建設部門模範答案
選択科目
トンネル U-1-1
U-2-1
V-1
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トンネル U-1-1
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山岳トンネルの設計を行う際に考慮すべき設計条件を2つ以上示したうえで、設計に適用される手法をその内容とともに2つ以上述べよ。
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答案1/1 専門事項:トンネル維持管理
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1.山岳トンネル設計時に考慮すべき設計条件
@地山条件
一軸圧縮強度や地下水等から、断層破砕帯の位置や地すべり、膨張性鉱物の有無を把握する。
A立地条件
近接する構造物の有無、都市部などの位置的条件や地下水利用の有無、発破振動などの環境的条件を総合的に把握する。
B外力条件
完成後の土圧、水圧等が作用する場合に覆工への耐荷機能の必要性を把握する。
2.設計に適用される手法
@標準設計
過去の実績に基づき、地山条件等からロックボルト、鋼アーチ支保工などを使い分けし、支保構造、掘削工法、変形余裕量を決定する。
A有限要素法(FEM)
小要素に分割した節点に、作用力と変位の釣り合いを解くことで、地山や支保工の応力や変位量を求め、管理基準を満たす支保構造や施工法を決定する。
Bフレーム解析
2次元的に安定した地質が縦断方向に続く地山に多く用いられる。はり、ばねでモデル化し、荷重を作用させ覆工コンクリートの応力を照査する。
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トンネル U-2-1
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U-2-1 事前に地山条件や立地条件等から多面的に課題を抽出して調査、設計を行い、〜〜。山岳工法による新設の2車線道路トンネルが以下の図-1のとおり計画されている。坑口部のトンネル掘削に関して、担当技術者の立場で以下の問に答えよ。
条件・急崖を形成する岩盤斜面は図-1に示すとおり、土被り2D(Dはトンネル掘削径)の範囲にあり
一部は事業用地外となっている。
・坑門工位置には崖錐が厚く堆積している。
・トンネル線形は図-1の位置で確定している
・岩盤斜面と計画坑口の間は明かり巻き区間として計画されている
(1)坑門から土被りで1.5〜2.0Dとなる「坑口部」を供用後にも安定した状態で保つためにトンネル
施工にあたって調査、検討すべき事項3つ以上上げて内容を説明しそれらへの対応を述べよ
(2)業務を進める手順を列挙してそれぞれの項目ごとに留意・工夫すべき点を述べよ
(3)業務を効率的効果的に進めるための内外の関係者との調整方策について述べよ
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答案1/1 専門事項:トンネル維持管理
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(1)施工にあたり調査検討すべき事項と対応
@崖錐分布範囲
岩盤崩壊により、崖錐が分布したと想定されるため、ボーリング調査等を活用し、分布範囲、崖錐層厚調査を行う。調査結果から地耐力等を把握し、置き換え基礎や地盤改良工法を検討する。
A偏土圧
斜面斜交型坑口で、坑口付近は偏圧の影響を受けると想定されるため、地形、横断測量から土被り調査を行う。偏圧が想定される箇所は、押さえ盛土による土被りの均等化を検討する。
B落石
計画坑口上部は緩勾配地形で、落石の発生が想定されるため、地形地質踏査を行い、落石要因の有無を調査する。調査結果から、トンネル施工時の地山の緩みに備え、除去や縫い付け対策を検討する。
(2)業務手順と留意工夫点
@坑口安定対策
偏圧回避のため、坑口付け前に土圧の均等化を確保するため、押さえ盛土を施工する。亀裂の多い岩盤の場合は、充填式から注入式フォアポーリングへの変更を検討する。
A坑口付け
地表面水の流下は、新たな岩盤崩壊、落石の可能性もあるため、施工時期から梅雨時期を避ける。
B坑口掘削工法
崖錐分布により、地盤支持力不足が想定されるため、上半施工時に偏圧への抵抗力も期待できる、側壁導坑先進工法を採用する。導坑掘削時、上方の岩盤が緩む可能性があるため、解析手法を用いて、補助工法の必要性を検討する。
C坑口部の気象
坑口部は外気の影響を受けやすいため、積雪寒冷地等で気象条件が厳しい地域では、覆工背面に断熱材の設置を検討する。
D坑門工形式
竹割式坑門工形式とする場合、積雪寒冷地では雪庇発生の可能性が高まるため、地域性に合せた坑門工形式を選定する。
(3)関係者との調整方策
当該地形状況から、事業用地内だけでは施工ヤードの不足が想定される。そこで発注者と協議し、坑門工周辺は崖錐が分布する比較的軟弱な地盤であり、仮置きずりを通常のダンプトラックで搬出することが難しいと考え、一時仮置きせず、道路盛土への直接搬入を提案する。土工部担当者には、トンネル坑内から地盤が悪い箇所でも走行可能な、坑内用ダンプトラックにて盛土材料としての運搬を指示した。このようにプロマネとして、運搬コスト縮減と施工ヤードの確保を取りまとめた。
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トンネル V-1
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山岳部のトンネル建設時に遭遇する地山には、我が国特有の地形や地質により、多種多様なリスクが潜在している。したがって、調査、計画、設計、施工の各段階においては、安全性、公益性及び品質の確保等に十分に配慮して業務を遂行することが重要となる。
(1)山岳部のトンネル建設時に遭遇する特殊地山を2つ上げ、技術者としての立場から多面的な観点で課題をそれぞれ3つ抽出し、観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)特殊地山を抽出した課題のうち最も重要といえる1つを選び、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問で示したすべての解決策を実施しても新たに生じるリスクと対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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答案1/1 専門事項:トンネル維持管理
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(1)特殊地山の課題
(1)-1未固結地山
@切羽対策
帯水した未固結地山は、出水等で切羽崩壊を起しやすい。そのため水抜きBr、ディープウェル等の排水工法や、薬液、セメント系の止水工法を検討する。
A地表面沈下対策
土被りが小さい場合グラウンドアーチが確保できず、地表面沈下により近接施設等が損傷を受けやすい。そのため、パイプルーフ等の地表面沈下対策を検討する。
B完成後の土圧対策
完成後、復水による地下水上昇で覆工への水圧が作用する場合がある。そのため、円形断面の採用や、水利用を考慮し防水型トンネル構造の検討を行う。
(1)-2膨張性地山
@縫返し対策
縫返しによるコスト増、工期遅延の可能性がある。そのため、解析手法にて膨張量を予測し、予測結果から変形余裕量にて、余掘りを決定し内空断面を確保する。
A早期閉合対策
膨張性鉱物と地下水が反応することで、膨張圧が作用し坑壁が内空に押される。よって、高強度支保工や仮インバートによる早期閉合での抑制対策を検討する。
B完成後の土圧対策
クリープによるひずみの蓄積、塑性圧が長期に継続し覆工に土圧が作用する可能性がある。そのため、覆工への耐荷機能付加を検討する。
(2)最も重要な課題と解決策
最も重要な課題は、(1)-1未固結地山の@切羽対策と考える。
@切羽天端安定対策
帯水した未固結地山では、充填式フォアポーリングでは、効果が薄い可能性がある。そのため、注入式フォアポーリングや、掘削に先立ち先行変位抑制も期待できる、長尺フォアパイリングを使用し天端の安定を確保する。
A切羽面安定対策
切羽面の肌落ち防止、ゆるみ抑制のため、鏡吹付Coを実施する。それでも切羽が自立しない場合、掘削に影響が少ない、GFRP鏡ボルトの使用を検討する。鏡ボルトは、先行変位抑制効果から、短尺よりも長尺ボルトを使用する。
B切羽脚部安定対策
先受け工等の荷重が支保脚部に集中し、支持力不足の未固結地山では沈下が生じる可能性がある。そのため、ウイングリブ付支保工、脚部補強ボルトにより沈下を抑制する。ウイングリブは、底面が水平のため、湧水がたまる可能性が想定されるため、湧水状況に応じ、角度付の採用を検討する。
(3)リスクと対策
@リスク
(2)の切羽対策により、切羽面の安定は確保されるが、コストと工期が懸念される。そのため、切羽観察、先進Br、計測結果等から支保構造、補助工法の軽減を検討する。しかし、周辺の土地利用、地下水利用の状況から、施工時に排水工法が十分実施することが困難な場合、切羽より出水し、再び不安定化する可能性がある。
A対策
1)事前調査
切羽安定確保のため、過度な排水工法等の実施により、渇水、地表面沈下等の周辺環境への影響が懸念される。そのため、施工前に地下水調査による地下水の流れ、量、透水係数等を把握し、浸透流解析を用いて、トンネル掘削による地下水の変化を把握し、周辺への影響を考慮し、排水対策等を実施する。
2)未固結地山対策
均等係数が小さい未固結砂質土地山では、流動化による切羽の不安化から、排水、止水対策を行う。その際、水と一緒に土粒子も抜かないよう注意し対策する。また、含水比を下げすぎると、見かけの粘着力が低下し、再び切羽の不安定化が発生するため注意しながら対策を行う。
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