技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


環境部門模範答案
必須科目 T-2

選択科目 
環境測定  U-1-4 U-2-1 V-1
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環境部門 必須  T-2
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T-2 今日、私たちは地球規模での環境の危機に直面しており、迅速な対応を迫られている。地球環境の危機はグローバルな社会・経済システムと深く関わっており、私たちは、経済社会活動に必要不可欠である環境の基盤を維持しながら、環境と成長の好循環を実現することが求められている。以上の基本的な考えに関して以下の問いに答えよ。
(1) 地球環境に危機をもたらしている地球規模での課題について、環境部門の技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 全問(1)で抽出した課題のうち最も重要と課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3) 上記すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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答案1
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1.地球環境の危機をもたらしている地球規模の課題
1)EADASを活用し、環境アセスメントを迅速化する
 太陽光発電、風力発電所による自然林喪失や土砂の流出、発生する騒音が周辺環境に影響を与えるため、建設が停滞している。環境アセスメントデータベース(EADAS)を活用し、風況、送電線の設備状況、土地利用の先行利用者の情報を入手し、環境アセスメントの迅速化を目指す。
2)再資源化の際の周辺環境への影響を低減する
 地域で資源を循環するためには、廃棄物を収集、再資源化する必要がある。その際に廃棄物による悪臭、破砕機の騒音、運搬車両の大気汚染、騒音が問題となる。プルーム式、パフ式を用いた大気汚染物質拡散予測、ASJ-MODELを用いた騒音予測を行い周辺への影響を把握し、周辺環境への影響を低減する。
3)生態系への悪影響を低減し、生物多様性の状況を改善する 
 開発や乱獲、外来種の侵入により生態系が損なわれている。有機農業の作付け面積の拡大、持続可能な漁業や養殖業の拡大、開発時に希少種が発見された場合には、ホットスポットの保護、希少種の移植を行い、生態系を保護する。
2.最も重要と考える課題とその解決策
 最も重要な課題として、2)再資源化施設の際の周辺環境への影響を低減する、を挙げ、以下にその解決策を示す。
1)破砕施設から発生する騒音レベルを予測して、周辺への影響を低減する
 破砕施設の音響パワーレベルから伝搬予測を行い、敷地境界、民家前での騒音予測を行う。音響パワーレベルが不明な場合は類似施設で音響パワーレベルの測定を行う。基準値を超過する場合には、防音対策を行い、騒音を低減する。
2)廃棄物による悪臭の対策
 廃棄物を収集、運搬、再資源化する際に悪臭問題が発生する場合がある。廃棄物から発生する悪臭を調査し、問題がある場合は運搬方法の改善(密閉した状態で運搬、早朝に回収)、集積地での脱臭を行い、悪臭を低減する。
3)運搬車両による、騒音・振動・大気汚染物質の低減
運搬車両の通行により周辺民家に大気汚染や騒音・振動の問題が発生する。実施計画前に現況調査を実施、発生交通量や走行ルートから大気質、騒音、振動の予測を行う。影響が大きい場合には、走行ルートや走行速度、運搬車両を見直し、周辺への影響を低減する。
3.全ての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策
1)騒音や有害物質濃度を低減しても苦情が発生する場合がある
 騒音レベルを十分に低減しても、特定の周波数が卓越した騒音が発生した場合により耳につきやすく、わずらわしさ(アノイアンス)につながる場合がある。また、悪臭物質が基準値以下であっても、悪臭苦情が発生する場合がある。
2)住民の意識調査を行い、周辺環境を向上させる
 供用開始後から、周辺住民にアンケート調査を行い、施設周辺環境に対する意識調査を行う。基準値を下回った場合でも、低減目標を設け、地域の環境を向上させる。
4.技術者の倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件
1)技術者の倫理の観点から必要となる要件
 資源を回収、再資源化する際にはできるだけ、コンパクトな地域で循環させ、使用するエネルギーを削減し、温室効果ガス排出量を削減する。また、運搬車両の通行時間は子供の登校下校時間を避け、交通安全に配慮する。これは技術士倫理要領の公衆の利益の優先にあたる。
2)社会持続性の観点から必要となる要件
 関連施設の整備を行う際には、災害等に強い、持続可能かつ強靭なインフラを開発する。これはSDGs目標9レジリエントなインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進に該当する。
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環境測定  U-1-4
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「低周波問題の手引書」(環境省 平成16年6月)に従って、低周波音と思われる「物的苦情」に対応する場合の低周波音の測定方法の概要と留意点を述べよ。
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1.低周波音の概要
(1)使用する測定器
 低周波音の測定には、低周波音計、レベルレコーダ、周波数分析器を用いる。低周波音を録音する場合や、持ち帰り解析する場合はデータレコーダを使用する。
(2)低周波音の記録方法
 低周波音を時間重み特性SLOW、周波数補正特性をZ特性で記録する。
(3)1/3オクターブバンドレベルを算出する
 低周波音を周波数分析し、1/3オクターブバンドレベルを算出する。
(4)「物的苦情」に対応する際の測定場所
 「物的苦情」に対応する際の測定場所は、問題となる住居等から1〜2m程度離れた屋外で測定する。
2.「物的苦情」に対応する際の留意点
(1)がたつきの原因は様々であることに留意する
 がたつき原因が判明せず、調査結果が参照値未満の場合には、地盤振動等の低周波音以外の可能性がある。          ただし、参照値未満でもがたつきが発生する場合があるため、様々な発生原因を想定して調査を行う。
(2)参照値の取り扱い方の留意点
 低周波音の参照値は、苦情対処の目安であり、参照値以下でも苦情が発生する場合がある。全ての周波数帯が参照値未満の場合には、参照値を参考に原因となる周波数帯を推定する。
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環境測定  U-2-1
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 U-2-1 環境測定に係る環境省のマニュアルや告示等が近々改定・改正されることに伴い、A社では新しい分析方法(騒音分野は測定装置)を導入することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。なお、回答に当たっては、「大気、水質、土壌、騒音」の中から1つの分野を選び、最初に明記する事。また、過去に実施した特定の項目で事例を示すのではなく、汎用的に説明をすること。
(1) あらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/1 専門事項:騒音振動
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 騒音測定の分野を選択し以下に示す。
 今後、騒音に係る測定マニュアルが改正され、暗騒音の影響を低減するために、周波数補正が求められることを想定して以下に示す。
1.あらかじめ調査、検討すべき内容
1)騒音源の識別・卓越周波数の把握方法の検討
 周波数補正を行うためには、発生源別の周波数スペクトルを把握する必要がある。騒音発生源の位置、種類、必要となる測定器を調査し、周波数特性の把握方法を検討する。
2)状況に応じた暗騒音の影響の除外方法を検討する
騒音の変動状況や周波数スペクトルに応じて、暗騒音の影響の除外、低減方法が異なる。そのため、周波数スペクトルや変動状況に応じた除外方法、低減方法を調査し、より効率的な解析方法を検討する。
2.業務を進める手順
1)音源探索を行い、音源の位置を特定する
音源ごとの周波数スペクトルを把握するためには、音源の場所を特定する必要がある。音源が複数あり密集している場合には、3次元音響インテンシティ法により音響探索を行う。
季節や時間帯によって暗騒音が変動することに留意して音源探索を行う。
2)発生源ごとの周波数スペクトルを把握する
発生源ごとの周波数スペクトルを把握する。音源の位置を特定し直近で測定する。音源が密集し、互いの影響を受ける場合には指向性マイクロホンを用いる。
3)周波数スペクトルを把握し、周波数補正を行う
 音源ごとに周波数帯が異なる場合には、周波数帯毎に解析し、音源ごとに分離する。
音源ごとの周波数が広域で互いに干渉する場合、変動が激しい場合には、発生源の周波数特性、伝搬経路から予測計算し、周波数補正を行う。
3.業務を進めるための関係者との調整方法
1)騒音源を絞り込むことで開発費を削減する
 解析担当者はあらゆる騒音を分離し、評価できるシステムの開発を求めるが、高額となる。調査担当者に想定される発生する騒音源の絞り込みを依頼し、発生する騒音の周波数帯や、発生状況を調査する。
調査したデータをシステム開発者に伝達し、システムの使用範囲(周波数、変動状況)を限定し、開発費を低減する。
2)音源情報の提供を求め、精度の向上を目指す
 事前の調査結果がある場合には、事前の調査結果(確認された暗騒音、騒音の程度)を把握することにより、測定精度の向上、労力の削減につながることを説明し、発注者に音源情報の提供を求める。
測定後には測定地点の音源情報、除外したデータの情報を共有できるようにし、さらなる精度の向上につなげる。
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環境測定 V-1
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 V-1 内湾に面するある県では、その内湾の埋め立て地に飛行機が立地し、内湾の都市部には高速道路と新幹線があり、また山地丘陵もある。この県では、環境基準項目等の調査項目が増加する一方で、監視業務に係る予算や人員が削減されるなど厳しい状況にある。そこで新たな方策として、測定計画に基づく環境調査のすべてについて複数の外部調査機関に委託して実施することにした。なお、調査項目と調査地点の見直しは行わないこととする。この委託調査を県の地域的特徴を踏まえて立案・実施する担当責任者として、以下の問いに答えよ。回答に当たっては、「大気、水質、土壌、騒音」の中から1つの分野を選び、最初に明記する事。
(1) 環境調査を外部委託するに当たって、環境測定の技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術踏まえた考えを示せ。
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答案1/1 専門事項:騒音振動
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(騒音の分野を選択し、以下に解答する。
1.環境調査を外部委託する際の課題
1)騒音の状況を複数の企業間で共有する
 環境騒音の精度を確保するためには、測定対象と残留騒音との差10dB以上を確保する必要がある。複数の企業で調査を行う際には、測定対象の騒音と暗騒音の状況を共有する必要がある。過去の調査時や現場踏査時に把握した、騒音源、時刻、季節を図面に落とし込み、地域の騒音の状況を共有する。
2)事前に調査方法を協議し、測定方法を決定する
 妨害音の除外方法、測定データの欠測の判断、調査時期の選定、評価方法(航空機騒音の場合は年間推計時の基準地点補正量、自動車騒音の場合は面的評価の際の残留騒音補正、反射音補正)により、評価結果が異なる。複数の企業で調査を行う場合には、事前に協議を行い、調査方法、調査時期、評価方法を決定する。
3)音響校正を行い、トレーサビリティを確保する
複数の外部調査機関の所有する測定器が異なる場合、測定器の精度管理が困難となる。音響校正器による測定器の校正、精度の確認方法を検討し、トレーサビリティを確保する。
2.最も重要な課題とその解決策
 最も重要な課題として、3)測定器の精度の確保を挙げ以下に解決策を示す。
1) 音響校正器の校正を行い、トレーサビリティを確保する
 各会社が所有する音響校正器の校正を行い、音響校正器の精度を確保しトレーサビリティを確保する。受注業者には校正証明書の提出を求める。
 音響校正器の誤差を0.1dB程度に抑え、複数の会社が所有する測定器の誤差を低減する。
2) 音響校正器を用い、校正を行うことで誤差を低減する
 JIS-C-1515のクラス1の規格を満たす音響校正器を用い、騒音計の校正を行う。
音響校正器の精度確認のため、発注者から貸し出された、標準機でも誤差の有無の確認を行う。なお、検定規則改定前の騒音計は計量法により、校正する事ができない。そのため、誤差が大きい場合は修理・再検定を行う。
3)使用前に校正器で騒音計の精度の確認を行い、精度を確保する
 測定直前にも音響校正器を用い、測定器の誤差の程度を把握する。誤差が±0.7dB以内であることを確認する。誤差が±0.7以上の場合には測定に使用しない。
 なお、測定直前には校正を行わない。
3.全ての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策
1)音響校正方法が変更される可能性がある
 現状、音響校正器による校正、検査は250Hz、1000Hzのどちらかしか行わない、騒音計の測定範囲は20〜8000Hzである。2000Hz以上の周波数の異常があった場合確認できない。海外では、複数の周波数帯の音響校正器で、校正を行っている。検定時には125Hz〜8000Hz間の4つの周波数の検査を行っている。今後、複数の周波数帯の校正、検査を求められる事が考えられる。
2)複数の周波数帯の校正を行い、その内容を記録する
 音響校正の方法が改正される前から、自主的に複数の周波数帯の標準機を準備し、全ての周波数帯の校正、確認を行う。周波数指示値の変化、内部校正値との差を記録し、極端に変動した場合故障の可能性があるため、製造会社精度確認する。
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