技術士試験答案 試験官の目にとまる答案作成テクニック

合格答案作成のテクニック(その1)

専門的技術のアピ-ル方法

 

 技術士衛生工学部門、選択科目空気調和施設では、T-1答案として例年、代表的業務3例と詳述1例の出題があります。専門的技術のアピ-ルは、主に出題の要求にある「計画の方針」や「計画に意を用いたところ」の章で述べられますが、答案例をもとに解説します。

 

答案例1

1.   代表例3つの業務概要  省略

2.   ○○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

 都心地域に建設される中規模賃貸ビルとして、経済性とフレキシビリティに主眼をおいて計画するため、以下の方針を掲げた。

@省エネ性の高い熱回収ヒ-トポンプを用いたシステムを採用する

A全熱交換器の採用

-2計画において意を用いたところ

@熱源計画と熱回収

 本施設では、熱源として複合熱源方式が採用されており、冬期の冷却廃熱として電気室、コンピュ-タル-ムの負荷が大きいため、熱回収ヒ-トポンプと温水蓄熱槽を設け、一般系統の暖房に用いる。

A冷温水系統にステンレス配管の採用

  冷温水系統に耐久性を考慮してステンレス(SUS304)配管を採用する。縦シャフト主管は工場製作のプレハブ式かつフランジ接合とし、各階系統は接合継ぎ手を採用し施工の合理化を図った。

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省

 空調方式の選定に当たっては、施工性や在来工法を重視するため各階空調機とファンコイル併用案としたが、分散型空調や窓面熱回収なども検討するべきであった。今後は、個別空調、コ-ジェネレ-ション案も考慮すべきだと反省している。以上

 

答案例1の講評

 この答案は、工事報告に近い悪い答案の一例であり、専門的応用能力が示されていません。ざっと次の問題点があります。

●経済性とフレキシビリティに主眼をおいた計画というが、フレキシビリティの対応がない。

●経済性対策として、省エネ性の高い熱回収ヒ-トポンプと全熱交換器の採用では総合的対策とは言えず、省エネ性の高そうな品目を挙げたという点で安直すぎる。

●「計画において意を用いたところ」では複合熱源方式にふれているが、経済性に大きく寄与するはずの複合熱源なのにその説明がない。

●熱回収ヒ-トポンプの選定根拠があいまい。すなわち、熱回収の意義は温熱と冷熱をバランスさせることにあるが、そういった設計主旨がない。

ステンレス配管の採用は建物のライフサイクルを考慮すると重要ではあるが、経済性に大きく寄与する課題ではないため、ここでは不要。

 

 以上のことから答案例1ではあまり専門的技術を感じることはできません。そこで専門的技術をアピ-ルするため、計画の根拠や定量的裏付けを加味して答案例2のように修正してみました。

 

答案例2

1.   代表例3つの業務概要  省略

2.   ○○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

 以下の方針を掲げ、経済性に主眼をおき、高度OAビル用途の中規模賃貸ビルを計画した。

@電動ヒ-トポンプとガス吸収式冷温水機の複合熱源により、夜間電力による蓄熱、夏期ガス冷房によるピ-クカットでコスト低減を図る。

A  熱回収ヒ-トポンプを用いた、冬期に冷房需要に対するシステム効率の向上を図る。

B短期間で(10年以内)に省エネ投資が回収できる、手法として全熱交換器、空調機の可変風量制御を採用する。

-2計画において意を用いたところ

@複合熱源の制御

 期間成績係数と夜間・季節料金を考慮して熱源エネルギ-コストを最小とするため次の優先順位とした。成績係数とエネルギ-コスト料金を表1に示す

冬期  熱回収ヒ-トポンプ、空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)
  夏期   空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)、吸収冷温水機(昼間)

 また、蓄熱槽を有効に利用するため、負荷予測を翌日と1時間後の2段階で行い、翌日の日負荷により蓄熱運転を、また1時間後負荷により台数制御を行った。

A熱源計画と熱回収

 本建物では、冬期、電気室、コンピュ-タル-ム系統に600Mcal/hの冷房負荷があるため、温水槽を設けて熱回収ヒ-トポンプで回収した。年間負荷を図1に示す。

B全熱交換器

全熱交換器の運転期間は、夏期、冬期の各3ヶ月間とし、中間期には動力が熱回収を上回るためバイパスさせた。なお、省エネ効果は、ピ-ク負荷低減による熱源サイズ縮小効果も加味した。

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省  省略 以上

 

 答案例1より2のほうが専門的技術のアピ-ル度があがっているといえないでしょうか。この例より専門的技術のアピ-ル度するためには次のような点を考慮するするのが一法といえます。

●計画の方針で挙げたことに対して、その目標を達成するために高い目標を設定して方策を展開し、その結果はどうか。

●方策の決定のためにシミュレ-ションや類似例の調査により定量的分析を行っているか。

(メールマガジン技術士合格への道 第12回 (1999.07.11)より転載)

 

合格答案作成のテクニック(その2)

効果的な自己評価

 技術士衛生工学部門、選択科目空気調和施設のI-1答案例をもとに解説します。前回は主に専門的技術をアピ-ルするため、計画方針や意を用いた点を改善しましたが、今回は業務の再評価と反省に注目して下さい。答案例1をもとに説明します。

 

答案例1

1.    代表例3つの業務概要  省略

2.    ○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

 以下の方針を掲げ、経済性に主眼をおき、高度OAビル用途の中規模賃貸ビルを計画した。

(1)ヒ-トポンプと吸収式冷温水機の複合熱源により、蓄熱、夏期ガス冷房によりコスト低減を図る。

(2)冬期冷房に対して熱回収ヒ-トポンプにてシステム効率の向上を図る。

(3)短期間で(10年以内)に省エネ投資が回収できる、手法として全熱交換器、CO2制御、空調機の可変風量制御を採用する。

-2計画において意を用いたところ

(1)複合熱源の制御

 期間成績係数と夜間・季節料金を考慮して熱源エネルギ-コストを最小とするため次の優先順位とした。成績係数とエネルギ-コスト料金を表1に示す

冬期  熱回収ヒ-トポンプ、空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)
  夏期   空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)、吸収冷温水機(昼間)

(2)蓄熱予測制御

 蓄熱槽を有効に利用するため、負荷予測を翌日と1時間後の2段階で行い、翌日の日負荷により蓄熱運転を、また1時間後負荷により台数制御を行った。

(3)熱回収

 本建物では、冬期、電気室、コンピュ-タル-ム系統に600Mcal/hの冷房負荷があるため、温水槽を設けて熱回収ヒ-トポンプで回収した。年間負荷を図1に示す。

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省

(1)複合熱源の制御

 熱源の成績係数は、概ね予測通りで、冬期は熱回収ヒ-トポンプ6.5、空気熱源電動ヒ-トポンプ2.0、夏期は空気熱源電動ヒ-トポンプ2.5、吸収冷温水機0.65であった。ただし、夏期にヒ-トポンプと吸収冷温水機が同時運転するとき、後者が不安定となったため今後制御方法の改善により対処したい。

(2)蓄熱予測制御

 蓄熱槽出入り口温度実測結果より、90%の日において蓄熱分を使い切っていることが分かった。今回予測に要したシステムが汎用パソコンを用い、50万円程度でできていることから費用対効果は充分と考えられる。

(3)熱源計画と熱回収

 当初予測に対してコンピュ-タル-ムの使用開始時期が遅れたため、期間の最後しか冷房排熱が回収できなかった。建物の効率的運用のため計画時に綿密な稼働率予測が不可欠と考える。以上

 

答案例1の講評

 この答案は、計画主旨と技術的に検討したことは書かれていますが、評価が×です。ざっとまずい点をあげてみます。

複合熱源の制御については、制御方法を検討した結果、総合効率がどうであったかが課題なのに、それが述べられていない。

夏期に吸収冷温水機が不安定となったとあるが、その分析がなく、従って対策も考えられていない。

予測制御の目的は単に蓄熱分を使い切ることではなく、熱の利用率の向上や昼間のピ-ク電力のカットにあるはずなのに、そうした分析がない。

熱回収について、コンピュ-タル-ムの使用開始時期が原因とされているが、単に見通しが甘かっただけで、かつ時期に関しては空調の主要課題でもないため評価として不適当。

 

この例のように自分が出来なかったことをただ反省するだけでは業務の再評価とはなりません。次の視点が必要です。

●業務を終えてから現在までの間に、一般的技術の進歩や自分の技術力の向上があり、その結果新たな視点から過去のプロジェクトを評価した場合どうか。

●計画時点でもくろんだ成果に対して、自分の技術を適用することでどれだけ達成しているか。また、それは現時点においても同様か。

上記の観点から反省点があるとしたら、当然対策すべきであり、それは行われているか。あるいは対策の見通しが立っているか。

本物件で得られた知見を他に転用したとき、効果がすぐに予測可能か。

 

 もし現時点で問題点があり、対策が不可能であるとか、とり返しのつかない問題であるとしたら、技術そのものが怪しくなります。くれぐれも自己評価は、容易に対策可能な問題にとどめるようにして下さい。設計ミスを反省として取り上げると大減点となりかねません。

以上、を考慮して修正した結果を答案例2に示します。

 

 

答案例2

1.代表例3つの業務概要  省略

2.○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

省略 答案例1と同じ

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省

(1)複合熱源の制御

 システムの期間総合効率は、1次消費エネルギ-ベ-スで夏期0.83、冬期0.7となっており、蓄熱槽を用いないケ-スよりエネルギ-消費は大きいものの、深夜電力、ピ-ク調整特約によりコスト的には30%程度有利となっている。成績係数向上策として、夏期は吸収冷温水機を(安定化のため)優先とし、中間期は低負荷でも効率低下しないヒ-トポンプを優先させるのが有効と考える。反省点として、冬期にヒ-トポンプ優先とし、厳寒時に成績係数低下を招いたことが挙げられる。厳寒時には、効率の温度依存性の小さい吸収冷温水機が有利と考える。

(2)予測制御

 日負荷と蓄熱量の誤差は7%(危険率5%の場合)であり、また平均蓄熱効率87%を記録した。反省点として、中間期15℃以下のとき、冷水負荷と気温の相関が低下し、誤差要因となったことが挙げられるが、新規に開設したコンピュ-タ室の負荷と判明し、以後温度相関式を2次回帰させることで予測精度を高めた。また、短期予測については時間負荷予測に基づく熱源制御コントロ-ラ-が上市されている。ただし回帰変数は気温のみであり、冷水負荷が有効温度や不快指数と相関が高いことから、気温の他に湿度、日射量、施設の在室人員、過去の気温などを加味することでより予測精度が向上するものと考える。以上

 

 答案例1と答案例2の違いを理解していただけたでしょうか。評価の内容は衛生工学部門以外の方にはわかりにくいかもしれませんが、この違いで注目していただきたい点を要約するとこうなります。

評価とは、方策に対しての満足度ではなく、究極の目的に対してどれだけ達成しているかということであり、その達成度を述べなければなりません。

現時点での評価とは、現在の情報で評価した場合に改善点はないかということであり、実施当時の評価のことではありません。また、実施当時の評価に対して現時点での評価が変化が無かったとしたら、技術者として進歩が停止していたことを意味するため、実施以後、現在までに習得したことから新たな評価を加えることになります。

結論として述べることは、反省点から得られた知見を一般化してほかの物件にも転用可能なものとしてとらえてください。

(メールマガジン技術士合格への道 第13回 (1999.07.25)より転載)

 

合格答案作成のテクニック(その3)

合格答案作成テクニック(その3)実戦的文章表現

 

 前回に続いて衛生工学部門、空気調和施設のI-1答案例をもとに解説します。まずは、よくありそうな不適切な表現の例をご覧ください。

 

答案例1

3.   代表例3つの業務概要  省略

4.   ○○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

 都心地域の中規模事務所ビルとして、総合的に検討し計画を推進するため、クライアントの要望を総括した結果、以下の方針を掲げた。空調熱源コストを低減するため

(1)電動ヒ-トポンプとガス吸収式冷温水機の複合熱源により、そのときどきに応じてコストが最低となるエネルギ-源を(深夜電力、昼間ガス)を用いて運転コスト低減を図る。

(2)冬期に冷房の出現頻度が高いため、ヒ-トポンプの冷房排熱を暖房に用いて熱源システムの効率を高める。

(3)施設の長期運用を考慮し、機器類を更新しやすいようにスペ-スに余裕を持たせる。

-2計画において意を用いたところ

(1)複合熱源の制御

 冷房時は、夜間電力による電動ヒ-トポンプのほうが吸収冷温水機より1Mcal当たりのエネルギ-消費が小さい。しかし、昼間の1時〜4時に電力をカットすると基本料金の割引が受けられる。

 また、暖房期は、排熱が安定的に得られるかどうかの課題はあるものの、熱回収ヒ-トポンプによる冷温同時取り出しが1番で、空気熱源電動ヒ-トポンプがそれに次いでいる。

(2)熱源計画と熱回収

  本建物では、冬期、電気室、コンピュ-タル-ム系統に多大な冷房負荷があるため、熱回収ヒ-トポンプで回収し、一般系統の暖房に用いることで暖房効率、すなわち暖房エネルギ-出力の対入力比を5倍とした。年間負荷を図1に示す。

(3)全熱交換器

 全熱交換器による省エネ効果がむだになることがないように、その運転期間を夏期、冬期の各3ヶ月間以外に、中間期にももし熱回収が可能ならば適宜判断し運転した。

 

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省

(1)複合熱源の制御

 熱源機器の効率は、蓄熱槽による全負荷運転のため成績係数がヒ-トポンプ2.5、冷温水機1.1と比較的よい数字であった。反省点として、冬期にヒ-トポンプ優先とし、厳寒時に成績係数低下を招いたことがあげられる。厳寒時は、温度依存性の小さい吸収冷温水機が有利と考える。

(2)予測制御

 1日の負荷と蓄熱量の誤差は平均5%でばらつきは小さかった。中間期15℃以下のとき、冷水負荷と気温の関係が計算にのりにくくなったため、誤差が大きくなったが、新規に開設したコンピュ-タ室の負荷と判明し、以後相関式を改善することにより精度対策を行った。以上

 

答案例1の講評

 この答案は、一見よさそうですが、表現方法に多くの問題を含んでいます。ざっと次の問題点があります。

「計画の方針」で「総合的に検討し計画を推進する」とあるが、検討内容が不明で「総合的」という言葉は不適当です。また「都心地域の」とありますがそれが結論にはつながっていません。逆にいうと、ここでは建物の用途が問題であって都心か地方かは問題ではないということです。最後の「以後相関式を改善することにより精度対策を行った。」というのも改善の中身が必要なのに示されていません。「精度対策」という言葉も意味不明です。こうした個所では検討の具体的方針(中身)を示し、あいまいな言葉をなくします。

「クライアントの要望を総括」は当たり前なので不要。

「そのときどきに応じてコストが最低となるエネルギ-源」とあるが専門用語で単刀直入に対策を表現します。回りくどい表現は専門知識が不自由分との印象を与えます。以下、「冬期に冷房の出現頻度が〜高める。」、「1Mcal当たりのエネルギ-消費」、「暖房効率、すなわち暖房エネルギ-出力の対入力比」も同様。

「施設の長期運用」は大切な課題ではあるが、当初の方針にもなく評価もないため結果的に記述がムダとなります。

●「計画において意を用いたところ」の「しかし、昼間の1時〜4時に電力をカットすると基本料金の割引が受けられる。」や「また、暖房期は、排熱が安定的〜次いでいる。」は意味は通じるものの、表現が長すぎたり論旨がストレ-トでなく冗長感が強く残ります。後述の「全熱交換器による省エネ効果がむだになることがないように、その運転期間を夏期、冬期の各3ヶ月間以外に、中間期にも、もし熱回収が可能ならば適宜判断し運転した。」、「中間期15℃以下のとき、冷水負荷と気温の関係が計算にのりにくくなった」も同じです。

「熱源計画と熱回収」の「多大な冷房負荷」とはあいまいです。具体的に多大とはいくらなのか数値で示すべきです。

「2-4業務の再評価と反省」の(1)複合熱源の制御、「成績係数がヒ-トポンプ2.5、冷温水機1.1と比較的よい数字」とあるが、機器単体ではなく年間を通したあるいはシステム全体を含めたト-タルな評価とすべきです。また「比較的よい数字」というのもあいまいな表現で、現状を把握していないという印象を与えかねません。

(2)予測制御」では「誤差は平均5%でばらつきは小さかった」とありますが、ばらつきを表現するには標準偏差や累積頻度の統計値を用います。これができないと、工学の基礎的能力が不足しているととられます。

 

以上の表現上の問題点を解決した例を以下に示します。

 

答案例2

3.   代表例3つの業務概要  省略

4.   ○○事務所ビル空調設計(代表例1つの詳述)

-1計画の方針

高度OAビル用途の中規模賃貸ビルとして、経済性に主眼をおいて計画するため、以下の方針を掲げた。空調熱源コストを低減するため

(1)電動ヒ-トポンプとガス吸収式冷温水機の複合熱源により、夜間電力による蓄熱、夏期ガス冷房によるピ-ク負荷のカットでコスト低減を図る。

(2)冬期に冷房需要があるため、熱回収ヒ-トポンプを用いてシステム効率を高める。

(3)短期間で(10年以内)に省エネ投資が回収できる、手法として全熱交換器、空調機の可変風量制御を採用する。

-2計画において意を用いたところ

(1)複合熱源の制御

 期間成績係数と夜間・季節料金を考慮して熱源エネルギ-コストを最小とするため次の優先順位とした。成績係数とエネルギ-コスト料金を表1に示す

冬期  熱回収ヒ-トポンプ、空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)
  夏期   空気熱源電動ヒ-トポンプ(夜間)、吸収冷温水機(昼間)

 また、蓄熱槽を有効に利用するため、負荷予測を翌日と1時間後の2段階で行い、翌日の日負荷により蓄熱運転をまた1時間後負荷により台数制御を行った。

(2)熱源計画と熱回収

 本建物では、冬期、電気室、コンピュ-タル-ム系統に600Mcal/hの冷房負荷があるため、熱回収ヒ-トポンプで(温水槽に)回収し、一般系統の暖房に用いることで成績係数を5とした。年間負荷を図1に示す。

(3)全熱交換器

 全熱交換器の運転期間は、夏期、冬期の各3ヶ月間とし、中間期には動力が熱回収を上回るためバイパスさせた。またピ-ク負荷低減により、熱源サイズ縮小(当初設計の70%)にも反映させた。

-3経済効果  省略

-4業務の再評価と反省

(1)複合熱源の制御

 システムの期間総合効率は、1次消費エネルギ-ベ-スで夏期0.83、冬期0.7となっており、蓄熱槽を用いないケ-スよりエネルギ-消費は大きいものの、深夜電力、ピ-ク調整特約によりコスト的には30%程度有利となっている。成績係数向上策として、夏期は吸収冷温水機を(安定化のため)優先とし、中間期は低負荷でも効率低下しないヒ-トポンプを優先させるのが有効と考える。反省点として、冬期にヒ-トポンプ優先とし、厳寒時に成績係数低下を招いたことが挙げられる。厳寒時には、効率の温度依存性の小さい吸収冷温水機が有利と考える。

(2)予測制御

 日負荷と蓄熱量の誤差は7%(危険率5%の場合)であり、また平均蓄熱効率87%を記録した。反省点として、中間期15℃以下のとき、冷水負荷と気温の相関が低下し、誤差要因となったことが挙げられるが、新規に開設したコンピュ-タ室の負荷と判明し、以後温度相関式を2次回帰させることで予測精度を高めた。また、短期予測については時間負荷予測に基づく熱源制御コントロ-ラ-が開発されている。ただし回帰変数は気温のみであり、冷水負荷が有効温度や不快指数と相関が高いことから、気温の他に湿度、日射量、施設の在室人員、過去の気温などを加味することでより予測精度が向上するものと考える。以上

 

 答案例1より答案例2が優れていることを理解していただけたでしょうか。専門用語は衛生工学部門以外の方にはわかりにくいかもしれませんが、ここで注目していただきたい点を要約するとこうなります。

あいまいな言葉は極力排除して、定量的な表現あるいは専門用語による具体的表現とします。

定量的表現をする際には、あらかじめ表現したいことがらに最適な分析を行って、必要ならば統計量を添えて的確に述べます。

結論につながらない記述は、答案として最終的に高い評価を得ることに寄与しないばかりか、どんなに意義が大きくても、一貫性や論理性に欠ける印象を与えますので削除します。

回りくどい表現は複数のことがらが混ざり合う結果、表現の目的が達成されません。手早く結論に言及することにより避けるようにして下さい。

(メールマガジン技術士合格への道 第14回 (1999.08.08)より転載)

技術士試験において要求されることは?
確実に合格できる業績とは
技術士試験申込書の攻略法
試験官の目にとまる技術士答案
 


技術士合格への道研究所 рO3−6273−8523 東京都中央区日本橋浜町1丁目10番8号 502