総合技術監理 予想問題 3-3 「環境経営」
問題3-3 環境経営 別添の文章「環境経営の必要性」を読んで、以下の問いに答えよ。 (1)あなたが所属する企業における環境経営とはどうあるべきか。環境経営を行ううえでの背景と課題を各3項目以上挙げて2枚以内で答えよ。ただし、各3項目とは総合技術監理の5つの監理のうち3以上について言及するものとし、以下のことなども考慮すること。 l
バルディーズ研究会によるCERES原則※に象徴されるように、環境問題への対応を間違ってしまうと事業活動に大きな影響が出る。 l
環境問題についての企業責任は拡大の方向にあり、これまでのような「守りの姿勢」では対応できなくなってきている。 (2)環境問題の企業制約性は企業にとってマイナス面ばかりではなく、適切な環境規制は、企業のイノベーションを刺激し、競争力や成長力を高めることがある。 例 l
マスキー法が日本の自動車産業の競争力を高めた l
ファクター4など、環境意識を高めることで飛躍的なコストダウンや品質向上に成功した事例もある。 あなたが所属する企業におけるこうした環境経営の業務改善の可能性について、(1)で取り上げた3つの課題について、あるべき判断と、実施すべき対応を述べ、3枚以内で答えよ。 ※企業が環境問題への対応について守るべき判断基準を示した倫理原則。 1989年、アラスカのプリンス・ウィリアム海峡でエクソンモービル社の大型タンカー「エクソン・バルディーズ号」が座礁して大量の原油を流出させて起こした環境破壊事故(アラスカ湾原油流出事故)を教訓にして、同年、アメリカの環境保護グループCERESが発表したもので、当初はバルディーズ原則と呼ばれたがのちに改称された。 1)生物圏保護のため汚染物質の放出をなくすよう努力する 2)天然資源有効利用と野生動植物の保護に努める 3)廃棄物処理とその量の削減に努める 4)安全、持続的なエネルギー源利用に努める 5)安全な技術やシステムを採用し緊急事態への対応を図る 6)安全な商品やサービスを提供し、それらが環境に与える影響を消費者に知らせる 7)環境破壊に対する全ての損害賠償責任を負う 8)情報の公開を行う 9)環境問題を担当する取締役を置く 10)環境問題への取組みを評価する独自の年次監査報告の公表を行う。 「環境経営の必要性」 1. はじめに 近年どうして環境経営の必要性が叫ばれるようになったかといえば、二つの大きな理由が挙げられます。一つは、企業と地球環境問題との係わりが無視できなくなったこと、そしてもう一つが、企業に対する規制の緩和・撤廃とそれに伴う自由競争と自己責任の要求です。 最近の地球規模での市場経済化と国際的な大競争の激化によってもたらされた経済のグローバル化は、わが国経済の置かれた環境を大きく変化させています。こうした動きが、企業経営に関する情報技術を飛躍的に発展させ、新たな富の源泉や真に創造性や革新性のあるものへと大きくシフトさせています。 企業経済は、規制緩和により市場原理が適用される範囲の拡大を通じて、今まで以上に効率的な経営資源の活用が必要とされると同時に、健全な物質循環の役割を担うことが必要とされてきました。また、市場における徹底的な競争原理の導入により、市場参加者の自己責任が問われるようになるため、企業経営におけるリスク管理の強化が重要になってきます。 経営リスクは実に多様ですが、その中で環境汚染などの環境リスクの占める割合が極めて重要になってきました。このような経営環境の変化に対応して、企業の環境問題に対する取組みも当然変化してきています。地球規模の大きな環境負荷を与えている企業が健全な物質循環と経済社会の持続可能な発展のために責任を果たすことが要求されるようになってきたわけです。
2. エコノミーとエコロジー また最近、「環境経営」や「環境報告書」という言葉が、企業経営のキーワードとして注目されています。これからは、環境への対応は企業経営の一つの目標であるとともに単に環境規制をクリアすれば良いという考えではなく、環境問題を積極的に経営に取り込むことが必要です。そして、その内容を環境報告書などの情報手段によって外部にディスクローズし、企業価値、株主価値を高めることが可能となってきました。環境問題を無視しては、企業の発展は望めません。 環境経営とは、環境に配慮しつつ企業の持続的な発展を目指す経営を意味し、そのために環境理念を経営方針として掲げることが必要となります。環境対策は、企業にとってコストばかりかさむマイナス要因という従来の考え方を捨てて、環境とうまく付き合うことによって企業の持続的成長につなげていこうとする新しい経営の考え方です。 これからは、環境にうまく対応していける企業のみが生き残れるという時代になってきました。その具体的手段として環境報告書や環境会計を作成し、企業の環境に対する取組みを積極的にディスクロージャーすることが挙げられます。従来、企業における環境保全活動(環境軸)は利益を圧迫するものであり、収益獲得活動(利益軸)とはトレードオフの関係にあるといわれてきました。 しかし、環境経営を実践することにより環境コストや環境リスクを適切なマネジメントで低減させることは、結果的にその企業の収益性を高めることになります。環境経営とは、この利益軸と環境軸を同一方向に向けることで双方をさらに伸ばしていくマネジメント手法です。いいかえると、環境経営はエコノミーとエコロジーを共存させて企業の持続可能な発展を確保するための必要不可欠な要素といえます。
3. 環境責任の明確化 社会を構成する全ての企業、消費者、行政などの経済主体について、健全な物質循環と経済社会の持続的発展性の確保のための責任が明確化され、資源の効率的なリサイクルが経済社会システムに組み込まれるようになりました。例えば、廃棄物などの環境問題に関していえば、行政の基本的役割は経済活動から発生する廃棄物の適正処理に重点を置いたものから、廃棄物の発生抑制とリサイクルを促進するものへと変化してきています。各企業が、廃棄物の発生抑制とリサイクルに関する自らの責任を自覚し、その責任を効率的に果たすインセンティブが働くシステム基盤が形成されてきています。 その中心となる法整備として、循環型社会の促進を目的とする「循環型社会形成推進基本法」(環境省)が平成12年6月に制定されました。現在、企業などから排出される 廃棄物の発生量は、一般廃棄物の発生量は年間約5千万トン、産業廃棄物の発生量は約4億トンという高水準で推移しています。これらの問題解決のために、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない循環型社会を形成することが急務とされています。そのため、「循環型社会形成推進基本法」において、循環型社会を「廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用および適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と、明確に定義しています。 また、循環型社会のための適正な処理の「優先順位」を初めて法定化し、そこではまず発生抑制を第一順位と位置付け、ついで再使用、再生利用、熱回収、適正処分の順に決めています。さらに、循環型社会に対する国、地方公共団体、事業者および国民の役割分担を明確化して、企業・国民の「排出者責任」を生産者自らが、生産した製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原則が確立されました。 このような法整備により、企業の環境責任はより一層明確に、重要になり、企業経営者としては経営方針として環境に対する取組みを具体的に打ち出す必要が出てきました。 また、国の取組みと同様に自治体においても、循環型社会づくりのために積極的な施策を行っています。例えば、東京都ではすでに平成10年に東京の持続可能な発展のために循環型社会行動計画素案を公表し、循環型社会づくりに取り組む意義を次のように述べています。 「循環型社会づくりは、東京の存続のためには欠くことのできない重要なテーマである。使い捨てを続けていけば、東京は行き詰まる。循環型社会への転換を図っていかなければならない。東京は、資源・エネルギーの確保、産業廃棄物の処理など、その多くを東京以外のほかの場所・地域に依存している。さらに、東京の旺盛な都市活動は大量のCO2や都市排熱などを発生させ、地球環境に多大な影響を与えている。東京が地球環境の保全に責務を果たすため、この課題に取り組んでいかなくてはならない」 以上のように、わが国における環境対策の法整備は着々と進んでおり、あらゆる企業がこのような循環型社会づくりにうまく対応していけるかどうかが、課題であるといえます。 |