技術士合格への道研究所では、継続的指導研究より現在の4つのテクノロジーを確立しました。これらが本研究所修了者たちの合格率の高さを支えています。技術士指導を個々の専門講師の個人技だけに依存していてはいけないと考えます。
コーチング指導とコンピテンシー開発は本研究所の中心的技術です。以下、コーチングとコンピテンシーについてご説明します。
技術士指導において大事なことは技術者としての未知の能力の可能性を開くこと
本研究所の初期の指導では、体験や知識、テクニックを「教え込む」ことが中心でした。今でもこの手の参考書が多数販売されています。「私はこのようにして合格した。だからあなたもこうしなさい」というものです。しかし、この方法は成果が上がりませんでした。即効性はあるものの、限界もあったのです。そこで試みたのが受講者様の体験を聞き出して、その中の問題点や課題を探り出すという作業です。つまり「教え込む」ことから「コーチング」への転換です。「相手が知らないから教える」という指導から「相手は知っているはずだから、共に考え、それらを引き出す」ようにしたところ、驚くほど指導がうまくいきはじめました。
このことは理にかなっています。本来、経験豊富な技術者の方々は、知識も豊富なはずです。しかし知っていることを自覚していないことは多いものです。コーチングは、受講者様が自覚していない潜在的な知識やスキルを引き出し、それらを知恵として結びつけていく作業となります。つまり「知っていること」と「新しい情報」を結びつけ、「技術士にふさわしい知見」を作り出す作業が本研究所のコーチング指導なのです。
コーチングとはどのような指導か
コーチングの本質について、「コーチングの技術」(講談社現代新書)の著者、菅原裕子氏は、ティモシー・ギャロウェイという学者の定義を引用して次のように説明しています。
コーチングとはある人間が最大限の成績を上げるために、その人の潜在能力を開放することを言います。そのためには、指導者は仕事のやり方を教えるのではなく、対象者が自ら学べるように援助しなければなりません。
そして、菅原氏はコーチングの人生観を次のように結論づけています。
技術士合格への道研究所が目指すコーチング指導
さて、当研究所が提案するコーチング指導の分かりやすいたとえとして、菅原氏が前書の中で先のティモシー・ギャロウェイの考え方を引用して紹介されています。
「一人の人間の中には二人の自分がいる」、一人は命令を出し、評価し、うまくやらせようと叱咤する自分(セルフ1)であり、もう一人は、本能的に知っているプレーをしようとする自分(セルフ2)である。
下の図【承認・質問】(図は「コーチングの技術」からの引用)をご覧ください。
これは理想的なコーチの例です。この図ではセルフ1が対象者の心を支配せずに、セルフ2に自由にプレーさせます。この作業ではセルフ1は、適切な問いかけにより、問題の本質や解決法の気づきを促します。セルフ1はまずセルフ2を承認し、「どうしたら君らしくできるかな?」といった問いかけによって、自発的かつ創造的な答えを導きます。セルフ2は自発的に物事に取り組んでいくことになります。このようにセルフ1に支配させずに、セルフ2に自由にプレーさせる、これこそが、人間の潜在的な能力の発揮であり、本来のコーチングの効果なのです。本研究所ではこのようなコーチング指導を目指しています。
本講座が目指すコーチング
図は「コーチングの技術」、菅原裕子著、講談社現代新書より引用しています。
過去の望ましくないコーチング
さて、過去には望ましくないコーチングがあり、その代表例がスポーツ指導の分野で見られました。
下の図【叱咤激励・指示命令】(図は「コーチングの技術」からの引用)をご覧ください。これは望ましくないコーチの例です。この図では、一人目の自分(セルフ1)が、何かに無心に取り組むもう一人の自分(セルフ2)を冷たい目で眺め、「そんなことじやダメだ、もっとうまくやれ」と囁きます。セルフ1の声が聞こえた途端、私たちは緊張し、本来セルフ2が知っているはずの最高のプレーができなくなります。セルフ1はまるで、口うるさい上司のようです。部下のすることを信頼せず、くどいほど教え、指示や命令をします。これは昔の野球やサッカーの"シゴキ"と同じです。この古いスポーツのコーチのイメージが強いため「コーチング」とは叱咤するものだと、誤って思い込んでいる方もいますが、実は全然違うものです。
好ましくないコーチングの例
本研究所のコーチング指導
本研究所ではコーチングを科学的手法として取り入れて指導に役立てています。この指導効果は技術士答案の画期的な改善となって表れます。より詳しく説明するため、具体的な技術士指導におけるコーチングのプロセスをご説明しましょう。概ね次のような流れで段階的にコーチングしながら指導を行います。
@現状確認
受講者様が抱えている技術士試験準備における問題点を確認し、それに対して受講者様がどう考えているか確認します。そして指導方針を話合います。
A業務上の成果の確認
経験論文等においては題材として取り上げる物件について、答案として書ける可能性について確認します。まず、成功例をいくつか挙げて、それに対して受講者様がどの程度情報を用意できるのかを確認します。取り上げたいという願望の強さなども考慮します。
B問題点、課題の特定
受講者の業績をヒアリングし、何が問題点かを特定します。じっくりと話を聞いて現状を正確に把握して、その上で問題点を特定します。問題点が特定できたら、その分析を行い課題を特定します。これらの作業は、チェックシートに書きながら進めます。
C対策の検討
問題点を解決する対策です。経験論文では「実際にどう考えて、どう対策したか」を確認します。
D技術応用の確認
技術士の務め、専門分野の技術をどのように効果的に応用したかを確認します。技術応用のモデルを体得してもらいます。
F評価と展望
現時点での評価と今後の展望について考えます。将来展望の視点のヒントを与え、見解をご自分でまとめていただきます。
まとめ
技術士指導におけるコーチングとは、いわば受講者の「できる」を引き出す魔法のプロセスです。そのやり方は一言で言うと次のような手順です。
という流れを生みます。この@〜Bの結果として技術者としての可能性を大きく開発することが可能なのです。
コンピテンシーとは何か。一般に、「高い業績をコンスタントに示している人の行動の仕方などに見られる行動特性」と定義されています。もともとは、ハーバード大学の心理学者であるD.C.マクレランド教授らが行った外交官の能力調査に始まります。調査結果は「学歴や知能は業績の高さとさほど相関はなく、異文化感受性、人間性を尊重思想、人的ネットワーク構築力などが関連する」としたことが始まりです。
このコンピテンシーがなぜ日本語で能力と呼ばず、あえてコンピテンシーというカタカナ語を使うかと言えば、能力を見る観点が、従来の能力観とは異なるからです。コンピテンシー的な能力の観点とは、「成果につながるかどうか」という観点で能力を見ることを意味しています。
この、コンピテンシーに基づくな能力モデルについて、人材採用試験について書かれた文献「コンピテンシー面接マニュアル」では下図の「コンピテンシーのイメージ」を用いて次のように説明しています。
「真ん中の行動という○を囲むように四つの○(知識・経験、成果イメージ、思考力、動機)と四本の矢印が描かれています。まわりの四つの○は、従来型の能力観の中でよく語られてきた「能力」の要素であり、これらがそろっている人材が「能力がある人材」と見なされてきました。確かに、これらは能力の構成要素には違いないのですが、それだけでは成果には結びつきません。この図の周囲の4要素が成果に結びつくためには、それらが行動に還元されなければならないのです。
たとえば、知識・経験はあくまで道具であって、これが行動というレベルで使われないままであるなら、いくら質や量があってもその価値はゼロです。次に成果イメージがあることは、成果を上げる上で有利ではあります。しかしイメージがあっても行動がなければ成果は生まれません。また、思考力がある、論理的に周囲を説得できる、議論に強い、これらもその一歩先にある行動や実行につながってはじめて意味を持ちます。さらに、内からわき出るモチベーションが高い、あるいは周囲への動機のアピールがうまいといいうのも、やはり行動の前段階の条件にすぎず、それ自体では何ら成果を生み出しません。したがって、コンピテンシー的な能力の観点による人物評価とは、その人が、知識・経験、成果イメージ、思考力、動機などを行動に還元して発揮し、成果を生み出すことができる特性を有しているかどうかを評価することに他なりません。」
ところで、技術士の役割とは「高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務」を務めることでした。そして、その結果として、「科学技術の向上と国民経済の発展に資する」ことが求められています。つまり、技術士試験とは、そのような技術士の要件につながる技術者のコンピテンシーを測られる試験なのだということです。しかし、試験制度改正により、従来の試験準備が役に立たなくなったとお悩みの方も多いかと思います。技術士試験における能力評価の対象が、実績や知識ではなく、応用力や問題解決力に変わってきています。これは経験ではなく、技術によって裏付けられた再現性のある成果によって貢献するという、文部科学省が提案する新しい技術士像とも一致します。これはとりもなおさず「技術者の将来価値」を求めていることを意味しています。
コンピテンシーにはレベルがある
ところで、このコンピテンシーには1レベルから5レベルまでのレベルがあり、より高いレベルが望ましいとされています。下の表をご覧ください。行動が問題行動から受動行動、能動行動、創造行動、変革行動と高まっていくにつれて能力を予感させるということは説明不要です。
コンピテンシーレベル |
行動 |
動機、理由 |
行動原理 |
評価 |
レベル1 |
問題行動 |
言われたからやった。やらざるを得ないから。場当たり的な細切れな行動。 |
特に理由は無い |
一貫性や深い考えが感じられない。評価すべき行動が確認できない |
レベル2 |
受動行動 |
その状況になれば誰でもそうするという当たり前のことを特に理由がなくやった |
独自の意図を伴わない普通の行動 |
「まあ、そうして当然だろうね。でもだから何なの?」 |
レベル3 |
能動行動 |
状況に応じた最善策。状況反射的ではない。 |
成果志向、状況判断、本人の狙い・判断が明確 |
意図や判断理由を聞きたくなる。 |
レベル4 |
創造行動 |
問題解決の認識あり、独創的工夫により状況改善する。 |
創意工夫、状況改善 |
ユニークな工夫やアイデイアを聞きたくなる。 |
レベル5 |
変革行動 |
問題点が解決すると共に、全員にとって利益となる。 |
パラダイムの転換 |
すぐにビジネス展開できるかもと予感させる。 |
コンピテンシーは自分では気がつかない
さてこのようなコンピテンシーのレベルがあることはわかりましたが、実際にヒアリングしてみると、意外と自分では気がつかないものです。これまでの指導で分かったことは、受講者様が認識している業績のうち9割以上が2レベルか1レベルなのです。でもご安心ください。自分がとった行動すべてがたとえ3レベル以下であったとしても、本研究所が行うコーチング指導により、コンピテンシーを軸に再び整理し、コンピテンシーレベルを高められることは多いものです。指導する側としてはこのような意味でコーチング能力がものすごく求められてきます。本研究所のコーチング指導では常に「そうしたのはなぜですか?」、「この行動によって目指していたものは?」といった質問を行うことによって自然とコンピテンシーレベルを高めていくように務めています。
以上ご説明したように、本研究所ではこれまで一貫してコンピテンシー理論を導入した指導を行ってきました。知識・経験、成果イメージ、思考力、動機といった四つの資源が、技術応用というプロセスを経て行動に表れる、という技術者コンピテンシーモデルの指導です。たいていの受講者様は、過去に多くの体験や成果がありながら、こうしたコンピテンシーの意識はないものです。このため、本研究所の前述のコーチング指導とあわせて技術者コンピテンシーを表出する方法を指導しています。その結果、今日の驚くべき指導効果につながっているのです。
現在は、技術士受験者の皆さんは技術士試験制度改正といった混迷の時期にあります。しかし、コンピテンシーに着目して能力開発に努めれば自然と高い評価が得られることは間違いありません。本研究所では「高い技術者の将来価値」=合格の条件と信じてこれまでの指導を続けて行く予定です。
本研究所ではPDCAメソッドによって、毎年指導教材を改訂しています。この結果、年々受講者の学習環境は改善されています。特に、コーチング指導のベースとなるチェックシートは過去の受講者たちの指導実績におけるナレッジが凝縮され、完成度の高いものとなっています。このため無駄なくスムーズに答案ををまとめることができます。
これまでのPDCAによる指導改善の主な事項は次のようなものです。
・業績における技術者としての貢献を表す方法が難しい。
・現時点での評価がただの反省で終わってしまう。
・ご自分の技術分野での専門的な将来展望が持てない。
これらに対して、チェックシートではすばやく問題点を確認して、それぞれ有効な対策を打てるようにしています。
マルチ通信手段によるクイックコミニケーション
e-mail、ボイスメール、インターネット電話、PDFファイル転送、といったIT手法により、FAX、電話以外にも受信可能な最も早い方法で回答が得られます。この結果、添削だけでなく、口頭説明により、指導内容のニュアンスなど、納得いくまで理解できます。受講者様はすべて多忙なビジネスマンであり、セミナーの場所と時間が限られます。このため本講座ではIT手法によりセミナーを受ける上での制約を最小化しています。
距離的な制約の打破
セミナーを受けるには、受講者が講師のところに通うのが通例でした。しかし、忙しいビジネスマンである受講者様には、たいていそのような余裕はありません。地方在住、あるいは海外に赴任された方は特にそうです。本講座では、こうした距離的問題を、お金のかからない通信手段で解決しますので距離的問題に夜負担の小さいシステムとなっています。
また、都心にセミナールームを設けることで、都内通勤者向けに会社帰りに相談できるようにしています。
時間等の制約の打破
ビジネスマンである受講者様は、また一方で時間の制約があります。本講座では休日夜間に相談が出来るため、勤務時間以外の勉強時間を有効に使えます。また、疑問が生じたらすぐに聞けるということから、待ち時間の時間的ロスも少ないシステムとなっています。
難解な考え方は会話無しでは理解できない
多くの受講者様が抱えている問題は、いろいろあります。それらはざっと次のような3つの問題です。
@技術士問題の問いの意味が分からない
A技術士問題の答えが分からない
B技術士としてのふさわしい考え方が分からない
それらはざっとこのような3つの問題です。
Aの答えは純粋に技術的問題なのそれほど難しくはありません。しかし、@とBは自立した技術者としての姿勢を問うものあるため難解です。@の「技術士問題の問いの意味」というのは、技術士の役目を理解する必要があり、当研究所の指導では技術士の定義とか実務での役目などをご説明しています。たいていの方は理解できます。言葉で理解できるのはここまでです。
しかし、Bの「技術士にふさわしい考え方」は、コンピテンシーや専門分野の技術を踏まえて専門家としての見解をまとめる必要があります。コンピテンシーのレベルがレベル3〜レベル5に相当すると考えられます。このレベルになりますと、コンピテンシーの考え方は言葉で聞いても、たいていの受講者様はすぐには理解できません。そこで、日常生活にたとえたり、関連した事例や反対の事例を上げたりして理解を高めます。こうした繰り返しコーチング指導により、技術者としての成長を促しています。
技術論文記事から学ぶ
後述の技術論文記事は、技術士答案作成に絶大な効果があります。受講者様の課題はそれぞれが専門的なので、ピンポイントの情報を提供する必要があります。こうした情報の受け渡しも通信手段を駆使してスムーズに行います。
「技術士としてのふさわしい考え方」という抽象的な内容の説明はとても手間がかかるものです。例示や何通りもの言い換えによって説明するしかありません。指導する側としては、どこまで理解しているかを確認する必要があります。このため、紙上の添削だけではではなく、口頭で、時間をかけてする以外にはないのです。
技術士指導においてこれまで、同じ部門の技術士が経験に基づいて指導するのが一般的でした。しかし、個人の経験には限りがあり、受講者の個別の業績や体験について追随することは不可能です。また、ビジネス書等をいくら読んだとしても、専門分野の技術論文には反映できません。専門科目の答案は特定の技術領域に特化したものとなっており、同じ分野の技術論文を参照しないと意味のある見解を養うことができません。このため本研究所の指導では受講者の業績や専門にぴったりの類似研究論文を科学技術論文データベースを用いて検索しています。
専門家としての見解を築く
上の記事はある受講者様の1つの業績に関して収集した記事です。業績に関して多面的に評価するため、このように多数の記事を取り寄せています。この結果、狙いとするテーマに類似の研究記事ばかりが収集できますので、専門家としての見解が築けます。
例えば、次のようなキーワードに対して短時間で検索結果を提示することが可能です。
地域の交通安全
道路の予防保全
耐震補強
紫外線殺菌
水道施設の耐震化
トピックステーマをとらえる
また、下は雑誌「オピニオン」ですが、ここからは建設部門の一般問題のテーマに関する記事がたびたび掲載されています。本研究所では4月ころから毎年出題予想をしており、今年の予想では「公共品確法」が今年の出題の最有力候補でした。このため、下の「オピニオン」誌の記事を入手していました。そして、建設一般指導の際に、この参考記事の引用を教材として配布しました。そうしたところが、今年の建設一般問題に公共品確法が出題され、受講者様は危なげなく答案をかけたと思います。
このように、科学技術論文データベースを活用することにより、専門家として見解や、将来展望、業界の最新テーマなどについてしっかりと情報をつかむことを可能としています。
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