技術士試験問題と模範解答と解説 2021年 令和3年

金属部門模範答案
選択科目 
金属加工  U-1-2
        U-2-1
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金属加工  U-1-2
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金属の鋳造法には特殊なものとして遠心鋳造法がある。この方法の概要を説明せよ。また、その特徴を回転軸と鋳型の材質の面から説明せよ。
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答案1/1 専門事項:鍛造
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(1) 遠心鋳造法の概要
回転する円筒状の鋳型に溶融金属を注ぎ、遠心力によって溶融金属を鋳型内壁に押し付け、凝固することで中子を用いずに管状鋳物を鋳造する。鋳造欠陥は内壁からの指向性凝固により少なく、凝固収縮による残留応力も少なくなる。欠点は、比重の差が大きな成分を含む合金では遠心力で偏析が促進される。
(2) 回転軸の違いによる特徴
@円筒鋳型の水平軸を回転軸とする横型遠心鋳造法
溶融金属の動きは重力と遠心力により鋳型の外側に
向かって、回転方向に対して逆方向に充填する。適用製品は長さが長く、肉厚が均一な鋳鉄菅等になる。
A円筒鋳型の垂直軸を回転軸とする竪型遠心鋳造法
回転軸の周りに回転する溶融金属は下方に向かって放物線状に充填する。従って、適用製品は長さの短い車輪や歯車になる。
(3) 鋳型の材質の違いによる特徴
@クロムモリブデン鋼や炭素鋼鋳鋼の金型
金型は内側に途型をして用いる。溶融金属の凝固速度が速いため結晶粒は微細化し、強度に優れる。
A金型の内面に鋳物砂を造型する砂型
砂型は断熱性が良く、金型に比べて溶融金属の凝固速度が遅いため厚肉の鋳造品に適用する。品質は金型の鋳造品に比べて結晶粒が大きくなるため強度が劣る。
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金属加工 U-2-1
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自社の主力である金属加工製品(溶接構造物)の生産性向上活動を行うことになり、技術責任者のあなたはリーダーとして活動に取り組むことになった。製品は顧客の仕様により複数のタイプがある。これまで自動化・ロボット化など技術部門での取組を行ったことはあるが満足な結果につながっていない。
 設計、製造技術、生産管理を含めた視点で、さらなる生産性向上への取組が必要である。今回の活動では、大規模な設備投資は考えず、また自社設計であるが材質の変更、形状・寸法の大幅な変更はできないものとする。
(1) 生産性向上を図る取組を行う上で、設計、製造技術、生産管理を含めた技術的観点、及び活動を立ち上げ、推進する観点から調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 生産性向上活動業務を進める手順を列挙してそれぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を技術面含めてのべよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策についてのべよ。
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答案1/1 専門事項:鍛造
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1.生産性向上取り組みで調査、検討すべき事項
1)多品種少量生産について
 複数タイプの製品を溶接することによる段取り替えの回数が多いと生産性が低くなるため、設備や工程の稼働率を調査し、稼働率の低い工程があれば、作業時間の長い工程やトラブルの発生する工程に着目し、そのボトルネックを検討する。
2)溶接速度が速く、高品質を得られる溶接工法について
 溶着速度を増加させ、開先断面積を減少し、溶接ひずみを小さくできれば生産性が向上して、品質も良くなるため、各種溶接工法の溶着速度や開先断面積、溶接ひずみを調査し、現行の溶接工法以上のものがあれば、溶接速度が速く、高品質を得られる工法を検討する。
3)溶接の見える化について
溶接の品質は溶接電流や電圧、速度などの溶接条件の影響を受け、種々の外乱や制御対象のパラメーター変動により条件がバラツクため、これらの条件制御方法について調査し、現場に合ったものがあれば、品質の安定化を図るための溶接の見える化を検討する。
2.生産性向上業務を進める手順
1)多品種少量生産に対応するセル生産方式を実施
 留意すべき点は、一品種ごとに独立したU字型のラインにロボットを設置し、人間は2ラインの作業を交互に行うことでロボットとチームを結成して、溶接の最終生産工程までこなすことである。工夫を要する点は、人間とロボットが信頼関係のある協働作業を行うことで安全を確保することである。
2)溶接速度が速く、高品質を得られる溶接工法を実施
 留意すべき点は、高速溶接、深い溶込み、小さなひずみを得られる工法は肉盛りができず、ビード幅が狭いのに対して、肉盛りが可能で広いビードが得られる工法は溶接速度が遅いことである。工夫を要する点は、深い溶け込みで高速溶接できるレーザ溶接と、肉盛りができ熱効率の高いアーク溶接を複合するハイブリッド溶接を実施することである。
3)溶接の見える化によるフィードフォワード適応制御を実施
 留意すべき点は、溶接条件が溶接中に変動するため、適切な操作量を制御対象に与え、望ましい制御量を得ることである。工夫を要する点は、溶融池の輝度や色情報から品質情報を直接抽出できるCCDカメラとレーザセンサやアークセンサを用いて品質情報を直接抽出し、制御量をセンシングして、これをリアルタイムにフィードフォワード適応制御することで溶接の見える化を図ることである。
3.業務推進のための関係者との調整方策
業務を効率的、効果的に進めるため、セル生産方式による過不足なき多品種少量生産についてメンバーや関係部署、設備メーカー、有識者によるFMEAを行う。また、高速溶接が特徴のハイブリッド溶接はレーザ溶接とアーク溶接を併用し、それぞれの溶接に合った機能を有するロボットを設置する。そのため、ロボットメーカーの意見に他者のアイデアを合わせた議論をし、低コストのロボットと溶接の高品質化が両立できるものにする。更に、溶接の見える化は、不良品の溶接条件のズレ
を瞬時に調べ、対策を打てる構造にするため現場情報と有識者のアイデアを合わせた議論をし、現場に合った構造にすることである。
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