技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


建設部門模範答案
選択科目 
鉄道  Ⅱ-1-1S Ⅱ-1-1 Ⅱ-1-4 Ⅱ-1-4
Ⅱ-2-1S Ⅱ-2-2 Ⅱ-2-2 Ⅱ-2-2
Ⅲ-1S Ⅲ-1 Ⅲ-1 Ⅲ-2
※問題番号末尾のSはスタンダード模範解答を表します。(無印はプレミアム模範解答)
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鉄道  Ⅱ-1-1
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ロングレール化のための「レール溶接法」を3つ挙げ、それぞれの溶接方法と特徴について説明せよ。
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答案1/2 専門事項:鉄道設計  S
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➀フラッシュバット溶接
 フラッシュバット溶接は2本のレールに対して高電圧を負荷し、電気抵抗の熱によりレール端部を溶かし圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が自動化されているため品質が安定している点である。なお、同溶接には大電源が必要であることから、基本的には工場における一次溶接に適している。
■講師コメント 特徴とはできれば制約事項ではなく、性能、品質管理のテクニックなどプラスの内容がふさわしいでしょう。
②ガス圧接
 ガス圧接は2本のレールの端部を専用のガスバーナーで溶かし、レール同士を圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が半自動化されているため、比較的品質が安定している点である。また、同溶接の機材は小型化されており、線路脇での二次溶接に適している。
■講師コメント 機器の話や施工性といった用法的事項ではなく、レールの熔接に関する原理的なことを焦点とされた方がよいでしょう。
③テルミット溶接
 テルミット溶接は2本のレール間に型枠を設置し、テルミット反応により溶けた溶剤をレール間に流し見込み、レールを溶接する方法である。同溶接の特徴はフラッシュバットやガス圧接と比較して、溶接部の強度及び品質安定性が劣るが、敷設されたレール同士を溶接する三次溶接に適している点である。
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答案2/2 専門事項:土木構造物の設計及び照査
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1.レールの溶接方法と特徴
①フラッシュバット溶接
 圧接法の一つで、部材端面を突合わせた状態で大電流1000A程度を流して接触面にアーク放電を発生させ、その抵抗発熱により、端部を溶かして圧接する。
 主に、工場や基地で200m程度の長尺レールの一次溶接として使用する。疲労強度は、410N/mm2程度確保でき高品質である。ただし、電力設備と加圧設備が大きく高価であり、圧接により部材長が20mm程度短くなる。
②ガス溶接
 圧接による溶接法の一つで、アセチレン炎(1300度)で接合部を加熱して溶鋼を圧接する方法である。
 長尺レールを敷設線路脇で所定の長さにする二次溶接として使用される。溶接部の強度は、母材に極めて近く保たれるため高品質である。ただし、圧接により部材長が30mm程度短くなる。
③テルミット溶接
 融接による溶接法の一つで、アルミニウムと酸化鉄のテルミット反応(2400度)で溶けた溶鋼を部材間に流し込んで接続する方法である。 
 軌道に敷設したレール同士、あるいは伸縮継目と接合する三次溶接として使用される。圧接と比較すると、溶接により部材長が変化しない利点があるが、溶接部が鋳物のため疲労強度が210N/mm2とやや劣る。
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鉄道  Ⅱ-1-4
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都市部における鉄道線間の乗り換えが可能なターミナル駅の改良計画を策定するに当たり、検討すべき事項を3つ以上挙げ、それぞれの内容について簡潔に述べよ。
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答案1/1 専門事項:鉄道設計維持管理
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1.ターミナル駅改良計画の検討事項と内容
(1)相互直通運転化
 相互直通運転化するため、シームレスな乗り換えを可能にすることで、移動や乗り継ぎ待ち時間を削減する。軌間、ホーム有効長・高さ、ホームドアの有無などが相違していることがあるため、改軌や3線軌道化、ホームの延伸などを実施し、規格を統一する。列車遅延が発生すると運行ダイヤの乱れが他路線、他社線などの広範囲に波及するため、折り返し設備を導入し、影響を減少させる。
(2)同一ホーム乗り換え化
 同一ホーム乗り換え化するため、対面乗り換えにより乗り換えを円滑にすることで、移動の距離や時間、上下の乗り換え抵抗を減少する。ホーム構造が島式ホームや切り欠きホームとなるため、ホームや配線を改良する。乗り換えをする利用者がホームに滞留するため、ホームを拡幅し、混雑を緩和する。
(3)多様な交通機関との乗り入れ機能強化
 ターミナル駅では鉄道だけでなく他交通機関への乗り換え需要が高い傾向にある。多様な交通機関との乗り換え機能の強化するため、バスやタクシー、船などの他モードと相互に乗り換えできる交通結節点を形成し、移動を円滑にする。駅と一体となったバスターミナルやパークアンドライドシステムの導入に向けた駐車場などを整備し、他の交通機関と連携をする。以上
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答案2/1 専門事項:鉄道構造物設計
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1.ターミナル駅の改良計画の策定
(1)乗換えの簡略化
 ターミナル駅の混雑状況を分析すると、乗換ルートが複雑でかつ長距離移動距離が発生することが課題である。よって、乗換えについての簡略化を検討する。例えば、相互直通運行や同一ホーム乗換え、移動ルートの最小化を図る等の工夫で利用者の移動抵抗を軽減する効果があり、ターミナル駅の混雑率の緩和、利用者の速達性の向上を評価できる。
(2)バリアフリー化
 近年の超高齢化社会、駅利用者の多様化を分析すると、利用者全員が利用しやすい駅でないことが課題である。よって、バリアフリーの深度化を検討する。例えば、EV設置による段差解消箇所の増設や車いす利用者と歩行者のすれ違いを考慮した最低幅員1.4m以上の確保、視覚障害者のための音声案内や点字案内の推進の工夫で、誰もが利用しやすい駅となる。
(3)表示方法
 ターミナル駅の利用者を分析すると、外国人や高齢者が増加している、また、多数の路線が乗入れしており、複雑化していることが課題である。よって、表示方法の工夫を検討する。例えば、多言語化での表示や表示サイズの拡大、シンプルなデザインでの表記の工夫で、初見の利用者でも理解がしやすい効果があり、利便性向上効果がある。

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鉄道 Ⅱ-2-1
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最大震度6強の地震が発生し、鉄道施設に被害が生じていることが想定された。このため、被害調査を行い運転再開時期の判断も含め復旧方針を策定することとなった。鉄道施設の保守に携わる建設部門の技術者として、この業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1 専門事項:鉄道設計 S
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1.調査・検討事項
①土木構造物の状態調査
 地震発生時には土木構造部が損傷している可能性がある。高架区間においては高架橋の柱部にせん断又は曲げ破壊が生じていないか調査する。また、盛土区間においては盛土の安定性、地下区間においては側壁、上床及び中柱等に破壊が生じていないか調査する。
②軌道の状態調査
 地震発生時には軌道部材の損傷及び軌道変位が生じている可能性がある。そこで、レールを始めとした軌道部材の状態及び軌間等の軌道線形に著大な軌道変位が生じていないか調査する。
③走行支障物の調査
 地震発生時には線路脇の樹木の倒木や跨線橋からの落下物等、列車が走行する上での障害物が線路内に落下している可能性がある。そこで、線路内を中心とした走行支障物の有無について調査を行う。

2.業務の手順及び留意点・工夫点
①被害調査
 上記調査事項を考慮し、被害状況の調査を実施する。
■講師コメント ここは業務の「手順」ですから、時系列に主な作業を並べて、品質管理を述べる他方が良いでしょう。
②運転再開可否の検討
 上記被害調査の結果を踏まえて、運転再開可否の検討を行う。なお、運転再開が可能だった場合においもて、事前に安全確認列車を走行させるなど工夫を施し、安全確認を徹底する。
③応急処置の検討・実施
 ②の段階で運転再開が出来なかった場合、被害状況に応じた応急処置を検討する。なお、旅客への影響を留意し、安全確認が完了した区間から順次、運転を再開する。また、平時から地震時の対応を想定し、可能な範囲で予め現地に緊急用資機材を配置する等の工夫を施すことで応急復旧の時間短縮が可能となる。
■講師コメント 事後のことは領域外です。
④運転再開可否の最終判断
 応急処置の結果を踏まえて、運転再開時期の最終判断を行う。なお、運転を再開した初期段階においては、徐行運転を行い線路内の状況に留意する。

3.関係者の調整方策
①旅客との調整
 旅客は早期の運転再開を望む一方で本業務の担当者としては安全確保が必須であ。そこで、被害状況や運転再開時期などの情報を適宜発信し、納得感・安心感が得られるように旅客と調整する。
■講師コメント 旅客と何をどう調整するのか。試験官は「調整」方法から技術士の判断力、すなわちコンピテンシーを測ろうとしているので、単刀直入に具体策を述べられると良いでしょう。
②運行管理者との調整
 地震発生に伴い長時間にわたり運転を見合わせた場合、駅には多くの旅客が滞留する。そのような状況下で運転を再開した場合、多客による二次被害の発生が危惧される。そこで、運行管理者とは被害状況や運転再開時期について情報共有すると共に運転再開時のダイヤ等について調整する。
■講師コメント 「ダイヤ調整」とは、困難が伴います。どうしたらできるのか具体的に述べると良いでしょう。関係者のだれと調整するかも求められています。
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鉄道 Ⅱ-2-2
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道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化を計画することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/3 専門事項:鉄道軌道設計
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1.単独立体交差化の調査、検討事項とその内容
(1)立体交差構造
交差する道路の空頭または土被りを確保するため、架空線や埋設物の有無および移設の可不可を調査し、鉄道の高架化または地下化の立体交差構造を検討する。事業費や日照、景観などを比較し、総合的に選定する。地下化は一般的に高架化より事業費が増大となる。
(2)施工方式
線形を計画するため、本線・仮線ルートや用地の取得・使用の可不可を調査し、架線方式や別線方式、直上高架・直下地下方式など施工方式を検討する。事業費や工期、用地確保、営業線への影響を比較し、総合的に選定する。
(3)周辺環境保全
立体交差化により音や振動の発生が変化するため、沿線住民の理解と協力を得られるよう周辺への環境、需要を調査し、防音・振動対策を検討する。環境保全のため、防音壁、バラストマットなどを設置する。
2.手順について留意事項と工夫点
(1)線形計画
取り付け位置や勾配によって改良区間が決定するため、支障物の移設や最急勾配の採用を検討し、改良区間を短くする。
(2)仮線計画
立体交差の効果を早期発現するため、プレキャスト製品の使用や本設利用工事桁工法を使用し、片線のみでも早期開通をする。
(3)軌道構造計画
メンテナンスの省力化や騒音・振動対策のため、締結装置の線バネ化や弾性直結軌道化などの低ばね化やレールの重軌条化、ロングレール化をする。
(4)線路切替計画
分岐器の挿入や軌道移設には長時間かつ多大な労力を要するため、電気部などへの引き渡しを含め時間配分を計画する。必要により、作業時間を確保するため、計画運休をする。
3.関係者との調整方策
 大規模工事特有のリソースの逼迫を解消し、効率的に進行するため、私は発注者に電気部や施工会社などとクリティカルパスを全体共有し、手戻をなくすことで、リソースを平準化する。
 緩和曲線と縦曲線が競合すると走行安全性を低下させるため、私は測量会社に対して、カーブ長の延長や緩和曲線、縦曲線の短縮をすることで、重複しない線形を計画し、乗り心地を良好に確保するよう指導する。
 夜間工事では、労務の負担が高まるため、私は施工会社に対して、準備作業など昼間できる作業は夜間から昼間に移すことやICT施工を活用することで、夜間の作業量を減少ややり戻しを削減し、労力や工程に余裕を作るよう指導する。
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答案2/3 専門事項:土木構造物の設計及び照査
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1. 調査・検討すべき事項とその内容
①仮線用地
測量を実施して、近隣住民への影響を最小としつつ、線区の仕様条件(施工基面幅・縦断勾配)を満足できる仮線用地を検討する。
②交差形状の計画
交差部の鉄道と道路の嵩上げ・切下げ計画案による波及効果を調査して、工期・コスト・周辺道路への影響を比較検討する。
③当該軌道の線形計画
線区の仕様条件を調査して、本線への最急勾配・最小曲線半径・分岐番線等の適応の可否を判断し、立体交差による影響範囲の最小化を検討する。
2. 業務手順と留意事項及び、工夫する点
①仮線用地の確保
仮線用地の検討結果を元に、本線から仮線への切り替えによる支障家屋等の損失補償費を算出して、仮線の配置計画を実施する。
②仮線設置と利用
本線の片側に6~8m程度の仮線用地を設けて営業線の移設を行う。十分な用地幅が確保できないケースでは、本線用地内で直上高架方式や直下地下化方式を計画する。
③高架計画または地下化計画
高架計画時は、上部工の軽量化による橋脚基礎の小規模化を図り、工期短縮及び地下構造物への影響最小化の可否を考慮する。
地下化計画時は、道路の通行規制幅を最小化できるように斜角ボックスカルバート等を計画する。
④本線軌道の敷設
防振・防音対策としてロングレール化による継ぎ目の除去や、低バネ軌道パッド等を活用して周辺への影響の最小化を図る。
⑤本線切り替え・仮線撤去
特に、仮線から本線へ切り替え直後には、列車走行時のバラスト等の変動による軌道変位の有無に注視する。
3.関係者との調整方策
一般的な上部工であるベント工法時、現場内に架設桁やベント設備の組立ヤードの確保が困難だと判明した。
私は、協力会社に上部工の一括架設工法を指示して架設桁を工場組立させた。発注者に対しては、工法変更による工期短縮を説き、協力会社へ上部工の契約変更による予算を増額させた。
道路管理者に対しては、工程短縮による全体交通規制期間短縮を説き、発注者から桁架設時の一時的な夜間全面交通規制による道路占有を依頼させて、施工スピードを向上させた。
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答案3/3 専門事項:鉄道構造物設計
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1.調査・検討すべき事項
 道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化を計画する鉄道責任者の立場で以下に述べる。
(1)周辺状況の調査
 施工時、供用後の周辺への影響を最小限とし、地域住民に理解を得ながら事業を遂行する必要がある。よって、家屋調査や地質調査、進入路や工事用道路用地等の調査を行い、周辺状況を正確に把握する。
(2)線形の検討
 改良する範囲によっては、費用、工期、周辺への影響が大きく変動する。よって、現状の線形を把握した上で、線形諸元を整理し、改良を実施する範囲を検討する。
(3)構造物の検討
 立体交差化の構造形式を地上または地下とすることで、費用、工期だけでなく工事規模に係る。よって、施工時の騒音・振動影響、供用後の跡地の利用、景観、電波・日照問題等を含めて、構造形式を検討する。
2.手順、留意・工夫する点
以下の(1)~(3)の手順で実施する。
(1)土質・埋設調査
 構造形式、施工方法を決定する上で現地状況について精度を高めて把握することに留意する。例えば、ボーリング調査本数の増加や試掘調査による埋設物調査を実施する工夫で正確に把握できる効果がある。
(2)構造形式の検討
 構造形式決定の際にはハード面、ソフト面を含めた最適案の選定に留意する。例えば、CIM技術を用い、三次元化し検討を進める工夫で施工時、供用後の問題の可視化、データの一括管理ができ、最適案の選定を簡略化する効果がある。
(3)施工計画
 施工時も交差道路は供用しながらの施工となるため、交差道路への影響に留意する。例えば、施工時の重機、工事車両通行、地盤沈下等の影響をステップ毎に解析する工夫で、必要に応じて防護、対策工の選定が容易になる効果がある。
3.関係者との調整方法
(1)道路管理者
 交差道路との施工時、供用後形式の連携が重要となる。よって、道路管理者と施工時の対策工や供用後の必要空頭等の条件を協議した上で、構造形式、施工計画を立案することで業務を合理的に遂行できる。
(2)地元住民
 施工中、供用後の環境面による影響を指摘されると工期遅延につながる。よって、地元関係者に対し地元説明会を実施し、説明責任を果たし、情報の共有により協力体制を確立する。また、鉄道側も対策を施すことにより業務を効率的に遂行できる。
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鉄道  Ⅲ-1
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 我が国においては、少子高齢化の進行により労働人口の減少傾向が続いている中で、「働き方改革」への対応が求められている状況である。建設業界では施工の効率化だけでなく現場休業の取組など、様々な取組が行われているが、鉄道工事に関しては終電から始発までの間や活線下での列車間合いで施工されることが多く、各鉄道事業者において運行形態や保守体制に応じて、さまざまな検討が行われている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)鉄道工事における作業時間を確保する方策について、輸送サービスのあり方や保守の効率化も踏まえ、建設部門の技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1/3 専門事項:鉄道設計   S
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1.課題
①新技術等活用による点検・保守作業の効率化
 現在の鉄道工事の多くは労働集約型であることから、他の業界や産業に比べて必ずしも効率化されていない。そこで、技術面の観点から、新技術等を活用し鉄道の点検・保守作業の効率化を図ることが、限られた夜間時間帯及び列車間合いで作業時間を確保するための課題である。
■講師コメント 選択科目では建設・鉄道の技術領域をここで宣言すると良いでしょう。単なる「新技術等活用」では課題としてやや曖昧です。
②列車運行時間の見直し
 これまでの鉄道輸送は旅客及び社会のニーズを踏まえて、可能な限り列車運行時間の確保に努めてきた。一方、昨今の新型コロナウイルスにより旅客需要は深夜及び早朝を含めて大きく減少している。そこで、旅客需要の観点から、始発列車の繰り下げ、日中の運行本数の減便及び終電の繰り上げ等を含めた列車運行時間の見直しが、作業時間確保における課題である。
③大規模工事における計画運休
 線路切替のような大規模工事においては、現状の作業時間帯では実施が困難である。そこで、輸送サービスの観点から、線路切替のような大規模工事を実施する際には、予め旅客へ列車運休を周知すると共にバスなどによる代替輸送を確保し、計画的に運休を実施することが、作業時間確保にける課題の一つである。
■講師コメント すなわち課題としては代替輸送などを宣言されると良いでしょう。
2.解決策
 前頁に挙げた課題のうち①新技術等活用による点検・保守作業の効率化を最も重要な課題とし、以下にその解決策を示す。
状態監視保全の導入
 保守作業の効率化を図る際には、1回あたり作業内容を軽微にすることが有効である。1回あたりの保守作業を軽微にするためには、従来の損傷が生じてから保守を行う事後保全から、軌道や土木構造物の状態を監視し損傷が発生する前に軽微な保守を実施し、軌道等の健全性を確保する状態監視保全の導入を行う。
②営業車による線路モニタリングシステムの活用
 上記の状態監視保全を軌道に対して実施する際、線路モニタリングシステムを活用する。同システムは営業車の床下に慣性式の軌道検測装置、レーザー及びラインセンサカメラから構成されている。同システムを搭載した営業車の走行に合わせて、軌道状態をモニタリングすることが可能となる。同システムを活用することで状態監視保全が可能となると共に従来の徒歩巡回や軌道検査の代替が可能となり、軌道の保守作業を効率化することができる。
画像処理による土木構造物点検
 従来の土木構造物の点検は、専用の保守用車を極低速で走行させながら、同保守用車に乗車した検査員の近接目視点検が主流であった。同点検において、ひび割れ等の変状を確認するためには多くの労力と時間を要する。そこで、保守用車を上限速度以下で走行させながら、高画質カメラで土木構造物を撮像する。撮像データに画像処理を施し、構造物に対するひび割れ等を抽出することで、土木構造物の状態監視保全が可能となる共に土木構造物の保守作業を効率化することが可能となる。

3.新たなリスクと対応策
①人身事故等による作業時間の変更
 上述の解決策を全て実行し作業時間の確保に努めた場合においても、人身事故等の突発的な事象により運行ダイヤが乱れ、作業時間を変更せざるを得ないリスクがある。
■講師コメント これは提案内容が原因となって生じるリスクではありません。ご自身の提案に対する評価が求められています。ご提案の「状態監視保全、営業車による線路モニタリングシステム、画像処理による土木構造物点検」をやればやるほど深刻になるリスクは何ですか。それが答えです。
②余裕を持った工期設定
 上記リスクの対応策として、予め不測の事態に備えて余裕を持った工期設定を行い、工期全体で作業時間を確保することで上記リスクを回避する。なお、余裕をもった工期設定を行う際、発注者は工期の長さに応じた適切な諸経費等を踏まえて、発注することが重要である。
■講師コメント リスク対応というよりは、心構えみたいな印象を受けます。問題の解決を他者に求めるのではなく、ここは技術志向の解決法でリスクに対処する方法をご提案された方が良いでしょう。
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答案2/3 専門事項:鉄道軌道設計
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1.鉄道工事の作業時間を確保するための課題と内容
(1)鉄道インフラが今後一斉に老朽化→老朽化が進む鉄道インフラを適切に維持管理・更新する必要→ICT技術が急速に進展している→効率化の観点→限りあるリソースでの対応が求められているため、生産性を向上する
(2)少子高齢化やベテラン技術者の退職、不規則な勤務、就職先の多様化→退職したベテラン技術者や女性、外国人等が働けるよう休日賃金等労働条件改善→人材の観点→技術者不足を解消するため、生産年齢人口を拡大することが課題
(3)線路内の作業は線路閉鎖やき電停止などの時間的制約がある→鉄道工事は単年度契約が多く年度末に工事が集中→制度の観点→ゆとりを持った作業を可能にするため、繁忙期の分散化を図ることが課題
2.最も重要と考える課題とそれへの解決策:「生産性の向上」
(1)機械化施工の推進
レール交換機やFB溶接車、バックホウタンパーを活用→省力化
(2)ICT施工の導入
5G技術を活用した軌陸車による無人化施工を導入→危険箇所での作業を遠隔で操作できるため、安全で迅速に施工できる 
(3)スマートメンテナンスの導入
線路設備モニタリング装置や構造ヘルスモニタリングシステムの導入→常時監視することで、軌道や構造物の実際の性能や現在・災害発生時の健全性をリアルタイムで診断することができる
3.共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策
(1)機械故障、システムエラーのリスク
機械、システムはメンテナスをしていてもいつどこで故障するかわからない、線路閉鎖作業での鉄道工事は当日に復旧しなければならない
(2)対策
①復旧訓練の実施:脱線復旧訓練、バックホウ建築限界支障した時の一時対応
②リスクアセスメントの実施:夜間時等のメンテナンス会社の緊急連絡体制・バックアップ体制整備、必要に応じて始発の運休連絡、誤作動させないよう作業手順等のマニュアル整備
③代替施工方法の教育:施工工期や点検の周期があるため、機械やICTに頼り切った作業にならないよう人力・手動での作業方法の教育・技術継承
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答案3/3 専門事項:鉄道構造物設計
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1.輸送サービス、保守体制の課題
 鉄道工事は限られた時間、空間での作業を求められ、かつ既設の営業線に影響が生じないよう施工を行う必要がある。施工の効率化による作業時間確保方策を検討する鉄道技術者の立場で多面的な課題を抽出し以下に示す。  
(1)輸送障害対策
 輸送障害を分析すると、近年鉄道事故は減少しているが、輸送障害が増加している。令和元年度では5666件発生している。輸送障害は施設の老朽化等による部内要因、事故に部外要因、災害による災害要因、等がある。特に部内要因は鉄道側が起因で発生するため、対策を講じ現象させることが課題である。
(2)現業者の減少・確保
 現業者数を分析すると、建設従事者は2017年で約493万人であった。その内、55歳以上の割合が34%、29歳以下の割合が11%である。55歳以上は今後10年で大半が引退すると予測される。今後も鉄道事業を発展させていく上で、持続的な人材確保が課題である。
(3)人力依存作業
 鉄道事業は調査、測量、設計、施工、管理と作業が人の手によるものが多く、経験や作業員の感覚によって成り立っていた。これまでのやり方は、時間や人工多く要し、精度も低いものが多いため、人力依存作業から脱却が課題である。
2.最も重要な課題(1)と解決策
(1)最も重要な課題
今後は建設従事者も減少し、老朽化する施設も増加する。しかし、作業時間の大幅な確保は困難なため、作業の効率化が重要となる。よって、人力依存作業からの脱却が最も重要な課題である。
(2)解決策
1)ICTの活用
 人力作業を分析すると危険を伴い、定性的な結果であることが課題である。よって、ICTの活用を提案する。例えば、ドローンを用いた3次元測量、ICT建機を用いた効率施工を活用する工夫で時間、人工ともに軽減できる効果があり、作業の効率化を評価できる。
2)CIMの活用
 データ管理を分析すると調査、測量、設計、施工、管理の段階で様々なデータが混在し、データの反映不備があると全段階に波及することが課題である。よって、CIMの活用を提案する。例えば3次元のデータを一括管理する工夫により手戻りなく作業を遂行できる。
3)使い勝手の簡略化
 機材活用を分析すると、使い勝手が難しいと更に作業時間を要すことが課題である。よって、使い勝手の簡略化を提案する。例えば、複雑な入力は自動で行い、簡略な入力だけを行うシステムを構築する工夫で誰でも使える効果がある。
3.新たなリスク、対策
(1)新たなリスク
 作業効率化のため、機材の活用を提案したが作業員が機材依存となり、品質の低下や緊急時の対応遅れが発生することが危惧される。よって、品質確保や作業員の技術力低下が新たなリスクと考える。
(2)対策
1)照査体制の強化 これ↓は上記とダブリです
 機材依存による作業効率化を分析すると、機材に頼りっぱなしとなり、重大な欠陥に気づかないことが課題である。よって、照査体制の強化を提案する。例えば、これまでの経験を活かし、予めリスクが潜んでいそうな箇所に抽出し、照査体制を強化する工夫で欠陥の見逃しを抑制する効果があり、品質確保が可能となる。
2)研修制度の拡充
 技術力を分析すると、作業員が実際の技術に触れることが無くなり、緊急時の対応に遅れが生じることが課題である。よって、研修制度の拡充を提案する。例えば、ベテラン技師を若手の直接指導担当にする研修や、資格確保の補助研修を導入する工夫で技術伝承かつ技術力向上を図る効果がある。
 今後は老朽化、現業者減少、災害対策と様々な課題をクリアしていく必要がある。鉄道従事者として更なる作業の効率化に貢献する所存である。
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鉄道  Ⅲ-2
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問題文 地域鉄道においては,厳しい経営環境にある中で,安全・安心な鉄道輸送の確保・維持に向けた,より一層の取組が続けられている。中でも列車脱線事故については,事故の影響が大きく,さまざまな対策に取り組んでいるものの,ゼロにはできていない状況である。このような状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。
(1) 地域鉄道において,列車脱線事故の防止を推進するにあたり,軌道及び土木構造物を保守するうえで,建設部門の技術者としての立場で多面的な視点から課題を3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1 専門事項:土木構造物の設計及び照査
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1.地方鉄道の軌道及び土木構造物保守における課題
①情報化技術を活用した保守業務の省人化・省力化
地方鉄道の鉄軌道は、経年劣化により軌間拡大やレールの損傷、分岐器の軌道変位や転換不良等が原因となり脱線事故に繋がる事例が多い。しかし、地方鉄道事業者は、都市鉄道事業者と比較して財政状況が厳しく、十分な保守作業員を確保できない。
そこで、Iot機器等の情報化技術を活用した保守業務の省人化・省力化の推進が課題である。
②管理基準・是正対応措置の明確化
鉄道事業者の中には、軌道変位が管理基準値を超過した場合の取扱いに関する規定が無い業者もいる。そのため、法令に準拠して点検を実施していても、点検後の是正前に脱線事故に繋がった事例もある。
そこで、運行停止基準や点検時に要改善と判断された枕木やレール締結装置等の復旧期限を明確に規定する。加えて、内部監査組織等を立ち上げて管理システムを構築することが課題である。
③教育体制の確立
中小民間鉄道事業者の中には、異常時の緊急連絡体制が無く、対処方法を十分に周知徹底していなかったために脱線事故に繋がった事例もある。そこでは、誰の指示を仰ぐかが慣例的な暗黙知となっており、指示系統や異常時マニュアルが認識されていなかった。
そのため、OJT等の社内教育制度を通して安全管理体制を有効に機能させることが課題である。
2.重要と考える技術的課題及び解決策
「①情報化技術を活用した保守業務の省人化・省力化」を最も重要な課題と考え解決策を示す。
①軌道の状態監視
IoT機器を活用して従来よりも高頻度に軌道の状態を計測して軌道修繕を最適化する。具体的に例えば、営業列車の床下に「車体装架型慣性正矢軌道検測装置」を取り付けて、列車荷重による軌道の動的変位を観測・遠隔監視する。
更に、測定データは無線でリアルタイム伝送が可能であり、変状時の即時対応と点検時期を最適化する。また、観測データの蓄積により、軌道変位予測の精度向上にも寄与できる。
②高架橋の状態監視
河川を横断する鉄道橋において、橋脚基礎の洗堀状況は、目視確認が困難である。そこで、橋脚に「加速度センサー」を取り付けて橋脚の固有振動数と傾斜角から洗堀の進行状況を常時モニタリングする。
モニタリング結果から、洗堀状況に応じて衝撃振動試験を実施でき、橋脚の健全度 (k=1.0以上)評価の実施時期を最適化する。本機器を活用して、夜間の軌道検測車を走行させる頻度や、保守作業員による現場測定を最小化でき、検査業務の省力化が期待できる。
③トンネル検査の機械化
従来、高所を含めた鉄道トンネルの壁面点検は、目視により実施していたため、専門家の現地派遣等が必要な事例があった。加えて、点検時に異常が疑われた箇所は、打音検査を行った後に展開図を作成する必要があり、多くの人手と手間を要していた。
そこで、トンネル覆工専用の点検車両を用いてレーザー波・画像解析による点検業務の機械化を行い、作業を省人化・省力化する。その結果、専門家の現地派遣が不要になり、目視点検によるひび割れの見落としリスクの低減効果も期待できる。
3.解決策に対する共通のリスクと対策
若手技術者の学習機会の喪失
従来、目視点検により軌道と土木構造物の変状を抽出していた経験工学的な学習機会が喪失されるため、若手技術者の技術離れに繋がるリスクがある。
そこで、若手技術者が自発的に自己研鑽できる環境の提供と支援を充実させることが重要になる。具体的に例えば、業務で必要な専門知識を、体系的かつ計画的に学習できるように学科講習や実技講習等の社内勉強会への参加を促す。
更に、定年退職後の再雇用制度を設けて、経験豊富な熟練職員が教育役(社内マイスター)となり若手技術者への実践的実技指導を推進することで技術継承と後継者育成が期待できる。
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