技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


衛生工学部門模範答案
必須科目 T-1

選択科目 
建築物環境衛生管理  U-1-1 U-2-1 V-1
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衛生工学部門 必須  T-1
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T-1 2020年10月26日、第203回臨時国会の菅内閣総理大臣所信表明演説において、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言された。また、「2050年温室効果ガス実質ゼロ」を目指すことを表明した地方自治体も多く存在する。このことを踏まえて以下の問いに答えよ。
(1)「2050年温室効果ガス実質排出ゼロ」を達成するための課題を、技術者の立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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答案1
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1.課題の抽出
@エネルギー低炭素化にて、CO2原単位を低減する。
 電力部門の発電効率を向上させると共に、排出されたCO2を回収し資源化する。
再エネをグリーン水素に変換・貯蔵して電力利用し、また、合成燃料でエネルギー低炭素化をする。カーボンニュートラルなバイオマスの熱源利用やエネルギー利用にてCO2原単位を低減する。
A省エネや未利用エネ活用でエネ使用量を低減する。
 ヒートポンプや潜顕熱分離空調などの効率的空調で省エネを図る。放射冷暖房にて冷温水温度の緩和をして熱源効率を向上させる。
 データーセンターなどの都市排熱や下水道熱を回収して熱源利用する。間接蒸発式空調機にて潜熱利用空調により、データーセンターの電力使用量を低減する。CO2ヒートポンプで低温排熱を高温化し、熱利用範囲を拡げてエネ使用量を低減させる。
Bネガティブエミッションで大気のCO2吸収をする。
 BECCSでバイオマス熱源利用での随伴CO2を地中埋設する。また、DACCSにて大気中のCO2を回収する。泥岩層などの遮蔽層下部の砂礫層にCO2を埋設して、将来の漏洩を防止する。
 間伐等により森林の環境管理を行い、CO2吸収量を確保する。伐採期を迎えた木材を使用し、建築物の木造化をしてCO2の固定化をしていく。
2.最も重要な課題の解決策
「エネルギー低炭素化にて、CO2原単位を低減する」
@再エネ水素と燃料電池にてエネ効率を向上させる。
 再エネ水素により燃料電池でコージェネレーションをして熱電供給をし、エネルギー効率を向上させる。
トリプルコンバイン発電にて発電効率を向上させる。固体酸化物型燃料電池でガス化した石炭を熱源として発電をし、高温高圧の排気にてガスタービン発電、排熱にて蒸気タービン発電をする。
A合成燃料により熱需要の低炭素化をする。
 熱需要に再エネを大幅投入し、熱利用部門のグリーン化を図る。水素と回収したCO2を原料として、メタネーション技術にてメタンガスを発生させ、熱利用をする。既存ガス導管にて供給を行い、新規インフラ構築コストを削減し、燃料の低コスト化をする。
 Eフリューエルでメタノールを製造し、ガソリンの代替え燃料として、運輸部門使用の化石燃料を低減する。
Bバイオマスを変換し、電力や熱需要に利用する。
嫌気性微生物で廃棄系バイオマスを分解させ、メタンガスに変換して、燃料電池により電力供給や熱利用をする。
 高温高圧の熱水にてバイオマスを熱分解ガス化して、エタノールやメタンガスを発生させる。
3.リスクとそれへの対応
@リスク
 火力発電所、メタネーション、バイオマスのエネルギー供給が増加し、太陽光や風力等の再エネ電力が余剰してしまう。好天時の発電抑制時間が増加し、廃棄再エネ電力が増加する。
Aそれへの対応
 再エネの広域設置にて地域別の自然環境と、天候状態のばらつきを利用して出力平準化をする。
天気予報精度を高めて、急激な出力変動への調整力電源の効率的運転をする。
火力発電所などの調整力電源の柔軟性を高めて、出力上げ下げによる効率低下を防ぐ。
4.技術者倫理、社会持続性
@技術者倫理
 BEMSを利用してエネルギーシステム効率化を図り、コストの低下をして経済発展を図る。これは、技術士綱領「技術士は公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する」に該当する。
A社会持続性
 IT技術により施設の無人化、エネルギー供給の自動化をする。人の接触機会を低減し、感染症拡大による供給障害を防止する。これは、SDGs9.1「レジリエントなインフラを開発する」に該当する。
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建築物環境衛生管理  U-1-1
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ろ過式エアフィルターの粒子捕集原理について述べよ。
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1.慣性衝突
 大きな粒子が、慣性力によりろ材繊維に衝突して捕集される。
2.さえぎり
 粒子の流路をフィルター繊維によって遮って捕集する。
3.拡散
 小さな粒子径がブラウン拡散によって拡がり、フィルター繊維に捕集される。
4.静電気
 粒子を帯電させ、静電気力によって捕集をする。
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建築物環境衛生管理  U-2-1
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 地方中核都市において、地上6階で延床面積7,000uの市庁舎建設プロジェクトの空調設備設計担当責任者として参画することになった。ZEB Readyを目指すための空気調和設備を計画するに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項を3つ以上挙げ、その具体的内容について記述せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、その項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)空気調和設備設計担当責任者として、業務を効率的、効果的に進めるに当たり、計画を決定するための内外の関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/1       専門事項:空気調和
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(1)調査・検討すべき事項
@中圧ガス供給を調査し、CGS利用を検討する。
 災害に強い中圧ガスを燃料としたCGSシステムを採用し、インフラ途絶時に熱電供給をする。タービンをデュアルフューエル型として、灯油での運転も可能なものとし、72時間分の貯蔵をする。
A自然エネ活用方法を検討し、省エネを図る。
 外気温湿度を調査し、外気冷房、フリークーリングを活用して省エネを図る。重力式の自然換気を検討して、インテリアゾーンのOA機器排熱による熱負荷の増加を防止する。
Bペリメーター負荷の調査をし、断熱性能を高める。
 エアフローウィンドウにより、室内還気や外気を利用して、ペリメーター部の伝熱負荷を低減する。LOW―eガラスとブラインドにより日射を遮断し、ファサードの断熱性能を向上させる。
(2)業務を進める手順
@熱源停止による省エネをする。
 土日、祝祭日には熱源の停止が可能なように、発停スケジュール制御をする。休日明けは、始業時間より早い時間帯でラニング運転により、外気を遮断し、空調機の循環運転をして設定室温への復旧をする。熱源機と搬送動力を含めた運転時間低減にて省エネを図る。
Aナイトパージによる熱負荷の低減を図る。
 夜間時間帯を利用して、建物に蓄熱された熱負荷を排出する。クールチューブや床下ピットなどのスペースを通して外気導入を行う。年間を通して安定した土中温度を利用し、熱交換をさせたパッシブ空調にて執務時間帯の熱負荷緩和をする。
B再生可能エネ利用を促進し、創エネを図る。
 太陽光発電と蓄電池にて系統電力使用量を低減する。タンデム型太陽電池により、発電可能な太陽光波長域を拡大し、発電効率を向上させる。真空式太陽光集熱管を用いて熱供給をし、吸収式冷温水発生器の再生熱源として利用する。
(3)関係者との調整方法
 ZEB Readyのため、ランニングコストの更なる低減を目的に、私は吹抜空間の設置を施主に提案する。この提案により、私は電気担当者には搬送動力と照明負荷の低減を、意匠担当者にはウェルネスを意識した快適性空間のデザイン提案を指導する。吹抜空間により低減した執務面積は、ペリメーターレス空調により外壁側の執務スペースを拡大し補填する。
これにより、私は3層吹抜けにて15百万程度の予算アップにて、ランニングコスト低減とオフィスワーカーの健康増進に配慮した空間提供をプロマネとして取りまとめる。
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建築物環境衛生管理 V-1
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 大気中のCO2増加抑制策の1つとして太陽光発電など再生可能エネルギーから水素を製造し、水素の利用を拡大することが進められている。しかしながら水素の製造、利用には課題が多く、拡大には時間を要している。このような状況を踏まえて、衛生工学の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)再生可能エネルギーからの水素製造及び利用を拡大する上での課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)でしめした解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対応策について述べよ。

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答案1/1         専門事項:空気調和
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(1)課題の抽出と分析
@再エネ余剰電力を活用し、効率的水素製造をする。
 気候条件による再エネ余剰電力に柔軟に対応できる水電解装置を使用して、水素製造をする。固体高分子電解装置により起動時間を少なくして、余剰デイマンドに応じて水素発生量を可変させ、効率的水素製造をする。
A水素を変換・貯蔵して、利用拡大を図る。
 貯蔵した水素を利用して、電力不足時に燃料電池による発電を行い、熱電供給をしてエネルギー効率を向上させる。
 水素とCO2を反応させメタンガスに変換して熱需要に対応する。また、化学製品基材を製造して、水素利用用途の拡大をする。
B水素の容積を縮小し、貯蔵・輸送の効率化を図る。
 有機ケミカルハイドライト法を用いてトルエンに水素を吸収させ、常温で液化、容積縮小をする。メチロシクロヘキサンとして貯蔵、輸送して、水素流通効率向上を図る。
 低温液化、アンモニアへの吸収・液化や水素の金属脆化作用を活用した水素吸蔵合金により水素容積の縮小をして、貯蔵・輸送効率向上をする。
(2)水素を変換・貯蔵して、利用拡大を図る。
@メタネーション技術によりメタンガス製造をする。
 水素とCO2を原料とし、触媒によるサバティエ反応をさせて、メタンガスを発生させる。発生させたメタンガスは都市ガスインフラを利用して供給し、工場・発電所等の熱需要を賄う。
 共電解技術と組み合わせて水素の貯蔵を介することなく、水とCO2からメタンガスを製造する。共電解の吸熱反応とメタネーションの発熱反応を相殺させてエネルギー効率を高め、ガス製造効率向上を図る。
Aeフリューエルにて液体燃料を製造する。
 水素とCO2を用いてメタノールを製造し、改質・生成をして液体燃料とする。FCV向けの高圧水素より容積当たりのエネルギー密度が高いため、内燃機関の燃料として使用して、ガソリンや軽油等化石燃料使用低減を図る。
?水素製造随伴CO2を埋設・資源化する。
 CO2を分離・回収して、CCSにてCO2を地中の滞留層に埋設する。泥岩層などの遮蔽層下部に存在する砂礫層に埋設し、漏洩を防止する。また、回収したCO2からプラスチック製品の基材を製造し。CO2の資源化を図る。
CO2の分離は、吸収法、吸着法、膜分離法にて行い、回収したガスのCO2濃度、圧力、随伴ガス種類によって使い分ける。アミン系溶剤による吸収法は、低濃度CO2吸収にも有効となるが、分離時の昇温にエネルギーを消費するため、省エネ対策が必要となる。火力発電所からの高圧力排ガスには、圧力差にて分離を行う吸着法や膜分離法が有効である。
(3)リスクとそれへの対応
@リスク
 メタネーションや液体燃料製造にはCO2よりも、大量の水素が必要となる。CO2排出源は多数存在するため回収は容易だが、再エネ水電解による水素製造量が不足すれば、CO2が余剰してしまう。
Aそれへの対応
 微細藻類によるバイオジェット燃料の製造や人口光合成によるオレフィン製造をして、水素を利用しないCO2の資源化を進める。
 森林の管理をしてCO2吸収量を確保すると共に、建築物への木材使用を推進し、CO2の固定化をする。また、沿岸浅海域の海藻類を増殖させ、海洋へのCO2固定化を図るなどのネガティブエミッションを進める。
 廃コンクリート等のリサイクル資源からのカルシウムを抽出して、それにコンクリート製造時に発生するCO2を吸着させて人工石灰石を製造し、セメントの原料とする。コンクリート内に炭素を固定してCO2排出量の低減をする。
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