフラのNW機器の更新:
 機器が正常に動作しても、低通信速度の旧型低性能ルータでは、輻輳が発生し得る問題がある。特に被災地域では、安否確認で携帯電話アクセスが集中し、通常通話やデータ送受信が行えなくなる。輻輳低減で通信機能確保の観点から、通信速度向上等が必要で、これらにより通信サービス中断回避が課題である。
3)通信インフラの停電対策:
 インフラ設備を強靭化/高性能化しても、災害時停電になると、エリアの維持できなくなる問題がある。停電対策の観点から、非常用電源設備の準備等が必要である。これにより、災害時の通信サービスの中断を回避することが課題である。
2.上記1) NW信頼性向上の解決策
 災害時サービス提供に機器の稼働が不可欠で最重要
である。以下、信頼性向上の課題の解決策を述べる。
1)通信設備の二重化、分散設置、大ゾーン化:
 パケット通信プラットフォーム、顧客情報管理システムは、顧客向けサービス継続提供に必要な重要通信施設である。首都圏集中のこれら施設を地方都市へ分散設置し、インターネットで相互接続する。また、応急復旧措置として通信基地局も車載型、船舶型やドローン等様々な形態のもの、および通常よりもはるかに広いゾーンに対応した基地局を準備する。それにより、首都直下地震時、および首都圏等の人口密集地での災害発生時にも、サービスを継続提供できるようにする。
2)中継伝送路の多ルート化:
 中継伝送路を多ルート化・ループ化し、一部設備が被災しても通信ネットワーク全体に影響を及ぼさないようにする。そして、自動的にその他のルートへ切り替えることで通信を確保できるよう、フォールトトレラント機能を稼働させる。光ファイバなどの優先伝送路をとう道へ収容するなどの対策も有効である。
3)通信ネットワーク監視:
 全国の通信ネットワーク機器の使用率、応答時間、異常通知等の監視を行いネットワークの健全性を確認する。災害時は、安否確認でアクセスが集中し易い。保全処置、サービスの一時規制実施を準備し、災害時でもサービス対応できるよう体制を整える。
3.リスクとその対策
1)リスク:各種課題解決策を施しても、被災状況を
正確に把握できないと迅速対応ができない。被災直後、被災状況の全体像把握は困難で、点検に時間を要す。
2)対策:上空からの衛星データを解析し、現場の被災状況調査を行う。衛星データは視認性が高い光学衛星と、気象条件の影響も受けないSAR衛星を併用する。さらに、目視困難な場所にはドローンによる上空調査を行い、詳細画像データを取得する。衛星とドローンの画像データは、GIS(地理情報システム)上で展開して被災設備推定、該当エリアの設備部門と情報共有で迅速初動し、効率的な点検や故障修理に活用する。
4.技術者倫理と社会持続可能性観点からの必要要件
1)技術者倫理:公衆の利益の優先
 通信ネットワークの信頼性向上、機器更新、停電対策等は、どれもコストがかかる。運営会社の収益に影響する。
しかし、一度止まったNWを復旧させるコストは、それ以上に膨大となる。 
全ての公衆の利益の優先に留意し、必要なコスト割り当てに努める。
2)SDGsゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう
 利用者が少く需要が限定的な辺地で設備を自ら設置することが不経済となり、「通信サービス提供」確保に支障を生じさせる恐れがある。通信サービス提供に当たって、そのような場合でも通信サービス提供確保に留意し、例えば設備を他社との共同利用を認める等により、通信サービスの持続可能性確保に努める。
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電気応用 U-1-1
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火力発電所等における環境対策設備の1つに集じん装置がある。方式として遠心式,電気式,ろ過式,湿式などが知られている。このうち,電気式集じん装置(集じん機)について,集じんを行う原理,装置の構造について簡単な図を描いて,説明せよ。また,電気式の長所,短所について他の方式と比較して説明せよ。
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答案1/1 専門事項:モーター制御
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1. 電気式集じん装置の原理
 強電界によるコロナ放電で、排気中の煤塵を帯電させ、静電気力で電極に吸着・集じんする。
2. 電気式集じん装置の構造
 排気管中に正負の強電圧電極を配置する。一方の電極先端を鋭利にして電界を強化し、この電極間に排気を通す。粉塵は強電界中で帯電し、電極に吸着し集じんされる。
3.電気式集じん装置の長所
 電気式では、微細粒子(<50μm)が捕集が可能で、高耐熱性がある。圧力損失は遠心式の1/4、ろ過式の1/20で、目詰まりがなく高集じん率が持続する。一方遠心式は、10μm台のダストを捕集できるが、微細粒子には適さない。ろ過式は、耐熱性が低く(<120℃)、時間と共に集じん率が低下する。湿式は廃液処理が必要である。
4. 電気式集じん装置の短所
 ?過式・湿式は、集じんと同時に脱硫可だが、電気式は出来ない。高電気抵抗煤塵には、逆電離現象による収集煤塵の再飛散現象が起きる。電子放出型はオゾン発生で、排気中のNOから有害なNO2を発生する。
図 電気式集じん装置の機構
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電気応用 U-1-3
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電気自動車の回生ブレーキについて、その原理と効果、留意すべき点を述べよ。
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答案1/1 専門事項:モーター制御
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1.回生ブレーキの原理
 インバータによって、モータの固定子の回転磁界を、回転子よりも遅くなるように制御して、回転子が固定子の磁界を横切るようにさせる。このとき、フレミング右手の法則から、逆起電力が発生すると同時に、回転子を停止させる方向に電磁力が発生するため、回転子に制動力が発生する。
2.回生ブレーキの効果
 回生時、回転子に生じる起電力は、e=v(導体の速度)×B(磁束密度)となる一方、回転子に生じる電磁力は、F=I(電流)×Bとなる。つまり、起電力に比例して、制動力が大きくなるので、走行速度が速いほど、回生ブレーキの効果は大きくなる。
3.電気自動車へ導入する際に留意すべき点
(a)低速時の制動力低下
 インバータの制御によって、低速時に固定子の磁束密度を強めるほか、回生ブレーキによって得られた電力を車載機器で消費させて、回転子に生じる起電力を高め、制動力を確保する。
(b)充放電サイクルによる蓄電池の劣化
 追加の蓄電装置として、充放電による劣化が生じにくいキャパシタを、蓄電池よりも優先的に充放電される位置に追加し、充放電サイクルによる蓄電池の劣化を防止する。
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電気応用 U-2-2
電鉄新線における地上設備簡素化の観点から、駅部を除いてエネルギー供給を行わずに、電気及び水素を、駆動エネルギーとして電気車に供給する方式の設計責任者にあなたが任命された。エネルギー供給システムを設計するに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)エネルギー源からみた電気車のパワートレーンと外部からの供給方式との組み合わせを考慮した上で、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/2 専門事項:電気鉄道
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1.調査・検討すべき事項
@水素供給装置の仕様
 1日の車両運用に必要な水素の量を調査し、オンサイト型やオフサイト型など、最もトータルコストが抑えられる水素供給装置の仕様を検討する。
A水素供給装置設置箇所の検討
 水素が満充填された状態で車両が走行できる距離を調査し、駅における水素供給装置の設置数を可能な限り少なくできる設置箇所を検討する。
B車両制御システムと蓄電池容量の検討
 最も発電効率が高い燃料電池の出力を調査して、起動時や登坂時など、その出力では不足する電力を蓄電池がカバーして水素消費量を抑える車両制御システムに必要な蓄電池容量を検討する。
2. 業務を進める手順と留意すべき点、工夫を要する点
@水素補給施設の設計
 1日の水素量消費量などの検討結果に基づき、出力の過不足が少ない水素補給設備を設計する。
A車体と搭載される水素バルブ・タンクの設計
 事故やタンク自身の劣化による水素漏洩が発生しにくいタンクの構造にするだけでなく、万が一水素が漏れた場合でも、水素が滞留しにくい車体構造とする。
B燃料電池と蓄電池回路の設計
 充放電による蓄電池の劣化対策として、回生ブレーキ等による連続的な充放電を担うコンデンサをモータ回路に設ける。その際、最高速度から回生ブレーキ動作時の発電量を計算して、コンデンサ容量を検討する。
Cモータ制御回路の設計
 乗客数の増減による車体重量の変化を測定し、そのデータから燃料電池の出力を増減させる仕様とすることにより、走行時のエネルギー消費量を削減させる。
D運転シミュレーション・修正最適化
 最も効率的な燃料電池の出力や、車体重量と線区の勾配を調査し、登坂時など、モータの出力不足による走行不能状態に陥らないインバータの仕様を検討する。
 また、加速時などにおけるモータの空転発生時、モータの電流値を一時的に低下させて、速やかに空転状態から回復できる仕様とする。
(3) 関係者との調整方策
@モータ車床下への大型の蓄電池とコンデンサの搭載
 蓄電池とコンデンサは、dQ/dV曲線で劣化解析し、長寿命化のため、電機機器の空気流体冷却技術(CFD)により、温度上昇による劣化を抑える。
Aモータ車の床下空間確保に伴う水素タンクの設置
 床下電池スペース確保のため、水素タンクは屋根上に設置し、他方その形状は小直径型タンクへ変更し、客室形状への影響を抑える。以上の調整から、電池と水素タンクを共存させ、製造コストを抑える。
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答案2/2 専門事項:モーター制御
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(1)調査・検討すべき事項
 水素をボンベに充填し、燃料電池と蓄電池の回生ブレーキ充電でハイブリッド化する。
1)最大負荷の消費電力
 走行シミュレーションで、力行時の消費電力P1から蓄電池の必要電力出力B1と燃料電池の必要電力出力B2との総量T(=B1+B2>P1)を検討する。
2)運転パターンにマッチした使用法
 鉄道は、短時間加速−惰行−短時間制動の特有パターンの繰り返しである。一方燃料電池は一定出力に適し、蓄電池は電力出力の変動に対応可能で、これらの特性と走行シミュレーションを元に蓄電池の必要電力出力B1と燃料電池の必要電力出力B2の配分を検討する。
3)必要水素量
 パワートレーンのエネルギー変換効率kから必要水素量L=kT/α(α:水素の単位質量当たりの燃料電池での出力電力)、水素充填方法、ボンベ容量、および、その構造を検討する。
(2)業務を進める手順
1)蓄電池容量の決定
 走行シミュレータから得られる最大放電パワーP1(kw)、最大充電パワーP2(kw)、最大放電エネルギー(kwh)、寿命計算から、これらの最大値を満たせる電力容量B2(kw)、充電容量Bh2(kwh)を決定し、更に余裕度+10%を見込む。
2)燃料電池容量の決定
 走行シミュレーションから、全走行区間で充電率:平均50%を維持出来る容量を決定する。
3)水素供給設備の設置
 高効率充填のため水素ガスを加圧冷却し高密度化する。自動充填のため、ATSで列車を定位置に停車させ、距離センサーで列車の水素充填位置と充填用パイプの位置ずれを計測し微調整して設備から列車にパイプを挿入する。
(3)関係者との調整方策
1)オーナ会社に要求反映する
 燃料電池電車は、通常の電車に多くの機能を付加する。私は、車両価格に見合った省エネを求めるオーナ会社に対し、モータ高速化で加速度/減速度を向上させ惰行区間伸長により燃費が向上することを説いた。
2)燃費向上のための技術設計
 モータや半導体技術が進化している。私は、高効率化を求める設計担当者にインバータにGaNを用いて高周波数化を図り、永久磁石同期モータで高回転化と同時に高減速比を採用して、エネルギー損失を抑えた設計を指導した。
3)運転パターンの刷新
 加速度/減速度の向上によって力行/制動区間が短縮し、惰行距離が伸びて運航効率と燃費30%の向上が図られた。その結果、関係者全員が満足するに至った。  
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電気応用 V-1
街路照明や建造物等への景観照明は、都市の魅力ある夜間景観を作る上で大きな役割をはたしている。これらの照明を行う場合、対象物や地域の景観特性に応じた光の在り方を検討し、地域の個性を生かしていくことが望まれている。このような状況を踏まえ、電気電子部門の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)街路照明や景観照明に関する課題を、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した
うえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち、最も重要と考えられる技術的課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1/1 専門事項:電気鉄道
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1. 街路照明や景観照明に関する課題
1)光源のグレア低減対策
 景観照明の光源の配光特性を鋭くし、対象となる建物だけを照射することによって、光が周囲に拡散することを防ぎ、観察者が眩しさを感じにくい構造とする。
2)演色性が高い白色系の照明の採用
 景観照明によって、夜間においても、できる限り建造物がもつ本来の色合いを再現するため、平均演色評価数(Ra)が高い、白色系の照明を用いて、対象となる建造物を照らす。
3)照明に方向性を持たせ、陰影による立体感の演出
 照明によって、対象となる建造物全体を均一に照らすのではなく、観察者の視線に対して、横方向から指向性の高い照明を照射する。この結果、建造物表面に光と影を発生させ、建造物の立体感を強調した演出をつくることができる。
2. 最も重要な技術的課題と解決策:グレア対策
1)景観照明の光源の指向性低減
@光源の拡散防止
 景観照明に、光源周囲を覆う傘状のフードを取り付ける対策を施工することにより、グレアの原因となる指向性の高い光が、光源から不要な方向に拡散することを防ぐ。
A光源の輝度低減
 乳白色または散乱型のカバーで照明の光源を覆い、光源から発せられた光線の指向性を低下させて、観察者がグレアを感じにくくなる構造とする。この際、JISで定められた照明のグレア比(GR)を、制限値である50以下となるように、光源の輝度や照度を調整する。
2)観察者の視界に入らない場所への光源の設置
 観察者の視界よりも高い場所になど、観察者の視界に入らない場所から対象物を照射することにより、光源の強い光が観察者の視界に入らないようにする。
3)低角度で光沢面を照射する
 景観照明の対象となる建造物の表面に、光の反射率が高い材料が使用されている場合、その部分が光を強く反射してしまい、観察者が眩しさを感じる恐れがある。対策として、建造物の表面に対して、低角度で照明を照射することにより、照明の反射光が、観察者の視界に入らない演出を検討する。
3. 解決策の実行による新たなリスクとその対策
@新たに生じるリスク
 街灯の場合、照明の光源から横方向への配光をカットした傘状のフードを取り付けた構造を採用しても、降雨によって、路面全体が濡れている場合、路面から低角度で照明の反射が発生する。その結果、歩行者やドライバーが前方の状態を正しく認識できなくなり、歩行者同士の衝突や自動車との接触事故に至る危険性が懸念される。
A新たに生じるリスクの対策1:車道のグルーミング
 車道であれば、路面に細かい排水用の溝をつくるグルーミングの施工によって、雨天時における路面の雨水滞留を防ぎ、雨水による光の反射を減らす。また路面に凹凸がつくられることにより、路面自体の光の反射率を低下させ、雨天時におけるさらなる光の反射を抑止する効果も期待できる。
A新たに生じるリスクの対策2:ゴムチップ舗装
 歩道の場合、細かいゴムチップを路面に舗装する対策を施工するによって、歩道表面につくられる凹凸による路面自体の反射率を低下させる。また、路面の排水を促し、雨水の滞留による光の反射を低減させる。 
B新たに生じるリスクの対策3:光源の小型低輝度化
 光量が強い大型の照明の設置でなく、小型低輝度の照明を分散して数多く設置することにより、路面上の照明のまぶしさを低減させ、歩行者やドライバーが眩しさを感じにくくする。その際、乳白色などのカバーなどで光源を覆い、光源の指向性を低下させることによるグレア対策も並行して施工する。
 これらの対策の結果、夜間においても、降雨などによって路面がぬれた際に発生する照明の反射によって視界が遮られず、歩行者が安全に歩道を通行することが期待できる。
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電気応用 V-2
東日本大震災以降,再生可能エネルギーや廃熱などの未使用エネルギーを最大限導入し,コージェネレーションなどを利用して電力と熱を供給するエネルギーネットワークの事業化が進められている。このような状況を考慮して,以下の問いに答えよ。
( 1 )電気工ネルギーと熱エネルギーを組合せて利用することで特定地域の省エネ・低炭素化を実現するに当たって,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し, それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
( 2 )抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1/1 専門事項:モーター制御
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1.特定地域の省エネ・低炭素化実現のための課題
1)「電気・熱出力を使い切る」 
 コージェネレーションシステム(CGS)は、全出力電気・熱を使い切れば高効率だが、電気・熱の使用量は不均等で、出力比も調整できない。
そのため@特定地域のエネルギーネットワーク(EN)内で、ITC・AIを活用したエネルギーマネジメントシステム(EMS)を起動する。AEMSによりCGSの稼働を予測・管理して、熱・電力出力を共に全て使い切るよう制御する。
2)「電気・熱の出力割合を最適化する」
 住宅中心の市街地では、一般に熱より電力を多く消費する。そのためCGSによる発電以外に太陽光、風力、バイオマス等の最可能エネルギーによる発電設備をEN内に付加設置する。これにより電力の構成割合を高め、それぞれの需要に対応する。
3)「低炭素化」
 CGSのエネルギー効率を高めることは省エネとなり、低炭素化に通ずるが、化石燃料を使う限り、温室効果ガスを排出することになる。低炭素化を図るため、@化石燃料から非化石燃料へ切り替える。A具体的には、バイオマス燃料や、太陽電池・風力発電等の再生可能エネルギーで製造した水素をCGSの燃料として活用する。
2.「電気と熱出力を使い切る」ための解決策
1)「必要量のみ発熱/発電する」
@EN上の全CGSが出力する電力と熱、および、全需要家が使用する電力と熱の量をスマートメータ(SM)でモニタし把握する。Aデータに基づき、全CGSの運転傾向をAIで予測しEMSを稼働させる。BEN内の全CGSをEMSで遠隔集中制御管理する。これらにより、必要十分量だけ熱・電力を出力し、余剰電力、および余剰熱を極力出さぬようにする。
2)「余剰分をEN内で融通する」
@余剰電力をスマートグリッド(SG)に逆潮流させる。
A余剰熱は、EN内のセントラル給湯設備に送る。
B各分散CGSから出たこれらの余剰電力および熱をEMSで制御管理して、EN内で融通して使い切る。
3)「余剰分を蓄積」
a)必要分だけ出力しても、使用量不均衡のため、電力・熱の一方が余る。b)これをEN内で融通しても、需要がないと使い切れない。
そこで@EN内での余剰電力を蓄電し、余剰熱を蓄熱する。AEMSでこれらの設備を制御管理する。これらにより未使用エネルギーを廃棄せず、一時的に蓄積してEN内で有効活用する。
4)「電気自動車の活用」
 個別家庭のホームEMS(HEMS)で、電気自動車やPEVのバッテリーへの蓄電制御も有効である。
3.リスクと対策
1)リスク
 ICTによるCGS等の制御頻度が増大すると、a)CGS等の機器の電気的、機械的負荷が増え、故障頻度も増大する。b)メンテナンス手間/コスト、通信トラフィックも増大する。c)EMSでEN内の供給過不足を予測し平準化するも、予測を外す危険も有る。d)更に災害などが加わると、最悪、特定地域EN全体の機能喪失となる恐れがある。
2)対策
@需要家側のデマンドレスポンスを統合制御して、電力(ネガワット)を創生する。それらを1つの仮想発電所(VPP)のように機能させ、変動調整力としてCGSの負荷を低減する。
A各分散CGS近くにEdgeコンピュータを設置することでレスポンス向上と通信のローカル化を図る。同時に全体トラフィックの低減も図る。
BCGS等の供給源を分散させる。具体的には需要家単位で自家供給設備を持つようにする。それにより、万が一 EN内のEMSが機能不全となっても、電気・熱が途絶えることを防ぐ。災害対策としても有効である。
C一般家庭で、家庭用コージェネレーションシステムと太陽光パネルを備え、電気自動車で蓄電しHEMSで全体を制御する。これが災害にも強く、最小単位の究極的地球温暖化対策となる。
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電気電子 電気設備 U-1-1
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高圧又は特別高圧で受電する需要家は、電力系統に流出する高調波電流を限度値以下に制限する必要がある。需要家内での高調波電流発生原因と配電系統の電圧波形がひずむ理由を高調波発生源として代表的な汎用インバータを例にとり説明せよ。また、高調波電流が限度値を超過する場合の高調波抑制対策を2つ挙げ、それぞれの内容を述べよ。
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答案1/1 専門事項:建築電気設備
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1.高調波電流発生原因と電圧波形がひずむ理由
1-1.需要家内での高調波電流発生原因
汎用インバータは基本波の交流を直流に変換する半導体整流回路(コンバータ)を内蔵している。
コンバータで整流した交流電流は非対称波形であるため、ひずみ波電流となり高調波電流が発生する。
1-2.配電系統の電圧波形がひずむ理由
負荷側で高調波電流が発生すると、各次数における有効電力が回生する時に電源側へ高調波電流が流出するため、配電系統のインピーダンスを介して電圧波形をひずませる原因となる。
2.限度値を超過する場合の高調波抑制対策
2-1.低圧コンデンサ
変圧器二次側に直列リアクトル付進相コンデンサを設置する。
高調波発生源と同じ低圧側で高調波電流を分流・吸収して配電系統への流出を抑制するため、負荷側での個別対策として有効である。
2-2.アクティブ・フィルタ
負荷側で発生する高調波電流を検出して逆位相の電流を流し、ひずみ波形を補正するアクティブ・フィルタを設置する。
負荷の運転に応じて発生する複数の高調波に対する波形改善が可能で確実に高調波電流の流出を抑制できるため、設備全体の対策として有効である。
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電気電子 電気設備 U-2-1
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新築高層オフィスビルの建設に当たり、洪水によって想定される浸水深0.5m〜3.0m未満の洪水等が発生した場合における対象建物の機能維持に向けて浸水対策を講じる計画を実施することになった。この業務を電気設備担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/1 専門事項:建築電気設備
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1.調査、検討すべき事項
1.1 建築計画
地階及び1階の平面プランを調査し、建物の機能維持に必要となる電源設備を屋上階、監視制御・情報通信・防災設備の主装置を2階以上の階に設置するよう検討する。
1.2設備構成
電力幹線系統を調査し、地階及び1階の系統を2階以上の階とは別系統として浸水時は分離できるように検討する。通信・防災幹線系統を調査し、主装置から各階へ渡る幹線は光ケーブルとして浸水時も機能維持できるように検討する。
1.3非常電源
商用電源の停電時に給電が必要な負荷を調査し、非常用発電機や太陽光発電設備により、72時間以上の非常電源を確保するように検討する。
2.業務を進める手順と留意点、工夫を要する点 
2.1重要設備の非浸水階設置
受変電設備、非常用発電設備、太陽光発電設備を屋上に設置し、情報通信設備(中央監視設備・電話交換機・サーバー)及び防災設備(防災監視盤・非常放送設備・ITV設備、等)の主装置を2階に設置する。
2.2浸水階の系統分離
電力幹線はフロアごとに系統分ける。浸水による漏電が非浸水階に影響しないように各幹線には漏電遮断器を設置するよう留意する。通信及び防災幹線は光ケーブルとし、浸水時でも機能するようにコネクタ接続部は非浸水階に設けるよう留意する。
2.3ライフライン途絶対策
非常用発電機の燃料は重油に比べて入手し易く、経年劣化の少ない軽油とし、7000l程度を地下タンクに備蓄する。太陽光発電設備には蓄電池を具備し、平常時は太陽光発電電力の余剰分を充電することで電力の有効活用を図り、災害時による停電時は自立運転に切り替えることで特定負荷機器への電力供給を可能とする。
3.関係者との調整方策
浸水階の系統分離により電力幹線をフロアごとに布設する計画ではケーブルの数量が増加するため、幹線工事の工期延長が必要となった。
改善策として、非浸水階の縦幹線をプレハブ分岐付ケーブルとして複数階の系統を集約し、ケーブル数量の削減と現場作業の軽減により工程を短縮する方法を提案した。
事業主には系統集約によりメンテ時等に停電範囲が拡大することを説明し、了承を得た。建築施工者にはEPS内仕上げ工事の先行施工を依頼した。電気施工者にはプレハブ分岐ケーブルの納期確認と建築仕上げ工程に合わせた幹線工事の工程調整を指示した。上記調整により、工期内で完了するように調整した。
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電気電子 電気設備 V-1
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我が国では、人口が2010年をピークに減少に転じ今後もこの傾向が続くと予想される中、国の成長力を維持するための生産性の向上が求められており、電気設備分野においても生産性向上対策の議論が活性化している。また、電気設備分野を含めた建設業界では、建築物や建築設備の複雑さや高機能化に伴い設計・施工・管理業務・保全業務などの繁忙度が高まることで時間に追われる感覚や建設現場特有の作業環境などが敬遠され、担い手確保に向けての働き方改革が求められている。
(1) 上記を踏まえ、電気設備分野を含めた建設業界を魅力あるものにしていくため、業界の働き方改革を伴う生産性向上を達成させるための課題を、電気設備分野の技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3) 解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。
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答案1/1 専門事項:建築電気設備
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1.働き方改革と生産性向上の課題と内容
1-1.省力化
建設現場での週休2日を実現し、他産業との格差を是正するため、省力化が課題である。
長時間労働是正の観点から、建設に関わる情報の一元化による業務効率化、ICT(情報通信技術)を利用したテレワークによる時短推進、建物内のインフラや各種設備のネットワーク化によるビル保全管理のスマート化が必要である。
1-2. プレハブ化
現場作業による品質のブレを無くすため、工場生産品を現場で組み立てるプレハブ化が課題である。
品質確保の観点から、屋内配線ユニットケーブルやプレハブ分岐付き幹線ケーブルの採用、天井面設備機器の統合パネル化、分電盤とケーブルラックを一体化したEPSユニット等による施工の標準化が必要である。
1-3. 先進技術の活用
身体に負担のかかる作業を減らし、技能労働者に働きやすい環境を提供して新規就労者への門戸を広げるため、先進技術の活用が課題である。
安全性向上の観点から、天井配線施工ロボットの導入、ICT機材を活用した重量機器搬入による作業者の負担低減、高所作業等の危険性をVR(仮想現実)教材で臨場感のある体験ができる安全教育の実施が必要である。
2.最も重要と考える課題と解決策
省力化が最も重要な課題と考える。解決策を下記に示す。
2-1.BIM活用
3次元のBIMモデルを構築することにより、建設に関わる意匠・構造・建築設備の情報を一元化し、完成時の建物イメージを共有する。
これにより意匠デザインと建築設備機器の整合性、構造躯体や他設備と電気設備との干渉部分の可視化、機器材料の数量積算自動化から施工図への反映、竣工図作成の省力化を実現し、設計から施工及び維持管理に至る業務の効率化を図る。
2-2.遠隔施工管理
可搬型ネットワークカメラを工事現場の要所に設置し、施工状況を次世代通信(5G)技術で共有することにより、少人数で多数の現場をリアルタイムに遠隔で管理できる環境を構築し、テレワークによる時短を推進する。
2-3.予兆保全
設備機器の要所に振動センサ、音響センサ、絶縁監視装置等を設置して建物運用状況の常時監視を行う。    
これらのセンシングデータをエネルギーマネジメントシステム(EMS)に取込み、しきい値と比較分析することにより設備機器の状態に見合った予兆管理を実現し、メンテナンス作業の省力化を実現する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
3-1.新たに生じうるリスク
省力化の進展により電気計算の自動化や施工管理及び設備保全の遠隔管理が状態化すると、技術者自身の技術力が低下するリスクが考えられる。
電気設備の保全作業に際して電気主任技術者や管理責任者の危険性に対する認識不足による波及事故というような、従来では考えられなかった電気事故の増加が危惧される。
3-2.対策
技術者の持つべき暗黙知を形式知化し、誰もが利用できる形で蓄積・共有することを目指すナレッジマネジメントが必要である。
@情報の共有とアップデートの迅速化
ナレッジベースを構築すると、必要な情報や知識をいち早く理解でき、蓄積された情報を逐次更新することにより、いつでも最新の情報を得ることができる。
A「場」の創造
ナレッジベースを共有し活用する「場」を作ることも重要と考えられる。オフィス内の休憩スペースやイントラ上での社内SNSなどで気軽に相談や雑談を交わすことのできる「場」を上手くデザインすることにより、業務に必要な知識の交換や共有が促進され、ナレッジマネジメントを成功に導くことができる。
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