技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年


建設部門模範答案
選択科目 
都市及び地方計画  U-1-1 U-1-2 U-1-2S
U-2-1
V-1S  V-1S  V-2
※問題番号末尾のSはスタンダード模範解答を表します。(無印はプレミアム模範解答)
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U-1-1
東日本大震災による津波被害から市街地復興において活用された「防災集団移転促事業」及び「土地区画整理事業」について、東日本大震災における両事業の使われ方、相違点にふれて、それぞれの概要及び特徴について説明せよ。
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答案1 専門事項:都市計画行政
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1集団移転促進事業
使われ方:津波災害を受けた被災区域から、早急な安全確保・生活再建のため、安全な高台への移転に活用された。
概要:災害危険エリアの地域コミュニティの維持、防災機能の向上のため、原則10戸以上の区域の住居の集団移転を促進し、住宅団地の整備、住居の移転、移転元地の買取り制度である。
 東日本大震災復興事業では、迅速かつきめ細やかに対応するため、5戸以上の住居に要件緩和が行われた。
特徴:多様な住宅再建者の意向、要望に迅速・柔軟に活用できる、反面移転元地区は、空地が生じ易く、移転後の土地利用対策が課題となる。
2土地区画整理事業
使われ方:津波被害を受け、地盤を嵩上げした現地での生活再建する地域で活用された。
概要:土地区画整理事業区域の宅地、都市施設等の整備を行う。土地所有者等から道路、公園等の公共用地を生み出す減歩制度と、従前地の権利を換地処分によって土地の区画形質を整える
特徴:土地の交換分合、集約化を図り、社会ニーズに対応した整備が実行できる。反面、換地設計が定まると、大きな変更が難しく、時間経過に伴う被災者の利用や意向の変化に対応が困難となるため、対策として申出換地制度を活用し要望に対応することができる。
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都市及び地方計画 U-1-2
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小さな敷地単位で低未利用地が散発的に発生する都市のスポンジ化によって特にまちなかの都市機能の誘導・集約を図るべき地域において、生活サービス施設の喪失、治安・景観の悪化が引き起こされ、地域の魅力・価値が低下することが懸念される。都市のスポンジ化に関わる土地利用上の課題を解決するために、土地の集約・再編の手法及び、土地の所有者と利用権を分離して低未利用地を利活用する手法について、異なるものをそれぞれ一つ示し、その概要、活用するメリット、活用するための留意点を説明せよ。
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答案1/2 専門事項:交通施設計画
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1. 低未利用土地権利設定等促進計画【低未利用地利活用】
1)概要
・民間による開発・建築行為を待って規制等により受動的に関与してきたところを新たに低未利用地の利用に向けた行政の能動的な働きかけを可能とする
2)活用するメリット
・土地を所有しなくても民間事業者が当該地区の活性化のために参画できる
・個別用地の活用・調整に比べて、地権者との調整にかかる時間の短縮が可能
・行政が仲介することにより地権者の安心感を得られ、スムーズに進められる
3)活用するための留意点
・行政あるいは参画企業の方針だけでなく、地元住民の意向を踏まえ、継続的に住民と協同して推進し、関係者が一体となった地域のマネジメントを行う必要がある。

2. 空間再編賑わい創出事業【再編】
1)概要
・点在する低未利用地を集約することでまとまった土地の利活用を行う。
2)活用するメリット
・少スペースの活用しづらい空間を集約することで土地の有効活用が可能
・空き地の存在による治安の低下・地域防災力の低下を回避できる
・事業者と連携することで、地域のメンテナンスを継続的に実施することができる
3)活用するための留意点
・再編においては地域住民の移転等も含めた計画となることから、一部の住民にだけ不利益(建て替え・移転費用、交通利便性低下)が生じないような合意形成が必要である。
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答案1/2 専門事項:都市計画  S
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都市スポンジ化に係る土地利用上の課題解決の手法
1.土地の集約・再編の手法
・空間再編賑わい創出事業がある。
■講師コメント 手法名、「誘導施設整備区」など都市計画行政の手法名を挙げられた方が良いでしょう。
・概要は、本事業は土地区画整理事業であり、事業計画に誘導施設区域を定め、同区域内に空地等所有者の申出換地にて誘導施設整備区を定め、同整備区に医療・福祉施設等の誘導施設を整備する事業となる。
・活用メリットは、同申出換地は、集約換地の特例制度により、従前宅地の位置関係、関係権利者の合意等の条件はなく、本区域内の所有者の申し出にて換地を定めることができ、早期の合意形成が得やすい等がある。 
■講師コメント 制約事項ではなく、留意点としては改善策などに言及された方が良いでしょう。
・活用上の留意点は、申出希望しない継続居住希望者等は、区外の空地等と入替した生活再建等がある。
2.土地所有権と利用権分離の低未利用地利活用手法
・低未利用土地権利設定等促進計画がある。
・概要は、本計画では低未利用地の地権者等と利用希望者を行政がコーディネートし、複数の土地等に一括して利用権等を設定する計画を市町村が作成する。
・活用メリットは、行政の能動的な働きかけのもと、所有権にこだわらず、低未利用地を利活用できるため、民間投資意欲を高めやすくなる等がある。
・活用上の留意点は、コーディネートでは、都市再生推進法人や都市計画協力団体等の専門家と連携して、その技術・ノウハウを活用・運用する等がある。
■講師コメント 留意点としては技術・ノウハウをどのように活用・運用できるか具体策まで言及された方がコンピテンシーがアピールできるため得点が高まります。
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都市及び地方計画 U-2-1
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地方都市の地方公共団体において、市街地の駅前の自ら管理する市道について、周辺の道路整備による自動車交通量の減少により、車線数を4車線から2車線に減ずることになり、「居心地が良くなるまちなか」の実現のため、当該道路空間の再構築を検討することになった。あなたが、本業務の担当者として、当該道路空間(沿道含む)の再構築の計画立案(ソフト・ハード含む)の作成を担うとして、下記の内容について記述せよ。なお、沿道の買収による道路幅員拡幅や公園等の整備、土地区画整理事業や市街地再開発事業は前提としないこと、車線減少の検討は終わっているものとする。
(1)調査、検討すべき事項を挙げその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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答案1/2 専門事項:都市計画行政
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1調査・検討事項 
(1)施設の状況 滞在・交流を促進する施設等・バリアフリー化を調査し、滞在を促す、自由に使える椅子及び植栽帯の設置を検討する。理由は、歩道拡幅後の利用形態を検証する。
(2)空間の状況 空間・沿道の建築物や工作物、特に、歩行者に近い、1階部分の壁面、軒下や看板等のデザイン、色、用途を調査し、まちなみの楽しさ・華やかさの演出を検討する。理由は、見え方、併せて飲食・買い物を楽しみ促す建築物に近接する空間の使い方を検証する。
(3)オープンスペースの状況 オープンスペースを調査し、歩行空間と人が集い楽しめるオープンスペースを検討する。理由は、親密で一体的な空間が形成され、多様な活動ができる環境と生活空間の確保できるよう配置の検証をする。 
2業務を進めるための手順・留意点・工夫  
(1)施設の配置の実施 賑わいを促す施設を設置し、効果を推進に有効なオープンスペース、椅子等を配置する。待合所や椅子等は高齢者身障者が使いやすいように留意する。オープンスペースは芝生広場とし、商業活動等に必要な荷捌き場として活用できる工夫する。
(2)空間の設定の実施 沿道の施設、利用状況を踏まえ、沿道施設の活性化と歩行者の円滑な通行を促すため、建築物近接空間ゾーンと歩行空間ゾーンを設定し、ウインドショッピング、オープンカフェ等の利用、快適な歩行空間の分離を図る。
(3)利用ルールの策定の実施 オープンスペースの活用、歩行ゾーン空間確保と賑わいの効果の向上を図る。社会実験を行い、曜日、時間帯に応じた、オープンスペース、ゾーンの使い方を検証し・利用方法のるルールを策定する。朝の通勤時間帯は、歩行空間の幅員を広く設定する。
(4)賑わい空間の創出 民間事業者に、オープンカフェ・露店などの出店を誘導する。そのため、道路区域内への広告看板・自動販売機等の設置の基準を策定し、道路協力団体制度を活用した道路環境の向上を工夫する。
3・関係者との調整方策
 賑わい空間での歩行者の接触事故対策が求められる。
 店舗経営者に対して、週日は自転車が多いので、路上店舗を縮小するよう申し入れ、歩道幅を広げる。一方、道路管理者に対して、週末は歩行者が多いので、歩道幅を縮小するよう申し入れ、路上での賑わいを確保する。このようにして通行空間の境界ラインを移動させることで、安全・賑わい効果を高め、関係者、店舗経営者、道路管理者らを取りまとめる。
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答案2/2 専門事項:都市交通計画
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1. 調査、検討すべき事項 
・沿道の土地利用状況を調査し、空き地や低未利用地の活用を検討する【空間の有無】
・アイレベルの施設の状況を調査し、人の滞在・来訪を促すために必要な沿道施設を検討する【仕掛け:既存施設の活用】
・インフラや賑わい空間の整備状況を調査し、当該地区で必要となる機能を検討する(緑地や休憩施設、駐輪スペース等)【仕掛け:新たな空間の整備】
2. 業務を進める手順及び留意点・工夫点
@来訪者実態を踏まえた、空間整備の検討
・当該地区への来訪者数、性・年齢などの属性別に分析することで、求められる機能を検討する
・来訪者の把握には、効率的にデータを取得できるビーコンや携帯基地局データ等のビッグデータを積極的に活用する
A社会実験による地域課題の抽出
・社会実験を企画・実施のうえ、来訪者サイドが感じる課題認識、ニーズ等を把握のうえ、改善すべき内容を検討する。
・ニーズ把握においては、来訪者に対してアンケートを実施する。
B歩きたくなるまちなかの持続的な発展のための施策検討
・人の賑わい創出のために必要となるハード整備(滞留するためのベンチやテーブル、景観向上や快適性向上のための緑地整備)やソフト施策(地元事業者・住民を巻き込んだ住民参加型のイベントや、地元食材によるマルシェの実施))による総合的な施策をとりまとめる
3.業務を効率的、効果的に進める多面関係者との調整方策
・まちづくり計画を推進する立場として、道路管理者か交通管理者と問題点の共有、必要となる調整事項(例:信号現示の見直し等)を行うために、行政・各管理者、地元事業者、住民等が一同介する協議会を設立し、それぞれの立場から意見を出し合える場を構築する。
・社会実験の実施に際しては、歩行者空間でのパークレットや沿道事業者と連携したカフェスペース、子育て世帯が参加しやすいイベントスペース等の設置について、地元や地域ニーズを踏まえて検討する。
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都市及び地方計画 V-1
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I 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、3つの密(密閉、密集、密接)の回避、不要不急の外出自粛、テレワークの推奨等の「新しい生活様式」の実践が求められている。
 この「新しい生活様式の実践」は、都市における過密という課題を改めて顕在化するとともに、日常生活のみならず、経済・社会全体のあり方や人々の行動様式・意識の変化、デジタル化の進展等多方面に影響を与え、都市に様々な変化をもたらしたと考えられる。
 こうした状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)今後の都市政策を検討するときに考慮すべき、コロナ危機を契機として生じた変化や改めて顕在化した課題を、技術者としての立場で3つの異なる観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その生じた変化や顕在化した課題の具体的な内容を示せ。
(2)抽出した変化や課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ、それに対する都市政策上の対応策を複数示せ。
(3)すべての対応策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対策を示せ。
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答案1/2 専門事項:都市地方計画 S
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1.コロナ危機により顕在化した課題
1.1 まちづくりの観点:職住近接ニーズに対応したまちづくりの推進
 テレワークの浸透により、住む場と働く場が近づき、職住近接ニーズが高まっている。大都市はオフィス・住環境・文化・エンタメ機能を、郊外や地方都市は住む・働く・憩いの「地元生活圏の形成」を推進し、役割分担して、相互に魅力を高めることが必要である。
1.2 交通の観点:まちづくりと一体の総合的交通戦略
 コロナ危機により公共交通利用者が減少し、近距離移動は、自転車に転換していると考えられる。自転車やシェアリングモビリティ等多様な移動手段の確保とその環境整備が求められる。また、混雑状況のリアルタイム発信や、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成等、総合的な交通戦略が必要である。
1.3 防災の観点:感染症対策と両立する避難の推進
 コロナ危機下での災害発生は「複合災害」となり、避難所での感染拡大などの二次リスクに備える必要がある。多様な避難環境の整備や非常時のバッファ機能の確保、リアルタイムデータの活用等、感染への対策を避難所運営と両立することが求められる。
2.最も重要と考える課題と対応策
公衆の安全・健康・福利を最優先と考える視点から、「1.3 防災の観点:感染症対策と両立する避難の推進」が最も重要な課題と考える。その対応策を次に示す。
2.1 多様な避難環境の確保
 災害時の避難所の過密を避けるため、多様な避難環境の確保が求められる。公的避難所以外の公共施設やゆとり空間、民間施設の活用等が挙げられる。
 また、地域住民へマイ・タイムライン作成を普及促進し、親せき・知人宅や宿泊施設などへの早期の計画的な避難を促し、避難の実効性を確保する必要がある。
2.2 緑とオープンスペースの柔軟な活用
 街路空間や公園・緑地、水辺空間、都市農地、民間空地等の緑とオープンスペースを活用することで、非常時のバッファ機能を確保することができる。
 平時にも、テレワーカーの作業場所やフィットネス等のスペースとして、都市の冗長性を高められる。
2.3 リアルタイムデータの活用
 人流・滞在データを活用し、ミクロな空間の動きを把握することで、過密を避けるように人の動きを誘導することが必要である。また、リアルタイムデータの活用により、危険地域への人口滞留などのリスクを把握し、円滑な避難に役立てることができる。
3.波及効果
 2で挙げた対応策を実行することで、避難所での安全・安心を向上させることができ、都市の魅力を高めて、国際競争力の強化に寄与できると考える。
■講師コメント 波及効果というより、目的そのものに近いようです。これだと直接すぎて「波及」とは言いにくいです。質問の趣旨は「提案したことを実施することによって、副次的、波及的に別な公益性を高める効果が得られるとしたら何か」という意味です。
4.懸念事項とその対策
4.1 地域住民の理解促進
 懸念事項として、多様な避難環境を確保した場合も、関係する地域住民等の理解の不足により、十分な活用が行われないことが考えられる。
 対策として、行政広報誌やホームページ、ワークショップ、SNSなど、多様な情報発信手段を複層的に活用することが考えられる。
4.2 緑とオープンスペースの維持管理促進
 懸念事項として、整備した緑とオープンスペースを維持管理する担い手の不在により、非常時に十分な活用が図れないことが考えられる。
 対策として、まちづくり団体やNPO等を都市再生推進法人やみどり法人として指定することで、担い手を確保できると考える。また、まちなかウォーカブル区域内の都市公園では、都市公園リノベーション協定制度を活用することも有効と考えられる。
4.3 非常時の機能確保のための事前準備
 懸念事項として、リアルタイムデータを活用したシステムの不具合や誤作動、必要電源の途絶等により、企図した機能が確保できないことが考えられる。
 対策として、平時から同じデータを活用したシステムを運用し、非常時の対応をその延長に位置付けることが有効であると考える。また、BCPを作成すると共に、災害情報の更新等に応じて継続的な見直しを行い、非常用発電設備の設置など、具体的に対策しておくことが有効と考えられる。
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答案2/2 専門事項:都市計画 S
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1.コロナ禍を契機とした都市政策の変化や課題
1.1都心部の都市構造の観点
人口減少の中、都市拡散で中心市街地空洞化や郊外過疎化が進むと居住性が低下し、特に、高齢者等は、移動困難な交通弱者となり生活が困窮する。そこで、中心市街地に質の高いインフラを集約し、周縁部や隣接都市を公共交通等で結び移動利便性を確保したコンパクト+ ネットワークの形成が推進されている。しかし、単に都市機能を集約して都市が過密化すると、感染が拡大するリスクが高まる等の変化が生じている。 
このため、ゆとりあるオフィスやオープンスペース、緑を活用したウォーカブルなまちづくりが必要である。
1.2都心部の交通の観点
前述のコンパクト+ネットワーク形成のため、公共交通の利用が推進されている。しかし、感染を拡大させる3つの密(密閉、密集、密接)を避けるため、公共交通の利用者が減少していく等の変化が生じている。
このため、3つの密を回避・緩和し、安心して利用できる公共交通が必要である。駅周辺の混雑状況のリアルタイム発信、ICTを活用したMassの導入、非接触型の運賃支払いシステムの整備などがある。
1.3郊外部の都市構造の観点
都市郊外・周縁部は、市町村合併に伴う旧町村支所等を小さな拠点とし、地域の暮らしの維持・向上が推進されてきた。しかし、3つの密を回避するため都市部離れの変化が生じているため、その受入れ先として、住む・働く・憩い等の様々な機能を備えた地元生活圏への拡充が必要である。複数の用途が融合した職住近接やリモートワークが出来る田舎暮らしなどがある。
2.変化や課題の最重要事項と都市政策上の対応策
1.1の過密化を避けたウォーカブルなまちづくり
2.1 一体型滞在快適性等向上事業
本事業により、過密化を避けるため開放的な空間をつくり居心地が良く歩きたくなるまちの形成を目的に、民間事業者等が市町村とともに、滞在快適性等向上区域(以下本区域)を設定し交流・滞在空間を創出する。
・官民一体で取り組むにぎわい空間の創出
・まちなかエリアにおける駐車場出入口規制等の導入
・車道の一部広場化、都市公園の芝生広場の整備
なお、広場等では、テレワーカーの作業場所、フィットネスの場所等利用形態の多様化にも対応していく。
2.2 ウォーカブル推進税制
民間事業者等は、本区域で、民地のオープンスペース化や建物低層部のオープン化を行う場合、不特定多数の者が無償で交流・滞在できるスペースを確保することになり、その分の利益が出なくなることを考慮し、固定資産税・都市計画税の軽減措置を講じる。
2.3 都市公園の占用許可の緩和
都市公園は広いスペース等があり、官民連携の交流・滞在を創出し易いが、その占用許可が厳格すぎると活用ができなくなる。このため、占用許可の緩和を図る。具体的には、イベント情報の看板・広告塔設置やカフェ・休憩所等の設置・管理を、都市再生整備計画に基づき、公園管理者が特例的に占用許可する。
3.解決策にかかる波及効果と懸念事項への対策
3.1波及効果
 テレワークの普及により、オフィス需要低下で生じた余剰施設が増える中、居心地が良いまちとして、ゆとりある良質なオフィスの「リアルな場」が増えることで、その余剰施設が活用され、都市の活力を維持・増進させる効果が期待できる。
3.2懸念事項への対策
(1) 懸念事項
新たな生活様式に対し、まだ十分な知見やノウハウがない中、意見も多種多様となり、意見がまとまらなかったり、利害が衝突するなどして、居心地が良く歩きたくなるまちの維持ができなくなる懸念がある。
(2) 対策
対策は都市再生推進法人制度を活用し、マネジメントと組織を強化する。まちづくり会社やN P O 等の組織を行政が都市再生推進法人に指定し、専門スキルを有する官民連携まちづくりの担い手を確保し、多様な主体の意見を調整し、事業実効性・持続性を高める。
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都市及び地方計画 V-2
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 ある地方都市において、民間企業が所有できなくなった建築物と庭園が一体となった歴史的資産を、市が取得のうえ必要な整備を行い、地域活性化に寄与するように観光資源として活用する事業を行おうとしている。建築物は文化財としての価値を有する邸宅であり、内部を公開することとしているが公開には改修費用が必要である。歴史的資産の管理運営に当たっては、都市公園として、入園料を徴収し指定管理者制度を導入するほか、民間事業者からの提案に基づき建築物を活用した収益事業の導入を検討することとしている。
(1)事業を進めるに際しての課題を技術者としての立場で多面的な観点から3つを抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1 専門事項:都市計画行政
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1 課題の抽出・内容
(1)都市公園としての歴史的資産の価値の向上
:建築物は、庭園が鑑賞しやすく、また、庭園との空間と調和するように改修する。庭園は、庭木の剪定、季節感を演出する。歴史、由緒、起源を調査し、文化財の価値を明確にし、歴史・文化と憩いと空間の創出する。
(2)建築物、文化財の安全性の向上
:建築物は、建築年数が相当経過しているため、文化財保護と併せて、耐震化、スプリンクラー等の防火対策が必要となる。そのため、庭園の一部を雨庭機能として雨水貯留機能を持たせ、自然環境保全を図る。公開することから、文化財の警備や、レプリカ等での展示対策もする。
(3)歴史的資産として魅力の発信
:文化財保護、学術的な重要性を認知させるため、知名度を上げる情報配信として、HP、アニメ、映画、小説の活用を図る。映画のエキストラとして、参加を募集する等、来訪者増加と満足度を上げる。指定管理者の選考する際、文化財の保護、造園技術と併せて情報発信の事業手法を条件付ける。
2 最も重要と考えられる課題「1都市公園の歴史的資産の価値の向上」の解決策
(1)建築物と庭園の空間の活用
〇文化と憩いと空間の創出する施設・導線の整備を行う。日本文化を間近で接することができる、日本庭園の技法の一つ、枯山水を活用した国登録文化財の登録を目指した整備を行う。
 文化財の評価、位置づけ、掘り下げ、研究、記録、根拠づけ。
(2)文化拠点発信・ミュージアム機能の整備
:コンセプトは、知る・楽しむ・巡る・休むを盛り込んだ施設整備を行う。
@知る:歴史を軸に、歴史的資産の魅力を紹介する季節展示や一つのテーマを掘り下げた特別展を行い、新たな文化発信拠点を目指す。
A楽しむ:展示では、新たに重要文化財となった建物の中に歴史的資産の家具・絵画等を配置し、ゆっくりと建物そのものの魅力を楽しむ演出を行う。
B巡る:ミュージアムを核とした憩いと交流の場の多様性を持ち合わせた空間整備を行う。
C休む:老舗料亭茶屋が監修する和モダン茶寮の整備を行い、文化と飲食を合わせて楽しめるようにする。
(3)伝統文化の活用・伝承
@伝統文化の活用・伝承するためには、一定期間必要となる。そのため、一定期間を見据えた事業運営を可能とする、コンセッション方式(P-PFI)を採用し、〇〇を〇〇して従来のデメリットを改善する。
A伝統文化の活用:グリーンツーリズム、お庭めぐりをはじめ、在釜(ざいふ)や茶会、講座など、造園や日本文化の深みを味わう企画を通年で開催する。来訪者誰でも、自然空間を満喫できる、癒し空間が広がる庭園カフェを営業する。
B文化の継承:建築物・庭園の補修が必要な部材(木・石材等)の中には歴史を醸し出す古い部材を再活用し、補修費の軽減・担い手を育成する。
3リスクと対策
(1)リスク:オーバーツーリズムが発生
〇歴史的資産の価値の向上した結果、グリーンツーリズム、お庭巡りを目的とした、来訪者が増加する。茶室からの眺望景観が人込みの影響を受け阻害される。そして敬遠される。
(2)対策:オーバーツーリズムの解消
 主要観光地周辺の名所の認知度を高めたり、早朝や夜間に入場者を受け入れたりして観光客の分散を図ることや、観光地への入場制限・有料化を行う。テクノロジーを使って観光客が集中する場所への影響を軽減し、人の流れをコントロールする。方策として、スマートフォンなどのデータを使い、地図上に観光地や道路の混雑状況を示して、ほかの目的地を勧める調整を図る。
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