技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


建設部門模範答案
選択科目 
鋼コン  Ⅱ-1-1 Ⅱ-1-3 Ⅱ-1-3 Ⅱ-1-3 Ⅱ-1-3S Ⅱ-1-4 Ⅱ-1-4S
Ⅱ-2-1 Ⅱ-2-2 Ⅱ-2-2 Ⅱ-2-2 
     Ⅲ-1  Ⅲ-2  Ⅲ-2  Ⅲ-2S  Ⅲ-2S  Ⅲ-2S  
※問題番号末尾のSはスタンダード模範解答を表します。(無印はプレミアム模範解答)
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Ⅱ-1-1
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鋼構造物の腐食を防止する方法の代表例として塗装, 溶融亜鉛メッキ, 金属溶射を用いた鋼材表面の被覆や, 耐候性鋼材の使用が挙げられる。 これらの方法から2つを選択し,その防食機構を概説するとともに,その防食機能が劣化した場合の対方法とその留意点を説明せよ。ただし,鋼素材に有害な断面減少は生じていない段階対象とする。
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答案1 専門事項:鋼道路設計
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1塗装による被覆
(1)防食機構の概説
亜鉛(ジンク)による防錆機能を有する下塗りと紫外線や酸素、水分等の劣化因子の侵入を遮断する上塗りとそれらを接着する中塗りの3層で構成され鋼材の腐食を防止する。
(2)劣化の対処方法と留意点
 紫外線等により上塗りが薄くなった程度であれば表面を荒らしたのちに上塗層を塗り替える。一方で下塗りまで劣化している場合は、ブラストで地金まで露出させ全ての層を塗り替える。
2耐候性鋼材の使用
(1)防食機構の概説
 鋼材にCu(銅)、Ni(ニッケル)、Cr(クローム)を含有し、適度な乾湿の環境下で鋼材表面に緻密で安定的な錆層を形成させ、それ以上の錆の進展を防止する。
(2)劣化の対処方法と留意点
 積雪凍結材や常時湿潤状態の場合に安定錆層が形成されず表面に浮き錆による劣化がある場合は、表面の研磨後に塗装による防水を実施する。湿潤状態を回避するためスカラップ置や添接板の設置位置を工夫し風通しを良くする構造詳細とする。また、Ni(ニッケル)をより多く含有する高耐久性耐候性鋼材の適用も有効である。
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鋼コン Ⅱ-1-3
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技術の進歩に伴い、構造材料の高強度化が普及しつつある。鉄筋又はコンクリートいずれかの高強度材料について特徴的な性質を説明し、設計や施工における留意点について述べよ。
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答案1/4 専門事項:コンクリート設計
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高強度コンクリートについて以下に述べる。
1.粘性が大きい 
①性質: フレッシュコンクリートの粘性が大きく、材料分離抵抗性が高く、ワーカビリティが低い。
②流動性確保: ポンプ圧送時の圧力損失が2~4倍になるため、ポンプ圧を低減する必要がある。例えば、高性能AE減水剤を使用する、細骨材率を大きくする等の方法で流動性を向上させ、ポンプ圧を低減する。
2.自己収縮が大きい
①性質: 水セメント比が小さく、自己収縮が大きい。
②内部応力低減: 乾燥や温度による内部応力の低減を図る。材料面では収縮低減剤、低熱セメントを使用する。施工面では、温度応力解析を実施し、ひび割れ指数が予め設定した安全係数(一般に1.0)以上となるまでの期間は型枠を残置する。長期間の残置でも満足できない場合には、ひび割れ誘発目地の設置等によりひび割れ指数を改善する。
3.組織が緻密 
①性質: 低水セメント比でコンクリート組織が緻密であるため、火災等で高温になると水分の逃げ道がなく、爆裂の危険性がある。
②体積変化吸収: 高温時の水分の膨張を他の部分の体積変化で吸収する処置を講ずる。ポリプロピレン等の有機繊維を混入する方法により、高温時には繊維が溶融し体積が減少して水分の膨張に対応する。
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答案2/4 鋼コン 専門事項:建設現場施工計画
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コンクリートの高強度材料について述べる。
1.特徴的な性質
(1)耐久性が高い
 高強度コンクリートは、水セメント比が35%程度と小さいため、硬化後のコンクリート組織が緻密となる。そのため、内部へのCO2の拡散や塩化物イオンなどの劣化因子の侵入速度が遅くなり、耐久性が高くなる。
(2)収縮ひび割れが発生しやすい
 水セメント比が小さいほど、水和反応に伴う自己収縮量が大きくなる。そのため、高強度コンクリートは、自己収縮を起因とする収縮ひび割れが発生しやすい。
2.留意点
(1)設計上の留意点
 高強度コンクリートは、自己収縮量が大きいため、壁や床などの平面的に広がりのある部材では、収縮ひび割れ発生を抑制するための対策が必要である。
対策①:鉄筋比を大きくする。
対策②:収縮ひび割れを制御するための乾燥収縮目地を4~5m程度に一か所設ける。
(2)施工上の留意点
高強度コンクリートは、水セメント比を小さくしたうえで流動性を確保するため、スランプフロー管理のコンクリートとなる。この場合、通常のスランプ管理のコンクリートと比較し打設時の側圧が大きいため、型枠のパンクに留意する。
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答案3/4 鋼コン 専門事項:コンクリート構造設計維持管理
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(1)高強度コンクリートの特徴的な性質
 ブリーディング量が少なく、通常のコンクリートと比較して凝結の始発が早い。セメント量が多いため水和熱が大きく、自己収縮量も大きい。
(2)設計における留意点
 配合設計では、高炉スラグ微粉末やフライアッシュ等の混和材を用い、セメント量を抑えることで自己収縮を低減させる。また、高性能AE減水剤を用いるため、あらかじめ実機試し練りを行い、スランプの経時変化を確認し、添加量を決定する。
 マスコンクリートに用いる場合は、水和熱に起因するひび割れの発生が懸念されるため、温度応力解析を行い、ひび割れ補強鉄筋量を決定する。
(3)施工における留意点
 凝結の始発が早く仕上げ作業が間に合わなくなる懸念があるため、表面仕上げ時には仕上げ補助剤を100ml/m2散布し、仕上げ作業性を向上させる。
 養生時は保水性能の高いマットを敷設し、湿度80%以上を保持し、長期強度増進を図る。
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答案4/4 鋼コン 専門事項:コンクリート設計 S
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 高強度コンクリート(60N/mm2)について述べる。
1.特徴的な性質
フレッシュ時は、流動性、粘性が高く、水和熱が大きい。粉体量が多くなるため、水和熱が大きくなる。また、粘性が高いため、圧送負荷、練り混ぜ時の負荷が大きい。
硬化時は、緻密であるため劣化因子(水、酸素等)が浸入しづらく、耐久性が高い。一方で、空隙が少ないため、火災を受けた場合、爆裂の影響を受けやすい。
高強度であるため、PC部材に使用した場合、高いプレストレスをかけることができ、薄肉化、長スパン化することができる。これにより、基礎の負荷を軽減できる。 
2.設計・施工時の留意点
設計時は、弾性変形以降に脆性的な破壊形態となることに留意して○○を○○する。 
■講師コメント このような特性があるなら1で触れておくのが良いでしょう。
高強度であるため、弾性域内で保持できる応力は大きいが、応力超過後の破壊は脆性的である。その対策として、塑性化によるエネルギー吸収を期待する部材に使用する場合は、鋼繊維などの短繊維を混合(2%程度)し、曲げタフネスを向上させる。
施工時は、水セメント比が小さく、水和が活性化され、ブリージングが少ないため、プラスチック乾燥ひび割れと自己収縮ひび割れに留意する。この対策として、湿潤養生を十分行うとともに膨張材を添加しひび割れを防ぐ。
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鋼コン Ⅱ-1-4
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① ~③に示すコンクリート構造物の劣化現象について1つを選択し、その劣化メカニズムを概説せよ。また、選択した劣化現象にたいして、新設構造物の設計・施工における留意点、もしくは調査・診断、または補修における留意点を説明せよ(なお、①~③のどれを選択したか、また新設構造物の設計・施工、既設構図物の調査・診断、既設構造物の補修のいずれを対象としたかを、必ず答案用紙の最初に明記すること。
① 水分浸透を考慮した中性化による鋼材腐食
② 凍結防止剤散布環境下における当該
③ アルカリシリカ反応
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答案1/2 鋼コン 専門事項:コンクリート構造物の設計
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2のアルカリシリカ反応の既設構造物の補修について回答する。
1. 劣化メカニズム
① コンクリートの骨材の中に反応性骨材が存在する。
② 反応性骨材のシリカ分がセメントペーストのアルカリ性により溶解し骨材の周囲にアルカリシリカゲルを生成する。
③ コンクリート内部に侵入してきた水分をアルカリシリカゲルが吸水する。
④ 膨張したシリカゲルにより膨張圧が発生し、コンクリートの引張強度を超過するとひび割れが発生する。
⑤ 膨張により鉄筋の破断やゲルの浸出、コンクリートのヤング係数といった劣化が発生する。
2. 補修工法と留意点
 構造物の劣化状態に応じて補修工法を選定する。表面被覆、表面含浸、ひび割れ注入といった工法がある。亜硝酸リチウムを先行させることでゲルの膨張を低減することができる。
残存膨張量が大きい場合には亜硝酸リチウムの圧入工法を採用しゲルの非膨張化を行う。特に背面からの水分供給のある橋台などに有効。
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答案2/2 鋼コン 専門事項:コンクリート構造物設計  S
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局所的な変状であることから、鉄筋のかぶり不足による鉄筋の発錆に伴う浮き、エフロレッセンスを想定
■講師コメント 構造物の部位と「生じている現象」だけを示すのか゛良いでしょう。
(1)赤外線サーモグラフィ法による内部欠陥の推定
 赤外線サーモグラフィ法は、日射等により生じた健全部と欠陥部の温度差を計測することで内部欠陥の検出を行う非破壊試験である。
 測定に当たっては、1日の日射受熱量が最大となる時間帯等健全部と欠陥部の温度差が大きくなる時間帯に測定を行う必要がある。なお、気温差が小さい場合や日射がない箇所、コンクリート表面が濡れている場合や汚れている場合は温度差が生じにくいため、Ⓐ内部欠陥と誤認する可能性があるため留意が必要である。また、Ⓑ検出深度は表面から10cm程度であることも留意が必要である。
■講師コメント Ⓐの処置方法まで示すと留意点として評価できます。 Ⓑは制約事項です。対処不能なので別な解決が必要となり、そこまで言及したほうが高得点が期待できます。
(2)電磁波レーダ法によるかぶり厚さの推定
 電磁波は、金属を透過せず、金属表面で全てを反射するという性質を利用した非破壊試験である。装置から発信した電磁波の反射波を受診することで、到達時間や強度などを測定し、反射波形を画像化することで鉄筋位置の推定を行う。
 コンクリートの比誘電率は、含水率による影響が大きく含水率が高い場合や表面が濡れている場合には、精度が低下したり計測できない場合がある。反射波形の判読は、技術者の経験や技量により測定精度が左右されることに留意が必要である。
■講師コメント これも具体的な処置、対処法を技術士のノウハウとして示した方がコンピテンシーが高くなり高得点が期待できます。
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Ⅱ-2-1
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建設中に耐久性や精度に関わる不具合が接合部又は打継ぎ部(以下,接合部)で見つかり,この原因を検討し繰り返さないための方策を講じることになった。あなたが再発防止の担当責任者として業務を進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。
(1) 対象とする構造物と接合部の具体的不具合を設定し,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。ただし,測量・寸法ミス,図面の誤記,設計と異なった材料の使用による不具合は含めないものとする。
(2) 不具合を繰り返さないための業務の手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。
(3) 上記業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ
(答案用紙2枚にまとめよ。)
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答案1 専門事項:コンクリート施工管理
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(1) 対象構造物と不具合および調査、検討事項
(1)-1.対象構造物と具体的不具合
対象とする構造物は,RC造橋脚とし,橋脚の旧コンクリートと新コンクリートの水平打継ぎ部に生じたひび割れを設定する。
(1)-2.再発防止のための調査、検討事項
①温度ひび割れの検討
 躯体寸法および単位セメント量を調査し、水和熱の発生に起因する温度応力を予測することで、温度ひび割れの発生リスクを検討する。
②沈みひび割れの検討
 フレッシュコンクリートの単位水量およびブリーディングを調査し、沈みひび割れを検討する。
③型枠のはらみによるひび割れの検討
躯体寸法および型枠の強度を調査し、コンクリート打設時の側圧によって生じる型枠のはらみによるひび割れを検討する。
(2) 業務の手順
①温度応力解析による打継ぎ部面積の決定
温度応力解析を実施し、打継ぎ部近傍のひび割れ指数Icrを確認する。温度ひび割れの発生リスクを抑えるためにはIcrの最小値を1.00以上とする。
打ち継ぎ面積を小さくし、旧コンクリートの拘束力による温度応力の発生を抑える。
②ブリーディング試験と配合計画の実施
 ブリーディング試験を実施し、フレッシュコンクリートのブリーディング量を確認する。ブリーディング量を0.3cc/cm2以下とすることで、沈みひび割れ発生リスクを小さくする。
ブリーディング量を減らすために、セメントの一部を高炉スラグ微粉末に置換した配合とする。
③コンクリート打設側圧の計算結果と型枠強度の比較
コンクリート打設時に、型枠に作用する側圧の計算を実施する。側圧は打設速度、打設高さに比例して大きくなるため、打設速度を15m/h以下とし、打設高さを1.5m以下とする。
打設計画で想定される側圧に対し、許容たわみ量を20mm以下として型枠の設計を行う。
(3)関係者との調整方策
 通常使用される普通ポルトランドセメントは、水和熱発生量が大きく、打継面積の制限が厳しくなる。そこで、施工管理者に水和熱発生量の小さい中庸熱ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末の使用を提案する。ただし、材料コスト増加と養生期間延長が生じる。
材料コストの増加は、発注者に対して、ライフサイクルコストの低減を提案する。
養生期間延長に伴う、型枠量の増加は、耐久性低下のおそれがない範囲で、施工業者に対して型枠の転用回数の増加を認め、型枠総量を抑える。
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Ⅱ-2-2
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建設から30年以上が経過し,老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し,現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で,あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。
(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し,老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行う上で、調査、検討すべき事項その内容について説明せよ。
(2)留意すべき点,工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/3 専門事項:鋼道路設計
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1、対象構造物・状況と調査・検討事項
(1)対象既設構造物・老朽化状況
 『鋼上路アーチ道路橋』を対象とする。供用後30年経過し、雪凍対策で散布した塩カルが伸縮装置周辺から漏出していたため、桁端周辺の二次部材が断面腐食している。旧耐震基準で設計された一次部材は新基準によるレベル2地震で降伏、また腐食した二次部材は座屈損傷が懸念される。
(2)調査・検討事項
1)腐食範囲・減肉量調査し現有耐荷力を検討
 腐食範囲と減肉量を計測調査する。座屈強度は部材の幅厚比による影響が支配的であるため、調査した減肉量を幅厚比Rへ反映しそれを座屈強度曲線に当てはめ、現有耐荷力を算定する。
2)既存図書調査し既設橋梁耐震性を検討
 既設構造物のしゅん功図書から、構造諸元、部材強度、地盤種別を調査し、3次元解析モデルを作成し、地盤種別に応じた地震波を3波選択し、動的解析を実施する。3波平均応答値から、一次部材、二次部材の塑性箇所を特定し、現有の耐震性能を検討する。 
2、業務手順と留意・工夫点
(1)測量とモデル化
 3次元レーザースキャナ搭載したU A Vにより点群データ取得し、しゅん功図に反映されていない補強部材の形状・寸法を把握しモデル化する。計測された腐食範囲と減肉量から着目部位は20cmメッシュ、非着目部位は1mメッシュで平均板厚化し、残存耐荷力評価の精度確保とモデル作成効率化を両立させる。
(2)既設構造物の耐震性照査
 板厚減肉による剛性低下を考慮した3次元骨組みCIMモデルを作成し、橋軸方向と橋軸直角方向の2方向を照査する。まず固有値解析で橋梁全体の周波数特性を把握し、次に、プッシュオーバー解析で塑性箇所を特定し、現有対荷力を確認する。
(3)既設構造物の耐震補強方針
 塑性する部材の内、一次部材は、弾性応答に収まる板厚で当板補強する。二次部材は、塑性を許容しエネルギー吸収させつつ、局部座屈を抑止するため低降伏点鋼材の薄板をメタルタッチで巻立補強する。
 補強による応力低減効果と応力再分配による新たな塑性箇所が発生しないことを確認するため、既設照査と同様に動的解析照査し、補強板厚と範囲を調整する。
3、関係者との調整方策
 腐食状況の反映による解析精度向上のため、解析会社には、3次元解析モデル作成を、調査会社には、UAV3次元点群調査を依頼した。道路管理者には、UAV点群調査による交通影響削減できること、また3次元CIMモデル活用することで、将来の維持管理計画が効率化できることで将来コストの削減できることを説明し、増額費用の承諾を得た。
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答案2/3 専門事項:コンクリート構造物
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1.対象構造物の状況と調査、検討すべき事項
 対象はRC橋脚を有する多径間連続橋で、橋脚柱部に剥落と鉄筋の露出がみられる。
①老朽化の調査: 老朽化の状況、範囲を特定するため、鉄筋腐食量、反発度法等で鉄筋の腐食状態やコンクリートの圧縮強度等を調査し、それらの情報を基に保有性能を検討する。
②基準の変更点に関する検討: 当時の基準から変更された事項(配筋規定等)を調査し、対象がそれらを満足するかを検討する。また、追加された事項(レベル2地震動等)についても調査し、それらを保有性能照査に反映する。
③工法の検討: 本業務では柱部の耐震補強工法は巻立て工法とする。補強材料を選定するため、耐震性能のうち向上させる対象(靭性や曲げ、せん断に対する耐荷力等)や柱形状(断面の辺長比、フォルム)等について調査し、各材料の適用性について検討する。 
2.業務手順
(1)保有性能評価
非線形動的解析によって、現行基準の作用力、許容値に対する部材等の応答値を照査する。
塑性ヒンジ近傍や局所的劣化部等、部位部材毎に正確な保有性能評価が可能な3次元FEM解析を実施する。
(2)巻立て工法の詳細検討
材料、範囲、補強量を解析および比較検討により決定する。本業務ではRC巻立て工法を選定する。
高強度鉄筋の使用で、鉄筋コンクリートの剛性を向上させて巻立て厚さ(自重増分)を小さくし、基礎構造に作用する断面力の増加を最小限に抑える。一方、橋脚1基のみの補強量が多い(剛性が高い)と、その橋脚に分担重量が集中して過度な補強が必要となる。これを回避するため、隣接橋脚の補強量を増やし各橋脚の分担重量のバランスを調整する。
(3)RC巻立て施工
鉄筋コンクリートを既設橋脚柱部の周囲に配置し一体化させる。
既設コンクリートの拘束に起因する補強コンクリートの収縮ひび割れ防止のため、膨張材を使用しひび割れを低減する。また、鉄筋が露出している箇所は腐食を完全に取り除くため、はつり深さは鉄筋背面から20mmまでとする。さらに再劣化防止のため、腐食部を除去した後、防錆剤として亜硝酸リチウムを塗布する。 
3.関係者との調整方策
 橋脚の補強設計は、補強仕様の標準化で作業を簡略化できる。私はプロマネとして、解析会社に補強量ごとに類型化し各標準モデルで一括で設計する方法を指導した。これにより、作業時間が削減され、充実した品質管理活動が実施できる。発注者には橋梁全体の設計~維持管理までの品質管理方針を指導し、耐震補強プロジェクトを取りまとめた。
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答案3/3 専門事項:コンクリート構造設計
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1.調査、検討すべき事項 対象: RC構造の桟橋
①構造物の全体に対して目視調査を行い、劣化範囲、程度の確認を行い、詳細調査を行う箇所の選定を行う。
②詳細調査個所でコンクリートコアの採取を行い、圧縮強度、中性化深さ、鉄筋位置での塩化物イオン濃度の調査を行い、劣化度に応じて補修工法の検討を行う。
③既存設計図書の調査を行い、図面、計算書を基に現行基準への適否の検討を行う。
2.業務の進め方及び、留意・工夫を要する点
①補強検討:上部工RCの主部材となる梁上にはアンローダー等の荷役機械が上載される。平成18年の港湾法の改正により桟橋および荷役機械について動的な連成解析により耐震設計を行わなければならない。荷役機械の重量や重心位置が築造時より変更になっている可能性が高いため正確な情報を得た上で検討を行う。
②梁補修:梁の劣化度は加速期後期であると判断されるため劣化の進展を防止するため電気防食工法を採用する。電流の監視でモニタリングできるようにし、再劣化の予兆をとらえられるようにしておく。
③スラブ補修:スラブは重要部材ではないため断面修復及び表面塗装により補修および再劣化の防止を行う。断面補修にはSSI工法を採用し、鉄筋周囲の塩分除去を行うことにより鉄筋の腐食を確実に防止する。
④外ケーブル工法:荷役機械の重量や地震時の荷重増加に対する体力を確保するために外ケーブル工法による補強を行う。耐力の不足する断面に対するケーブルの配置、偏向を工夫し補強効果を発揮させる。
3.業務の効果・効率を向上させる関係者との調整方策
①外ケーブル緊張時には上載荷重の影響を取り除くため、接岸船のない日程で工事を行う必要がある。発注者と調整を行い、ケーブル緊張の工程では確実に停泊している船がないようにし、補強工事の安全性と品質を確保する。
②足場の構築に費用と日程を投入し、波浪の影響の少ない堅固な足場を築造することにより補修・補強工程の費用および工程を短縮する。足場業者には構造や部材の指導を行い、補修・補強業者には費用、工程縮減の説明を行う。足場が堅固になることで全体の工程・費用はそのままに安全性・品質の向上を図る。
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鋼コン Ⅲ-1
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建設分野において,BIM/CIMモデルやICT技術の活用が求められる一方で,建設・維持管理の現場では、より一層,新材料・新工法が適用され,品質の向上や,作業の効率化が図られることに期待が持たれている。このような状況を踏まえ,鋼構造及びコンクリートに関わる技術者として以下の問いに答えよ。
(1)建設・維持管理の現場において,新材料・新工法を活用するために解決すべき課題を多面的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。ただしBIM/CIMモデルの活用は含めないものとする。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえたうえで考えを示せ。                  
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答案1 鋼コン 専門事項:コンクリート施工管理
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(1)解決すべき課題とその内容
①高強度樹脂の耐候性向上
高強度樹脂材料のアラミド繊維は紫外線劣化が激しい。紫外線による劣化が生じると、材料が脆くなり、耐力および靭性が低下する。
耐久性の観点から、高強度樹脂材料を日射から遮断し、紫外線劣化を防止することが課題である。
②コンクリート施工性の向上
超高強度コンクリートは、低水セメント比であることから、ワーカビリティ―を改善するために、流動化が必要である。
施工性の観点から、フレッシュコンクリートを流動化するために、空気連行性能の向上およびセメント分散性能の向上が課題である。
③画像処理AIによる凝結判定精度の向上
コンクリート表面の仕上げ工程では、表面の凝結具合に合わせて、荒均し・コテ押さえ・コテ仕上げを行う。凝結具合の判断には、熟練工の技術を要する。
凝結具合の判定という観点から画像処理AIによる表面状態の解析により、凝結具合を精度良く判断できる技術の開発が課題である。
(2) 最も重要な課題とその解決策
最重要課題は「コンクリート施工性の向上」である。
① 細骨材のシリカフュームへの置換
球状微粒子であるシリカフュームは、ベアリング効果を発揮するため、コンクリートの流動性が向上する。
また、シリカフュームはマイクロフィラー効果により、組織を緻密化し、長期強度を増大させるため、超高強度コンクリート材料として適している。
一方で、ポゾラン反応によって、セメント中の水酸化カルシウムを消費し、アルカリ性(pH)が低下する。中性化対策として設計かぶり厚を20mm程度大きくする。
②低熱ポルトランドセメントの使用
超高強度コンクリートは、低水セメント比であるため、水和熱が大きく、水和反応が促進されるため、凝結が早くなる。凝結によるスランプロスを防ぐため、低熱ポルトランドセメントを使用する。
低熱ポルトランドセメントを使用したコンクリートは、水和反応が遅くなるため、湿潤養生期間を7日以上確保する。
③鉄筋間隔の確保
超高強度鉄筋を使用し、部材断面に必要な鉄筋の量を減らす。部材断面に対する鉄筋本数(断面積)を減らすことで、コンクリートの施工性を向上させる。鉄筋同士のあきは、鉄筋径の1.5倍以上かつ粗骨材の最大寸法の1.25倍以上を確保する。
鉄筋の付着強度はコンクリート強度に比例する。超高強度コンクリートは、付着強度が増大するため、靭性設計するうえで、超高強度鉄筋に適した材料である。
ここで、超高強度材料で断面を合理化した場合、鉄筋端部の定着長を確保するのが難しくなるため、機械式定着プレートで必要定着長を短くする。
(3)新たなリスクとその対策
①技術の高度化による管理技術者不足
フレッシュコンクリートの受入れ検査時に、品質管理に関する高度な技術が求められ、管理者不足が生じるリスクがある。
管理者不足対策として、遠隔臨場による専門家の管理立会やAI画像診断による目視検査技術開発を行う。
②輸入材料のコスト
シリカフュームは、国内での生産量は極めて少なく、ほとんどを輸入に頼っている。世界情勢の変化による急激な円安で輸入材料の価格が高騰し、想定外のコストが掛かる可能性がある。
コスト増大対策として、石灰石微粉末などの国内で生産可能な代替材料を使用する。
 ③収縮ひび割れによる耐久性の低下
コンクリートのひび割れ抵抗性は、鉄筋の表面積に比例するため、鉄筋比が減少することで、収縮ひび割れの発生リスクが増大する可能性がある。
耐久性低下対策として、膨張材を20kg/㎥添加し、ケミカルプレストレスを与えることで、自己収縮量を100μ程度減少させる。
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鋼コン Ⅲ-2
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我が国では、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテンナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテンナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。
(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1/5 鋼コン 専門事項:コンクリート構造物
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 1.予防保全型メンテナンス推進の課題
(1)ICT導入によるインフラメンテナンスの効率化
 予防保全型メンテナンスにより、維持管理に係る作業が増加している一方、人口減少等により担い手が不足している。この問題に対し、維持管理の各作業をドローンによる点検等のICT技術の導入で高度化する。自動、半自動作業による作業時間の短縮や省人化で、インフラメンテナンスを効率化する。
(2)民間の活用による早期の処置の実施
 地方自治体では人材不足等により、補修等の処置が遅れている。14年度の点検で健全度がⅢ以上と診断された橋のうち、19年度時点での未着手率は52%となっている。限られた人的資源で早期に処置を実施するためには、契約方式の工夫(地域維持型契約方式等)により、民間の人材、資金、ノウハウを活用する取組みが必要である。
(3)住民との連携、協同による維持管理の普及
 日常的マネジメントの担い手として、住民の維持管理への参画が進められている。しかし、住民に維持管理の重要性や参加手法の存在が浸透しておらず、普及していない。インフラツーリズム等の取組みで維持管理に触れる機会を増やし、住民の参画を促す。
2.前記課題(1)ICTによる効率化の解決策
(1)センサーによる遠隔自動モニタリング
 点検作業の補助として、光ファイバーセンサー等による遠隔自動モニタリングを導入する。
振動、たわみの計測には、設置した箇所の加速度を計測できる加速度センサーを使用する。また、ひび割れ、ひずみ、温度変化には、センサーが敷設されている範囲の入力光と反射光の変化を検知する光ファイバーセンサーを使用する。遠隔自動モニタリングで人員と時間を削減し、点検の負担を軽減する。
(2)AIによるひび割れ診断
 撮影画像を使ってAIがコンクリートのひび割れを自動で検出し診断する技術を導入する。診断には現地でスケッチした数十枚の図面を手作業でデータ化し、分析する作業が必要で、多大な作業時間を要する。AIによる画像解析を使えば、デジカメで撮影した画像があればこれらの作業を自動化できるため、人的負担を軽減できる。
導入初期は限られた学習データを基に診断するため、判別精度を保証できる範囲は限定的である。技術者が継続的に、判別の難しいもの、特殊事例等を追加していくことで、適用範囲を拡大する取組みが重要である。
(3)維持管理のデータベース化
維持管理情報を電子化し、一元的に管理する。管理する様々な構造物の状況を参照、比較でき、類似構造物の評価・分析が容易になると同時に精度が高まる。劣化予測、LCC計算にも同様の効果が得られる。これにより年度別の補修件数等を把握でき、計画的な維持管理の基礎資料として活用できる。効率的な補修補強計画に寄与する。
3.新たなリスクとその対策
(1)機器の耐久性
 予防保全型メンテナンスにより延びた構造物の寿命に対して、センサー等機器類の耐用年数が短いリスクがある。自然環境が厳しい場合、断線、コンクリートとセンサーとの接触の不具合等により、5~10年程度で機器類の不具合が発生する恐れがある。
 対策として、機器の保守を維持管理に組み込み、性能維持する方法が良い。一方、オープンイノベーションにより、安価なモニタリング技術の開発を推進することも重要である。
(2)詳細不明構造物の存在
 維持管理情報のデータベース化を進めるほど、設計図書が無く、竣工年度や形状、材料等が不明な構造物のデータが増加する。耐用年数や当初の内部の状況がわからないため、健全度判定や補修計画には常に危険側のリスクが伴う。
 対策として、様々な情報収集により、維持管理計画の精度を向上させる必要がある。他自治体を含む同時期に建設された類似構造物の参照、電磁誘導法やコア採取による圧縮強度試験等の調査、さらには復元設計による性能評価を実施する。これらを通して、可能な限り現況を把握しリスクを取り払う。
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答案2/5 鋼コン 専門事項:コンクリート施工、維持管理
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(1)予防保全型メンテナンス推進のための課題
①ICT技術などの革新的技術の活用
 維持管理業務の生産性を向上するという観点から、ICT技術などの革新的技術の活用により、効率的に予防保全を推進していく必要がある。例えば、UAVによる点検業務の効率化やAIによる点検員の診断業務の支援などが挙げられる。
②少子高齢化に伴う担い手不足対策
 現在、産官学にかかわらず少子高齢化に伴い、維持管理業務の担い手不足が顕在化しているという観点から、担い手を確保する必要がある。例えば、女性技術者や外国人などダイバーシティ推進による雇用拡大や、慢性的に技術職員が不足している小規模地方自治体における住民協働による点検業務の補助が挙げられる。
③老朽化インフラの選択と集中
 道路の5年定期点検が2巡目に入り、現在、要対策と判断された箇所の補修補強を行っているところだが、それらを全て完了しなければ、完全な予防保全サイクルを回すことができないという観点から、我が国が抱える大量のコンクリート構造物の選択と集中による機能集約と解体により膨大なストックを減らしていく必要がある。例えば、過疎地域における老朽化インフラについて、リダンダンシーを確保した上で、利用の少ないコンクリート構造物の撤去等を行うことが挙げられる。
(2)最も重要と考える課題とその解決策
課題:①ICT技術などの革新的技術の活用
解決策①:ICT技術などによる点検診断の効率化
 UAVに搭載したデジタルカメラでの撮影により、点検業務を効率化する。UAVで撮影したデジタル画像はAIにより画像解析診断を行うことで、点検員の診断業務の支援を行う。結果、点検作業時間が従来の目視点検に比べ約60%の時間短縮効果がある。
 また、橋梁にセンサを取り付け、桁の荷重状況や外ケーブルの緊張力の変化をモニタリングし、リアルタイムに把握を行うことで、大きな変状が発生する前に対処が可能となる。
解決策②:BIM/CIMの活用による効率化
 調査・設計段階から施工段階までのあらゆる情報を3次元モデルに入力し、維持管理段階に引き継ぐ。維持管理段階では、コンクリート構造物の劣化情報、補修・補強情報を3次元モデルに蓄積し、今後のメンテナンス計画策定など、効率的に維持管理を進めることができる。
解決策③:インフラメンテナンス2.0の推進
 地方自治体などのインフラ施設の管理者と、企業や大学等研究機関が保有する維持管理情報の電子化・統合を実施する。それらの膨大なデータを一括で検索・活用できるシステムを構築し、類似事例の劣化情報により、健全度の判定などに活用できる。
(3)新たに生じうるリスクとそれへの対策
リスク:アウトプットデータの過信
 ICT技術などの革新的技術やBIM/CIMの活用により、コンクリート構造物の診断結果や構造物情報などのあらゆる情報が、迅速に確認できるようになり、業務の効率化・スピード化が図られる。しかし、それらのアウトプットされたデータの過信により、特異値やインプットデータの誤りがあった場合、それに気づくことができず、判断ミスや重大な瑕疵が起こる懸念がある。
対策①:各段階における照査体制の構築
 AIなどによるアウトプットデータの妥当性を必ず技術者が確認する体制を構築する。なお、複数の技術者のチェックにより、手戻りを防止する。
対策②:技術者の継続研さん
 それらのデータの妥当性を判断できる技術力を培うために、熟練技術者の技術継承に加え、ICT技術など最新技術の知見を広げることで、技術力の向上を図る。
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答案3/5 鋼コン 専門事項:コンクリート構造  S
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1.予防保全型メンテナンスにおける課題
(1)地方自治体におけるメンテナンスサイクル
 道路橋は、全国に約70万橋存在しその内約7割になる約50万橋が市町村道であり、地方自治体の管理する道路橋をいかに効率的・効果的に管理していくかが重要である。また、限られた予算や技術者の中、地方自治体だけで維持管理を行うことは困難な課題がある。
■講師コメント 困難さをただ言うのではなく、現状を打開する新しいメンテナンス手法やシナリオ転換を鋼コンの視点から述べると良いでしょう。
(2)点検品質の確保
 道路橋の定期点検において、点検困難箇所を多く有する事や部材別の健全度評価だけではなく、構造物全体としての健全性評価も必要なことから、点検技術者には高度な技術力が求められる。しかし、少子高齢化に伴う新規就労者の減少や厳しい建設産業の労働環境による就労者の定着が進まないことから、技術の伝承が十分に行えず、点検品質が低下することが懸念される。
(3)人口減少社会への対応
 我が国は今後、少子高齢化が急速に進行することにより、コンパクトシティ化の進行が見込まれる。これにより、中山間地域等の過疎化が更に進行し今後消滅する集落の発生も見込まれる。このため、中山間地域等の使用頻度が極端に少ない社会インフラについて、廃止・撤去等の選択と集中を行うことが人口減少社会対応から重要である。
■講師コメント 課題が発散しています。予防保全型メンテナンスに焦点を絞って課題を挙げられた方が良いでしょう。
2.最も重要と考える課題と複数の解決策
 上記の課題の中で、(1)地方自治体におけるメンテナンスサイクルが最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。
(1)ICT・AI技術の活用
 点検・診断等にICT・AIによる新技術を活用することで、省力化・効率化・低コスト化を行うことが重要である。具体的には、ドローンによる橋梁点検やAIによる構造物変状の診断が挙げられる。
■講師コメント 「地方自治体におけるメンテナンス」と系統がやや違うようです。
(2)基準類の整備等
 点検・診断結果のバラツキや維持修繕等の不適切な工法採用を回避するため統一した基準やマニュアルの整備が重要である。国が主導して主導して統一した基準やマニュアルを整備し、点検・診断や維持修繕工事の品質向上を図る。また、PPP/PFIによる民間人材を活用することで地方自治体の技術者不足の解消、民間のノウハウを取り入れることで業務の効率化を図る。
(3)データ活用型インフラメンテナンス
 IOTの新技術により、計測・点検、補修・更新等の膨大なデータが得られる。これらの情報を有効活用できる様に、インフラメンテナンス2.0の推進を行う。具体的には、各管理者の保有している情報から、電子化すべきデータの項目・内容等の統一を図り、併せて各管理者、企業、研究機関等が保有しているデータベースを活用することで、得られた情報を各管理者間相互共有や多くの情報分析によるメンテナンスの高度化、効率化が可能となる。
3.新たに生じるうるリスクとその対策
(1)新たなリスク
ドローン等の無人点検や新たなデータベース構築には、地方自治体特に小規模な市町村では、人材・体制、予算面で難しく、データ活用型インフラメンテナンス導入が進まない。
■講師コメント 比較的わかりやすい懸念事項であって、前提事項みたいな印象を受けます。リスクとは、もう少し深く考えて、技術士以外では予測困難なことがふさわしいです。手段的な事項よりシステム、根幹にかかわることを挙げた方が良いでしょう。
(2)対策
国による新たな補助金制度の設立や道路メンテナンス会議による各管理者と技術の共有を図ることや研修を通して体系的な技術アドバイスを実施する。また、PPP/PFIによる民間人材を活用することで地方自治体の技術者不足の解消、民間のノウハウを取り入れる。
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答案4/5 鋼コン 専門事項:コンクリート構造物維持管理 S
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1.多面的な課題の抽出と分析
①いかに新技術を活用したシステムにしていくか
 厳しい財政状況下において、膨大な構造物を管理していくためには、適切な時期に適切な補修・補強を実施する必要がある。しかし、現在の労働集約型体制では、時間や労力を多く要する。
そのため、予防保全の促進を目的とし、新技術を活用したシステムにしていくかが課題である。
■講師コメント 予防保全に必要な新技術とは何か。自動化、ロボット化を挙げられた方が良いでしょう。新しい技術であればよいわけではありません。
また、問題文と同じ内容の繰り返しが冗長のようです。前置きは簡潔に、ご自身の提案を単刀直入に力説された方が高得点を期待できます。
②いかに高規格材料により機能を向上していくか
 構造物の老朽化や連続的な災害により、膨大な構造物の機能が低下しているが、限られた予算や人員で管理していくには限界がある。
そのため、高強度や高耐久性を持ち合わせた高規格材料を用いり、構造物の機能を向上していくかが課題である。
③いかにインフラ構造物を集約化していくか
人口減少・高齢化が進む中、大都市一極集中により、拡散している地域社会の活力は低下している。
その中で災害復旧や新たな防災対策工事を兼ねつつ、今後持続的に予防保全を実施していくことは困難である。そのため、予防保全を確実に進めることを目的とし、インフラ構造物の集約化を図っていくことが課題である。
2.重要課題「新技術を活用したシステム」の解決策
(1)モニタリング技術による点検の効率化
 予防保全を効率的に進めるためには、属人性の高い点検作業を効率化していくことが求められる。
そのため、遠隔でリアルタイムに構造物の変化等を検知することが可能なモニタリング技術を活用する。  
これにより、点検の効率化が図れるとともに、得た情報は設計などへフィードバックできる。
(2)AIを用いた診断技術の高度化
 予防保全を合理的に進めるためには、正確な診断が求められるが、現在主流となっている人間頼りの方法では技術者の技量に左右されるため、診断結果にばらつきが生じる。
そのため、撮影した画像や打音調査の結果から、損傷の進展状況や健全性を自動的に評価することが可能なAI技術を活用する。これにより、正確で定量的な結果を得ることができる。
(3)インフラ・データプラットフォームの構築
 予防保全を戦略的に進めるためには、得られたデータを効果的に利活用し、維持管理サイクルを確立していくことが求められる。そのため、各管理者が保有している点検診断やその後の修繕更新データを一元的に集約化・共有を図れる、インフラ・データプラットフォームを構築する。これにより、予防保全を高度・効率的に進めることができ、小規模自治体における予防保全も補助することもできる。
3.解決策に共通するリスクと対策
①リスク:技術の空洞化
近い将来、熟練技術者の大幅な離職が予想される。
その中で現場での複雑な作業が少なくなることによる技術伝承の場の喪失、ICT機器やマニュアルへの依存が生じる。これにより、技術の空洞化が発生する可能性がある。
②対策:育成システムの再構築
官民学が連携しICT技術と現場技術力を兼ね備えた技術者を育成する。
熟練技術者の知識や技術をAIやloTによりナレッジマネジメント化し、それをOFF-JTにより効果的に学習させることで、技術力を向上させる。
また、地域コンソーシアム等でICT技術の研修やVRを用いた仮想ICT工事を実施する。これらにより、新たな育成システムを構築する。
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答案5/5 鋼コン 専門事項:コンクリート構造設計 S
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1.予防保全型メンテナンスの推進に当たっての課題
(1)点検・状態把握の高度化
点検は現地での近接目視による状態把握が基本である。しかし、この手法はコスト、人的資本が多くかかる。市町村は、点検費用が高く予防保全型管理のための修繕費を確保できていない。
よって、点検を効率化する観点から、状態把握の手法を高度化することが課題である。しかし、ドローン等で効率的に状態を把握する技術が普及していない。
(2)維持管理記録の高度化
点検調書は現場で作成する損傷図、写真を基に手作業で作成しており時間がかかる。また、修繕工事は2次元の図面で行っており、理解に時間がかかるとともに、間違いが生じやすい。
よって、調書作成や修繕工事の理解に要する時間を削減する観点から、維持管理記録を高度化することが課題である。しかし、自動点検調書作成システムや3次元モデルの導入が進んでいない。
(3)診断の高度化
健全度評価、補修時期の診断等は技術者が技術的知見に基づき定性的に行っているため、バラツキが生じやすい。なお、今後、高齢化で大量の熟練技術者が退職するため、属人的な診断では限界がある。
よって、判断を効率化するため、診断を高度化することが課題である。しかし、診断技術の開発に資する点検、修繕記録などのビッグデータは各管理者で保有しており集約、オープン化できておらず、診断技術の開発、現場導入が進んでいない。
2.重要な課題と解決策
重要な課題、課題(3)「診断技術の高度化」について解決策を述べる。
(1)解決方針と具体策
 課題(3)の解決方針は、点検、修繕記録などのビッグデータを集約、オープン化し、診断技術の開発を促進させ、現場導入を進めることである。
① ビッグデータを基にAI劣化診断技術を開発し現場で活用する。AI技術は、部材やコンクリート強度に応じた診断を行えるようにする。
② 既設コンクリート構造物にセンサー(LPWA等)を設置し、ひずみ、固有振動数等のデータを取得し、AIで修繕時期を判断する。
③ 取得した応答値や部材の残断面から残存強度、劣化曲線を算出する。その劣化曲線から今後の劣化進行を予測する。これを基に定量的な管理水準を設定する。
④ 健全度、残存強度、劣化予測を踏まえ、AI技術で修繕の優先順位を自動で決定する。
ここで留意すべき点はデジタル人材の育成を行うことである。建設業はデジタルシフトが遅れており、デジタル技術を使用できる人材が少ない。そこで、国が主導しデジタル教育の研修会、IT人材との交流会などを行い、デジタル人材を育成する。
3.解決策に共通して生じうるリスクとその対策
 診断をAIに頼ることで、技術者が技術的検証をする機会が減り技術力が低下し、緊急時の対応力が低下するリスクがある。これにより、構造物の安全性が低下するリスクがある。また、AI解析技術の誤診断による既存インフラの安全性低下リスクがある。例えば、修繕すべき構造物が放置される可能性がある。
その対策として、OFF-JTによる教育、ベテラン技術者とチームを組んだ業務遂行、AI技術の誤診断チェック体制の構築を提案する。現場作業はデジタル技術を使う若手とベテラン技術者がチームを組んで行う。デジタル技術は、最新が常に変化するため、その妥当性を検証できる体制を整備しておく。デジタル技術は発展途上であるため、定期的な見直し、バージョンアップなどの作業が必要となる。
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