技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


建設部門模範答案
選択科目 
施工・積算  U-1-2S  U-1-3
U-2-1  U-2-1  U-2-1S  
V-1 V-1S V-1S V-2
※問題番号末尾のSはスタンダード模範解答を表します。(無印はプレミアム模範解答)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
施工・積算  U-1-2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「建設キャリアアップシステム」について、導入の目的とシステムの概要を説明せよ。また、技能者と事業者の各々にとってのメリットを説明せよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案1 専門事項:施工管理  S
( 1 ) 導入の目的とシステムの概要
 建設キャリアアップシステムは労働者の処遇改善や育成を目的としたシステムである。システムの概要として技能労働者の就労履歴、保有資格、社会保険加入状況などをデータベースとして蓄積し、共有化することで技能の見える化を図るものである。
( 2 ) 技能者のメリット
 技能の見える化により高い技術力や豊富な実績を持つ技能者が適正に評価されることで、賃金の向上など労働条件面での改善が期待される。また、技能者を保有する専門工事会社の施工能力の見える化にもつながるため、高い施工能力を持つ専門工事会社は多くの受注機会を得ることができ、経営の安定化を図ることができる。
( 3 ) 事業者のメリット
 技能の見える化により技能者の技術力や各専門工事会社の施工能力を適正に把握することが可能になり、各工種において最適な人員配置が可能になる。また、技能者の保有資格を建設キャリアアップシステムで確認できるため、工事現場への新規入場時に資格証を確認する必要がなくなるなどの業務の省略化が期待できる。また、就労履歴を確認することで技能者に適切な休日を取らせる配慮が可能になる。社会保険加入状況を確認することで協力会社の健全度を把握できる。
■講師コメント 大変良く書けています。申し分ありません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
施工・積算  U-1-3
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 建設工事において使用される足場(つり足場を除く)の倒壊を防止するため、施工計画及び工事現場管理それぞれにおいて留意すべき事項を説明せよ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案1 専門事項:施工管理
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.施工計画において留意するべき事項
@壁つなぎ:地震時の倒壊を防止するため、十分な数の壁つなぎを設置する。
A養生シートの強風対策:強風による倒壊を防止するため、養生シートや防護板を外し風の通り道を作る。B構造計算:構造強度を超える荷重による倒壊を防ぐため作業時にかかる荷重については十分余裕を持つことが大切である。
2.工事現場管理において留意するべき事項
@壁つなぎの設置
地震による足場の倒壊を防ぐため揺れの大きい上段
部の壁つなぎを確実に設置することと、やらずを設置することで倒壊を防止する。設置基準については安全衛生規則を遵守する。
A強風時の対策 
風荷重による倒壊を防ぐため、天気予報や吹き流し等で風の向きを把握し、その方向のシートを外し風の通り道を作ることで倒壊を防止する。
B設計荷重
材料および機械等を作業床に載荷する際に、設計荷重を超えないよう作業中の荷重を監視する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
施工・積算 U-2-1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
模式図に示すように、幹線街路下において、商業施設と地下街を連絡するため、プレキャスト構造の地下通路10m(開口:幅7m×高さ4m)を開削工法にて新設する工事を実施することとなった。工事に当たり路上での作業は夜間に限られ、作業時間帯以外は交通解放し、周辺への配慮も必要とされる。なお、仮設構造物を含む設計の妥当性は確認済であり、工事範囲及びその周辺に地下支障物はないものとする。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として、以下の内容について記述せよ。
(1)施工計画を立案するために検討すべき事項、(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要なものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2)本工事において、責任者として安全管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。
(3)関係者との調整方策により決定される本工事の施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案1/3 専門事項:施工計画、施工管理
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)検討すべき事項
@掘削底盤の固化強度の検討
 施工中に発生するボイリング、ヒービング、盤ぶくれに対する掘削底盤の変状と埋戻後の上載荷重を調査しプレキャストボックスの沈下を検討する。
A地下街の止水性向上を図る注入方式
地下街と連絡通路の取合いの止水性向上を図り、注入材料、注入範囲、順序、強度を検討する。
B狭小部の締固め不良による沈下防止
プレキャストボックスの狭小部を調査し流動化処理土等の埋戻し材料や土留め壁の残存を検討する。
(2)安全管理
@掘削中の土留壁に作用する応力計測
 土留め壁の変形、支保工切ばりに作用する軸力、周辺構造物の変位、地盤からの湧水を計測する。
施工前に規格値を設け、規格値は応力度の80%に設定し、基準値を超えた場合は、計測頻度を増やす。
対策工は、現段階までのデータからFEM解析を行い、この解析で同定された定数を用いて次掘削から最終段階までの予測解析を行い、予測値を求める。
その結果から土留め挙動を把握し、対策を実施する。
A掘削時の土留め変状防止
 偏土圧の作用を抑制するため、左右対称に掘削し支保工の各段階では、設計上の余掘りを超えない。
 帯水砂層地盤では、場内排水によるドライワークに努め地盤の間隙水圧、浸透水圧を低下させ掘削面の安定を保持する。
 被圧帯水層では、土留壁が被圧帯水層まで達している場合は、掘削中の揺動によって地盤との間に隙間ができ地下水が噴砂するため留意する。特に、調査孔や古井戸が地下水噴出の原因となるためグラウト処理を事前に行う。
B薬液注入時の改良効果
注入中の隆起監視方法は、予め初期値を測定し交波測距器にて自動計測し、警報発信する。
注入後は、ボーリング調査を実施し、一軸圧縮強度試験に加え、薬液が対象範囲を改良されているかPH試薬による浸透具合を調査し掘削時の漏水を防止する。
(3)調整方策 
発注者から狭小部の埋戻し不良による供用後の地盤沈下、漏水を防止する要請があり、私は流動化処理土による充填を発注者へ提案した。
協力業者へは、流動化処理施工による施工効率向上させることを調整した。
使用材料の変更により工費が増加する一方、施工効率向上によりコスト減額がこれを上回る。
このため、発注者へは、流動化処理土への変更を協議し、施工業者へは、施工効率を向上することで埋戻の品質向上を図ることを調整し取り纏めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案2/3 専門事項:施工計画、施工管理
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 施工計画立案のための検討すべき事項
@ 仮土留め工の検討
・地下水位が高いため、掘削時の水対策として土留めの止水性の検討
・ばんぶくれ防止のため薬液注入等の地盤改良の検討
A プレキャストの分割サイズの検討 
・土留め支保工や切梁をかわせるサイズの検討
・路上の作業規制帯に設置できる重機械の吊り上げ可能な
重量サイズの検討 
@ 埋戻し方法の検討  
一般的な工事では埋め戻し材料は掘削土を使用するが、本工事の場合は 路上に幹線道路を有しているため、構造物周辺の圧密沈下の懸念がある。
 埋め戻し材料の沈下に対する調査をし、掘削土を使用できるか検討する。
2. 安全管理と留意点 
安全管理の箇所/ポイント/点だけでなく、その留意点(安全にする方法)も述べるように。
@ 薬液注入による土留めや建物の変位
A 吊り上げ機械の転倒  
B アウトリガー部の沈下対策 
3. 関係者との調整により決定する事項
@ 方針:近隣に営業物件があるため昼間の工事は騒音をたてられないため夜間の作業時間を増やすことが大切。
A 方策:関係機関との道路協議を速やかにし、常設作業帯等の設置承諾を得るなどして夜間の作業時間を増やす。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案 3/3 専門事項:施工計画  S
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
( 1 ) 施工計画を立案する上で検討すべき事項
■講師コメント 適切な施工管理の重要度判断ができています。
@ 揚重機械の選定と据え付け場所の検討
 プレキャスト部材を設置する際には、揚重能力・作業半径を考慮した適切な揚重機械を選定する必要がある。路上での作業が夜間に限られ、作業時以外は交通開放しなければいけない施工条件を考慮すると、移動式クレーンの使用を検討する。
揚重機械の据え付けを地山上に行う場合は、その地耐力を確認し、必要に応じて地盤改良などの補強を行う。路面覆工上に据え付ける場合はプレキャスト部材揚重時の上載荷重を考慮して覆工桁などの仕様を決定する。
■講師コメント 段落分け↑した方がよいでしょう。
A地盤改良による近接構造物への影響
 地盤改良により地盤が一時的に乱されるため、近接構造物(商業施設)への影響を適正に評価し、場合によっては防護を行う必要がある。地盤改良の施工においては、近接構造物への影響が小さくなるように、近接構造物に近い箇所から遠い箇所に向かって施工を行うことを原則とする。
B土留め壁・土留め支保工の計測管理
 土留め壁に過大な変形が生じた場合に土留め背面の地盤沈下などが生じるため、土留め壁・土留め支保工の計測管理を行い、適切に管理する必要がある。土留め壁については、変位計・傾斜計を設置し、各施工ステップ、大雨・台風・地震などに適時計測を行い変状が発生していないかを確認する。土留め支保工においては、切梁にひずみゲージ・土圧計を設置し、土圧・水圧による過度な荷重が作用していないかを確認する。
( 2 ) 安全管理における留意点
 公衆災害の防止に努める。設置する路面覆工上が歩道として利用されることを考慮すると、路面覆工の段差を極力なくすことで、車椅子利用者が安心・安全に通行できる環境を整える。また、点字ブロック・誘導ブロックを適切に設置することで、視覚障害者に対する配慮を行う。
 3 大災害の1つである墜落・転落災害の防止に努める。開削工事においては、覆工板を開閉して掘削作業などを行うことになるが、その際に生じる開口部には手摺などの転落防止措置を確実に実施する。また、高所作業においては、安全帯・フルハーネス等の墜落防止用器具を使用できる安全設備を必ず設置する。
( 3 ) 関係者との調整方針・調整方策
 関係者との調整により決定される施工条件として、騒音・振動の制限を挙げる。作業が基本的に夜間作業となることを踏まえると、近隣住民に対して騒音・振動に対する配慮を行う必要がある。
■講師コメント 段落分けした方がよいでしょう。
対策として、騒音・振動の制限値は法令より厳しい値である55 デシベルとして、施工計画・施工管理を行う。使用機械は低振動・低騒音型を採用する。局所的に騒音が発生するエリア全体を防音シートで囲うことで、騒音の発生源における防音対策を行うことも有効である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
施工・積算 V-1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事において週休二日対象工事の発注が拡大している。建設業が引き続き、社会資本整備、維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組みを一層進めていく必要がある。
このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問に答えよ。
(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき事項を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で課題の内容を示せ。
(2)前門(1)で抽出した、課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前門(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案1/3 専門事項:施工計画
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1) 技術士としての課題
@施工効率化 
 熟練技術者の不足により計画・施工に時間が掛かり施工中の手戻りが発生する。このため、BIM/CIMを活用し設計を可視化する。施工中は、3次元測量により得られた3次元データをICT建機に取込むことで自動化施工する。これらの情報を一元化管理することで施工効率化を図り工程短縮する。
A技能者の処遇改善
 休日増加により必要経費が増加する。そのしわ寄せが技能労働者の低賃金化、休日不足を招く。このため、建設キャリアアップシステム活用により社会保障加入促進を図り、企業の施工能力見極めに活用する。この優良企業に対し週休2日を加味した下請契約をすることで技能労働者の能力に応じた処遇改善を図り、安定した休日確保する。
B職場環境の整備
 少子高齢化により技術者が不足する。それを補うため、高齢者、外国人、女性等が働きやすい現場環境を整備して技能労働者を確保する。それには、高齢者の負担の少ない作業調整や外国人実習生の教育制度の充実を図る。それから女性専用トイレ設置、育児両立への配慮を行う。これにより、多様な人材確保を図り、一定の現場進捗を維持することで週休2日を確保する。
(2)最も重要と考える課題と解決策
@施工効率化
(a)情報化施工
土工事では、3次元測量で得られたデータを取込み、マシンガイダンスにより自動施工する。この技術は、丁張不要となり経験不足の技術者でもアシスト機能により容易に施工可能となる。
施工後は、点群測量データを用いた出来形検測、帳票作成をする。このデータを用いて帳票自動作成、検査ペーパーレス化、遠隔立会を行う。これらの一連の作業省力化により、ゆとりある施工スケジュールを可能にする。
(b) CIM化による建設生産システム効率化
測量から3次元データを導入し設計・施工の可視化をする。設計では、鉄筋干渉チェック、主要構造物と附帯構造物の取合い検討に用い、設計成果の品質確保や施工中の手戻り防止する。
施工計画では、仮設・施工のステップモデル作成に活用し効率的な人材配置、資機材計画用い、限りある資源を有効活用する。これらの蓄積データを一元化管理し、維持管理・更新時の概略設計に活用することで無駄を省き、労働時間を短縮する。
(c)標準化及び高生産化
コンクリート構造の規格、仕様のPCa化やユニット化により施工を標準化し全体最適化を図る。PCa化、ユニット化の特徴は、工場製作となり現地の天候、人材、資材調達などに左右されることなく安定した施工進捗を確保する。
流動化コンクリートは、充填が円滑になり締固め作業が容易となり、経験不足な技術者でも一定の品質、安全確保に有効である。これらの施工標準化により、熟練技術者を補う人材確保を図り、休日を確保する。
(3)新たに生じうる懸念事項と対策
懸念事項
情報化施工で効率化により出来形検査、帳票作成、立会検査の省力化されはするものの、完成したその暁には建設技術者の仕事は減少する。このため、失業者が増加することで人材が不足し技術の伝承が困難となる。働き方は、技能者格差が大きくなり建設業の労働環境が悪化する。
対策
建設リカレント教育での人材育成、ナレッジマネジメントによる技術伝承する。そのためには、官民一体となったICT技術講習、多能工育成等の講習と実習を行い、その後フォローアップ研修をする。
入札では、ICT化を入札参加条件とした初期導入費補助や工事評価点加点など利用率向上を図る。この取組みを通じ技術の定着化と中小企業の技術促進を図り人材確保する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案2/3 専門事項:施工管理  S
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)本工事の工事従事者の週休二日を実現するため、検討すべき課題を以下に示す。
課題1:いかに週休二日と品質確保を両立するか
 近年、社会では「働き方改革」や「生産性向上」を目指す目的で業務を効率化する機械やソフトなどの技術が流通している。それらの機械やソフトは業務を効率化する半面、効率性を追求するあまり、構築する構造物の品質低下につながる危険性がある。技術面の観点から、いかに週休二日と品質確保を両立するかが課題である。
■講師コメント 問題点の説明ではなく、建設施工技術での解決方針を示された方が良いでしょう。

課題2:いかに週休二日と安全確保を両立するか
 少子高齢化社会を迎え、若者の「理科離れ」などの影響で働き手の数が減少している。また、熟練工やベテラン技術者の退職で経験者の数も減少している。慣れない若手技術者だけでは危険箇所に気付きにくい。少ない人数と日数で引き続き社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発を進めていく必要がある。人材能力面の観点から、いかに週休二日と安全確保を両立するかが課題である。
■講師コメント 一般的には、解決策の無い、解けない問題です。それをどうするかまで言及すると良いでしょう。
課題3:いかに週休二日と原価低減を両立するか
 業務を効率化するICT建機やUAV、ソフトなどのうち、一般的になったものは低廉化してきたが、依然として高価である。それらを予算に見込まれていない状況で導入すると工事原価に大きな影響を与える。
 また、新しい技術の開発費用を工事原価で、まかなうことは難しい。新技術の開発はリスクが大きいので着手しづらい。制度面の観点から、いかに週休二日と原価低減を両立するかが課題である。
(2)上記に示した課題のうち、課題1の「いかに週休二日と品質確保を両立するか」は喫緊の課題であり、最も重要な課題として解決策を以下に述べる。
解決策1:コンクリートのプレキャスト化・ユニット化
 本工事は多工種工事であるのでコンクリート構築工事があると考えられる。そこで、コンクリートのプレキャスト化を導入する。プレキャストコンクリートは工場で製作するので天候の影響を受けず品質向上が見込まれる。また、鉄筋の機械式定着や機械継手を採用することで現場作業の省力化が期待できる。しかし、製作・運搬・納入時に破損させないように十分、留意する必要がある。
解決策2:情報化施工
 ICT土工から始まったICT重機を採用する。マシンガイダンスやマシンコントロールを導入し丁張や測量の業務を短縮することができる。さらに重機オペレーターが出来形を考慮しながら作業するので品質向上につながると考えられる。また、情報化施工によってデータに基づく検査が可能となるため、技術者の手間を減らしつつ従来と同等の品質管理を実施できると考える。
解決策3:国土交通プラットフォーム
 地理情報や土質・地質情報の管理は地方自治体や企業、団体などが管理していて、さまざまな様式である。2020年に国土交通省が公開した「国土交通プラットフォーム」を使用することで、施工計画の時点で本工事の地理情報、土質・地質情報を得ることができる。よって、現地での地質調査の回数や時間を短縮することができると考える。また、本工事が完了したあとも工事で知り得た情報や地質データを共有することで今後の業務に活かすことができると考えられる。
(3)上記で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について以下に示す。
懸念事項:若手技術者の技術力の低下
■講師コメント 比較的わかりやすい、一般的事項となっています。ここはもう少し、技術士としての鋭い分析の視点を示した方が良いでしょう。
 ICT建機や業務を効率化することで若手技術者の技術力の低下が考えられる。
対策:資格・教育制度の充実
 新しい資格や教育制度を充実させる。建設業法の改正により「監理技術者補佐」が導入されたが、監理技術者を補佐する1級技士補には、現時点で継続的な研鑽が求められていない。監理技術者の資格と同様に継続研鑽(CPD)制度を導入し技術者を教育することが有効であると考える。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案3/3 専門事項:積算  S
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1、多面的な課題
(1)働き方改革をする
 建設業は3K(きつい、きたない、危険)の印象があり、就業先として魅力が低く、担い手が少ない。週休二日を実現するには施工の省力化、環境改善などが必要であり、発注者、受注者共に働き方改革を推進する必要がある。技術面の観点から、いかに働き方改革するかが課題である。
(2)品質低下を防止する
 週休二日により稼働日が減少することで、結果的に工期がひっ迫し、品質低下につながる可能性がある。工期ひっ迫による焦りから、判断ミス、チェックミスが生じ、品質低下を招く危険性がある。品質面の観点から、いかに品質低下を防ぐかが課題である。
(3)賃金を確保する
 東日本大震災以降、公共事業労務費単価は上昇傾向にあるが、元請企業と下請企業の賃金格差は拡大している。給与体系が日払いの労働者も多く存在し、週休二日にすることで、労働日数が少なくなり、賃金が減少する。建設業は人手不足であり、労働者は少しでも賃金の高い現場を優先する。賃金が確保できなければ、現場に働き手が集まらなくなり、施工計画自体の見通しが立たなくなる可能性がある。賃金面の観点から、いかに賃金を確保するかが課題である。
2、最も重要な課題、解決策
(1)最も重要な課題
 (1)働き方改革をするの解決策を以下に示す。
(2)解決策
1)ICT(i-construction)の導入
@ICT工事の導入
 ICT基準を整備し、将来的に地方自治体まで展開する。また、進行が遅れている橋梁、地盤改良など、多方面の分野での導入を推進する。
ABIM/CIMの活用
 設計から施工、維持管理まで、3Dデータ化を推進し、建設生産管理システム全体で利活用する。また、CIMガイドラインの整備を推進する。
Bプレキャスト化の推進
 大型コンクリート構造物(ボックスカルバート、L型擁壁など)において、現場打ちよりも費用対効果が高く、品質が安定しているプレキャスト化を推進する。
2)新・担い手3法
@適正な工期設定
 発注時の休日、準備期間を考慮した適正な工期設定、施工時期の平準化など、長時間労働を是正し、労働環境の改善を図る。
A適正な契約
 受注者に対して、適正な工期、金額での下請契約の締結を図る。下請け企業の適正な利益の確保を図る。
B現場の処遇改善
 建設業の許可要件に社会保険加入を追加、下請企業の労務費相当額は現金払いとするなど処遇改善を図る。
3)新3Kに向けた取組み
@「労務費見積尊重宣言」促進モデル工事の実施
 下請けの労務費見積を尊重する企業に対して、総合評価、成績評点などを有利にする体制を構築する。
ACCUS義務化モデル工事
 WTO工事を含む一般土木工事において、CCUS活用の目標と達成状況に応じて評点を加減点するモデル工事を発注する。
B誇り、やりがい、魅力の醸成
 建設業は社会資本の担い手、地域の守り手として役目を果たしている。建設業に対してのリブランディングの提言を推進する。
3、懸念事項と対策
(1)懸念事項
 施工プロセスの省力化により、これまで当たり前だった施工工程がブラックボックス化され、若手技術者の技術力が低下するといった懸念事項が生じる。
(2)リスク対策
 研修会、資格制度、CCUSの活用、OJTだけでなく、OFF−JTも実施するなど、技術力の維持・向上に向けた取り組みが対策として考えられる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
施工・積算 V-2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
公共工事の入札・契約では、透明性の確保、競争の公平性の確保、入札談合等の不正行為の排除、ダンピング受注の防止、不調・不落対策等の入札・契約の適正化が求められる。発注者においては、ダンプング受注を防止するための適切な低入札価格調査基準や最低制限価格の設定と、不調・不落対策等に対応するため適切な発注が求められている。一方、応札者は、発注者が予定する予定価格および低入札価格調査基準を推算し、応札している実態も指摘されている。このような状況を踏まえて、以下の問に答えよ。
(1)公共工事が、適切な額で応札・落札されるための課題について、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それらの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前門(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を複数示せ。
(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
答案 1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1) 適切な額で応札・落札されるための課題
@技術提案による品質とコストの両立
 需給バランスが変動し発注者と業者で景気の認識違いが生じる。落札金額の上限・下限が変動することで不調、不落発生する。このため、ICT技術等の企業技術を反映した技術提案の促進を図りECI、設計・施工一括発注方式により品質とコスト縮減を図る。これを企業実積、配置技術者の経験等から審査・評価することで品質確保をした低価格な競争入札を可能にする。
Aダンピング受注防止
 受注競争が激化する中、受注高を確保するため、社会保険未加入業者が競争上有利となり、技術力を有する企業が受注できず競争の公平性が低下する。このため、低入札価格基準引上げ、この価格を下回った企業を失格処分とする制度や施工体制の整った企業を評価する建設キャリアアップシステムの促進を図り、下請業者へのしわ寄せを防止する。
B発注者の人材育成
 発注者の技術力不足、人材不足により本来すべき発注者の設計審査機能が果たせず低価格入札となり予定価格の推算企業が増加する。これを改善するには、設計段階から発注者を支援するCM方式・PPP方式により発注者の不足する設計審査機能を補完・支援することで発注者の体制強化により、技術力向上を図り低価格入札を可能にする。
(2)「技術提案による品質とコストの両立」の解決策
(a)ICT技術活用した品質確保
ICT技術を活用した土工事の情報化施工を活用する。切土工事では、3次元データから得られた情報をマシンガイダンスに取込、切土作業を自動化施工する。盛土の締固めでは、GNSSを搭載したローラーを使用し締固め施工中のローラー転圧の走行軌跡を取得し盛土天端の面的な出来形を計測・管理する。これらの情報化施工により、機械の自動化、施工履歴管理により施工効率化を図り、締固めムラの少ない施工が可能となり品質とコストを両立する。
(b)企業実積評価
技術提案で求めた施工計画、品質確保に関してその実現性や安全性について評価する。施工計画では、施工手順、工期の妥当性、地形・地質等の地域特性を配慮した内容であるか評価する。品質確保では、工事目的物が完成した後に確認できなくなる不可視部分の品質確認頻度、方法について評価する。これらの評価に加え、企業の工事実積、過去の工事成績、配置予定技術者の経験、資格を審査することで施工中の技術提案の実現性の確保を図り、経験のある企業が受注することで品質とコストの両立が可能となる。
(C)企業技術力を活かした受注方式
ECI方式、設計・施工一括発注方式の採用により企業の固有技術、ノウハウを活用することで品質とコストの両立を図る。ECI方式では、設計段階から施工業者が設計業務に関与することで現地に適した設計仕様、施工計画により品質確保が可能となる。
一方、設計施工一括発注方式では、構造物の構造形式、主要諸元も含めた設計と施工を一括発注する。これは、ECI方式と比較して構造形式、主要諸元も含めた提案が可能となり、より企業の固有技術やノウハウを発揮しやすくコスト低減につながる。
これらの発注方式により、施工者のノウハウを反映することで、品質とコストの両立が可能となる。
(3)新たに生ずるリスクと対策
リスク
企業実積評価を重視した暁には、技術力の高い企業の受注が増加し品質確保され経済性は高まるものの、過去の工事実積が高い企業に受注が偏り新規参入企業の入札が困難となる。過度な企業実積評価制度は、技術競争が低下し入札の公平性が低下するリスクがある。
対策
工事評価配点基準を見直し、過去の工事実績より工事成績配分を高くする。工事成績点数が高い技術者を評価することで、更なる品質確保を図る。また、技術提案チャレンジ型入札や若手技術者の育成を目的としたチャレンジ型入札を促進し実積の少ない優良企業に入札参入を促すことで技術競争を高める。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

技術士二次試験試験受付

技術士試験対策ならマンツーマン個別指導で

技術士試験対策ならマンツーマン個別指導がおすすめです。当技術士講座ではコンピテンシー指導・各種コーチング指導で技術士資格取得に求められる応用力を高める指導を行っております。電話・スカイプ指導で直接疑問を解決できます。夜間・休日もOK!技術士試験対策なら当講座におまかせください。無料セミナーも開催しております。詳しくはお問い合わせフォームまたはお電話で。お気軽にお問い合わせください。